「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「ナイロビの蜂」

2006年06月05日 19時31分21秒 | 映画
 
 妻の死の真相を追求するサスペンス,大手製薬会社の人体実験と外務省局長の不法を暴露する社会派劇,

 そして夫婦の深い愛を描くラブストーリー、それらが三位一体のように結び付いた作品です。

 監督のフェルナンド・メイレレスは、アフリカの国土を舞台に、

 卓絶した映像美と計算されつくした構成で、観る者を引き込み圧倒します。
 

 英国外交官のジャスティン(レイフ・ファインズ)のもとに、妻テッサ(レイチェル・ワイズ)の訃報が伝えられます。

 テッサは強盗に襲われたという当局の報告に、ジャスティンは疑問を抱きはじめます。

 ジャスティンは折り目正しい穏健な男でしたが、テッサは血気さかんで正義感にあふれていました。

 ジャスティンは妻の死を追ううちに、テッサが巨大な陰謀に巻き込まれて、

 葬り去られたのだということに辿り着きます。

 大手製薬会社がアフリカの貧民たち相手に行なっていた人体実験を、

 テッサは突き止めてあばこうとしていたのでした。

 テッサはジャスティンを愛していたが故に、夫にそれを打ち明けられませんでした。

 二人は結婚するとき、ジャスティンがテッサを守ると誓ったのと同じく、

 テッサもまたジャスティンを守ると言っていたのです。

 夫を危険にさらさないため、テッサは一人で苦難を抱えていきました。

 一時は妻の不義を疑ったジャスティンでしたが、やがて、テッサが決して夫を裏切らなかったことを確信します。

 ジャスティンは妻の足あとをたどっていく過程で、自分の生き方も見つめ、

 テッサの真の愛の深さを知り、自らも彼女の愛に殉ずるのでした。

 社会の巨悪に立ち向かうのは、真実の愛だけということでしょうか。

 とにもかくにも、全体から細部に至るまで、熟思と着想に満ちた、メイレレス監督の手腕による映像に魅せられます。
 

 
 僕の彼女・心子もテッサのように、悪を許さない正義漢であり、弱い人たちのために犠牲になることもいとわない純粋な女性でした。

 でもその極端な心性のために苦しみ、旅立って逝ってしまったのでした……。
 
コメント (1)
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