カリフォルニアサンシャインagainその18
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その頃、米国NBCテレビの超人気バラエテイ番組「ゴングショー」は新人芸能人の登竜門として人気で運のいい出場者はレコードデビューしてビルボードHot100に入ってゴングショー出身歌手として人気になった。歌、ダンス、ジョーク漫談など審査員の前で様々な芸を披露して競う。パフォーマンスが良くないか、あるいは面白くないと途中で判断されるとその時点で合図されてゴングを鳴らされて打ち切られる。その時の出場者の愕然とする反応がなんとも面白くて人気があったのだ。最後までゴングが鳴らされないとジューシー・モーガンなど4人の辛口、軽口の人気審査員たちがおもむろに点数札を上げてその点数の合計でその週の優勝者が決まる。賞金は500ドルでわたしの通ったLA HIGH(ロサンジェルス高校)外国人英語教育プログラムの同級生たちはみんなゴングショーのファンで、フミオも出演しろ、と勧める。この番組に日本人が出演するのは見たことなかったけれど貧乏留学生のわたしにとって500ドルは大金でもし賞金がとれればこの国で何か月か暮らせると思って応募することにした。わたしが応募した日のサンセット通りのNBCのオーディション会場にはスターを夢見る夥しい応募者がやってきて控え室はごった返して殺気だった雰囲気の出場者が真剣に踊りやパフォーマンスの稽古していた。そのオーデイションの空気は神経質でピリピリしていた。集まったシンガー達はスターを目指すだけあってさすがにみんな感心するほど歌がうまかった。順番にパフォーマンスしてゆき、わたしはギターを抱えて師と仰ぐレイ・チャールズのジョージア・オン・マイ・マインドを歌った。第1次選考に通って数日後、第2次選考に喚ばれて行くと今度は人が少なく、歌ってみせるとキーボード奏者が音合わせしてどういうふうにギターを弾くかとかオーケストラのキーの打ち合わせなどをしてOKが出て誓約書を渡された。本番の時、オーディションと同じ服装で出ることなど、こまごまとあってバラエテイなのであまり羽目を外し過ぎてショーをぶちこわさないように誓約させるらしかった。 放送には7秒ルールというのがあってライヴ放送でも7秒間遅らせて放送するのだと学校の先生が言っていた。それで突然の放送禁止用語にも対処できるし電波ジャックにもその7秒で対処するということだった。放送業界は表面上楽しそうでいて、いつも神経をとがらせているのだなあと感心したものだった。
本番で「ジョージア・オン・マイ・マインド」を歌う時「フミオ・フロム・トーキョー」と紹介されて、京都出身なので「キョートなのに」と思った。日本といえばトーキョーと言うのが決まり文句のようだった。
歌っている途中、司会も兼ねていた名プロデューサー、Chuck Barris(チャック・バリス)が女性と踊ってみせて、最後までゴングは鳴らされなかった。点数は審査員全員8点の札を上げてコメントは「ナイスバラード」だった。日本的発音の言葉の訛りで途中で打ち切られなくてホッとした。
fumio
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