東日本大震災の被災地では、 一般市民である消防団員に 多くの犠牲者が出ました。
岩手, 宮城, 福島の3県の
消防団員の死者・ 行方不明者は 249人にのぼります。
(消防士のそれは27人。)
団員のOさんは 同僚4人と、 民家で寝たきりの 女性を見つけ、
津波を避けるため 2階に運ぼうと 民家に飛び込みました。
津波は瞬く間に 家ごと呑み込み、 Oさんは2キロ先まで流されました。
助かったのは Oさんはだけでした。
現在 避難所暮らしのOさんは、
少しのことでも怒りが込み上げ、 涙がこぼれてきます。
深夜に目覚め、 朝まで眠れないことも。
津波に呑まれた 同僚の叫び声が、 今も耳から離れないのです。
別の団員Aさんは、 沖合の水門を閉めるため、
同僚と軽トラックで 海を目指しました。
防潮堤の操作室に飛び込みましたが、
非常用のバッテリーに切り替えても 反応せず、 手動操作も受け付けませんでした。
津波が消波ブロックを乗り越え、 轟音と共に流れ込んできて、
Aさんたちは 裏山を目指して走ります。
津波は岸壁を呑み込み、 木々を次々となぎ倒していきました。
「逃げるのが あと1分遅かったら……」
「街の人たちが危ないと思ったから、 とっさに行動した。
もし同じことが起きたら、 あんな危険な作業を 誰かに命じることはできない」
消防団員の中には、 自分だけが助かってしまったという 罪悪感や、
津波への強い恐怖心から、 今後 消防団員としての職務を 果たせないと悩む、
「惨事ストレス」 の兆候が報告されています。
適切な診療を受けないと PTSDになる恐れがあるため、
消防庁は 「心のケア」 の専門家チームを 派遣することを決めました。
「緊急時メンタルサポートチーム」 所属の 精神科医や臨床心理士で、
命の危険を感じながら 活動した消防団員のために 必要な措置です。
〔 読売新聞より 〕