monologue
夜明けに向けて
 



その頃、米国NBCテレビの人気バラエテイ番組「ゴングショー」は新人芸能人の登竜門として人気で運のいい出場者はレコードデビューしてビルボードhot100に入ったりしていた。歌、ダンス、ジョーク漫談など審査員の前で様々な芸を披露して競う。パフォーマンスが良くないと途中で判断されるとその時点でゴングを鳴らされて打ち切られる。その時の出場者の愕然とする反応がなんとも面白くて人気があったのだ。最後までゴングが鳴らされないと4人の審査員たちがおもむろに点数札を上げてその点数の合計で優勝者が決まる。わたしの通ったLA HIGH(ロサンジェルス高校)英語教育プログラムの世界各国からやって来た同級生たちルイス、アヴィラマサエ夫妻などはみんなゴングショーのファンで、フミオも出演しろ、と勧める。わたしがテレビでゴングを鳴らされてがっかりするところを見たかったのかも。わたしが応募した日のサンセット通りのNBCのオーディション会場にはスターを夢見る夥しい応募者がやってきて控え室はごった返して殺気だった雰囲気の出場者が真剣に踊りの稽古していた。そのオーデイションの空気は神経質でピリピリしていた。集まったシンガー達はさすがにみんな感心するほど歌がうまかった。順番にパフォーマンスしてゆき、わたしはギターを抱えて師と仰ぐレイ・チャールズのジョージア・オン・マイ・マインドを歌った。第1次選考は通って数日後、第2次選考に喚ばれて行くと今度は人が少なく、歌ってみせるとキーボード奏者が音合わせしてどういうふうにギターを弾くかとかオーケストラのキーの打ち合わせなどをしてOKが出て誓約書を渡された。本番の時、オーディションと同じ服装をして出ることなど、こまごまとあってバラエテイなのであまり羽目を外し過ぎてショーをぶちこわさないように誓約させるらしかった。本番で「ジョージア・オン・マイ・マインド」を歌う時「フミオ・フロム・トーキョー」と紹介されて、京都出身なので「キョートなのに」と思った。日本といえばトーキョーと言わなければ雰囲気が出ないらしかった。
歌っている途中、司会も兼ねていた名プロデューサー、Chuck Barris(チャック・バリス)が女性と踊り、最後までゴングは鳴らされなかった。点数は審査員全員8点の札を上げて「ナイスバラード」というコメントだった。
fumio


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