認知症のT子さん (87) は 昨年、
食欲不振に陥り、 寝たきりになってしまいました。
認知症の薬に加え、 胃や心臓、 高血圧の薬など、
10種類を服用していましたが、 全部を飲むのは困難に。
主治医は 優先度の高い薬、 3種類だけに減らしました。
3~4日たつと、 T子さんは 起きている時間が長くなり、
食事も取るようになって、 1週間もすると すっかり元気になりました。
今も薬は 3種類のままですが、 健康そのもの。
会話はかみ合わないものの、 しっかりと歩き、 笑顔を絶やしません。
一時は 終末期さえ考えたのに、 薬を減らしたのが良かったのか、
実際の因果関係は はっきり分かりません。
しかし一般に、 薬の数が増えるほど、 薬同士が影響を及ぼし合い、
効き目が弱まったり、 効き過ぎたり、 有害な副作用が出たりします。
薬を減らして 認知症が改善する人は 珍しくありません。
もちろん 薬が必要な人はいますが、 過信は禁物です。
日本神経学会は、 認知症の治療指針に
「認知機能低下を誘発しやすい薬剤」 を 明記しました。
抗コリン薬, 抗精神薬, 抗パーキンソン病薬, 降圧薬など 多岐にわたり、
認知症の症状に マイナスに働くことがあります。
同指針では、 認知症の投薬の 原則を挙げています。
・ 少量で開始する
・ 若年者より少なくする
・ 薬の効き目は 短期間で評価する
・ 多剤服用は なるべく避ける
主治医と家族が 定期的に相談して、 飲んでいる薬を見直し、
必要のないものは やめるようにするべきです。
〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕