「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

被災時に なぜ逃げおくれるのか

2011年06月25日 20時58分08秒 | 東日本大震災
 
 東日本大震災では、 津波警報が鳴っても すぐ逃げなかった人が 少なくありません。

 なぜ逃げおくれるのか、 災害心理学で考えられていることがあります。

 人間は安心して生きるために、 心の中に  「あそび」 の部分があります。

 ある範囲までの異常は 異常と感じず、 正常範囲内と 受け止めてしまうのです。

 この 「あそび」 を、

 「正常性バイアス」、 または 「正常化の偏見」 と呼びます。

 小さな物音に いつも驚いていては 神経が持たず、

 心を守るために 必要な反応です。

(思うに BPDの人は、 この 「あそび」 が 非常に小さいのではないでしょうか。

 僅かなことに反応してしまい、 心を守ることができない、

 安心して生きられないのだろうと 思います。)

 しかし この 「正常性バイアス」 は、

 非常時に危機感を 鈍らせてしまう働きもあります。

 ある実験で、 部屋に 80人の被験者に入ってもらい、

 いきなり白煙を吹き込んでも、 煙の速度がゆっくりだと、

 7割の人が 煙が充満しても 逃げませんでした。

 また、 非常ベル, 消防車のサイレン, 煙の進入を、 順番に発生させた実験では、

 一緒にいる人が無反応だと、 逃げない人が多かったのです。

 「地震が起こったら、 君が 最初に逃げる人になれ」

 首都圏防災研究センター長は、 岩手県釜石市の小中学生に そう訴え続けました。

 そして起こった大地震。

 子供たちは 教師の指示を待たずに、 高台へ一斉に駆けだしました。

 避難場所は危険と判断して、 さらに高台に上がって 助かった子供もいました。

 釜石市の小中学生の生存率は、実に99.8%でした。

 正常性バイアスに加えて、

「自分だけが飛び出して 何もなかったら恥をかく」 という心理が 避難を遅らせます。

 非常時には 自分の生存を第一に考え、

 ためらわず行動する 自主性が何よりも大切です。

 その素早い行動が、 周囲も救います。

 また、 行き先で 避難ルートの確認を 習慣づけることも大切です。

 建物内では 非常口を必ず確認し、 海では 高台の位置や距離に 留意しておきます。

 そうするだけで、 いざという時の 心身の反応が 抜群に早くなるのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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