ここにその妹(いも)伊邪那美(七三)命を相見むと欲(おも)ひて、 黄泉國(四三のくに)に追ひ往きき。ここに殿(十の)の縢戸(三四十)より出で向かへし時、 伊邪那岐命、語らひ詔(の)りたまひしく、「愛(うつく)しき我(あ)が汝妹(なにも)の命(みこと)、 吾(五)と汝(いまし)と作(さ)れる国、未だ作り竟(を)へず。 故(かれ)、還るべし。」とのりたまひき。ここに伊邪那美命答へ白(まを)ししく、 「悔しきかも、速く((八八九)来ずて。吾(五)は黄泉戸喫為(四三つ十ぐひ)しつ。 然れども愛しき我が汝夫(七せ)の命、入り来(き)せる事恐(かしこ)し。 故、還らむと欲ふを、且(しばら)く黄泉神(四三つがみ)と相論(あげつら)はむ。 我をな視(み)たまひそ。」とまをしき。 かく白してその殿の内に還り入りし間、甚(いと)久しくて待ち難(かね)たまひき。 故、左の御美豆良(三三づら)に刺せる湯津津間櫛(ゆつつま九四)の男柱一箇(ひとつ)取り闕(か)きて、 一つ火燭(びとも)して入り見たまひし時、蛆(うじ)たかれこころきて、 頭(かしら)には大雷(おほいかづち)居り、胸には火(ほの)雷居り、腹には黒雷居り、 陰(火十)には拆(さき)雷居り、左の手には若(わか)雷居り、右の手には土雷居り、 左の足には鳴(なり)雷居り、右の足には伏(ふし)雷居り、 并(あは)せて八はしらの雷神(いかづちがみ)成り居りき。
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黄泉國(四三のくに)は四三の結界で封印した国。「湯津津間櫛(ゆつつま九四)の男柱一箇(ひとつ)取り闕(か)きて、 一つ火燭(びとも)して」の津間櫛は「端串」で串の形に現界と黄泉國を行き来する意。「男柱」は田の力の柱で十字と卍を重ね火により回転する。
イザナミの姿を見ると蛆が涌いて、「頭(かしら)には大雷(おほいかづち)居り、胸には火(ほの)雷居り、腹には黒雷居り、 陰(火十)には拆(さき)雷居り、左の手には若(わか)雷居り、右の手には土雷居り、 左の足には鳴(なり)雷居り、右の足には伏(ふし)雷居り、 并(あは)せて八はしらの雷神(いかづちがみ)成り居りき。」と十字と卍を重ねた田の「雷」が「八はしら」ついていた。「八はしら」は八の形のピラミッド。
なぜ稗田阿禮が「ひらさか」と発している音を太安萬侶は比良坂と写したのだろうか。平坂と写せば(一八十イワト)坂。
つまり磐戸の坂なのである。
fumio
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