「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

おばあさんが転倒、 歯が折れた! (1)

2010年04月09日 19時49分52秒 | 介護帳
 
 デイサービス施設の営業で、

 近隣の団地へ スタッフ二人で ポスティングに行きました。

 管理事務所に向かうとき、 住民のおばあさんが 買い物袋を下げ、

 覚束ない足どりで歩いていて、 何気なく目で会釈。

 管理事務所のドアには、 本日はお休みの 紙が貼ってありました。

 残念と思ったとき、 ちょっと離れた所から

 「ああぁ~~~!!」 という悲鳴が!

 「何があった!?」 と振り向くと、 さっきのおばあさんが倒れている?

 急いで走っていくと、 おばあさんが突っ伏しています。

 もう一人の 住民らしき女性も 駆け寄って来ました。

 おばあさんは顔面から コンクリートに突っ込んだようで、

 身動きもできず、  「ああ~~!」 と叫んでいます。

 仰向けにさせようとしましたが、 腕が体の下に挟まって うまく動かせません。

 僕は おばあさんの顔の下に、自分の手の平を入れて 支えました。

 入れ歯が飛び出し、 折れた歯がころがって、 口から出血しています。

 眼鏡のフレームはひん曲がり、 レンズもひびが入っていました。

 僕の手には かなりの血液が付着します。

 もう一人 やってきた住民が、 携帯で119に架け、

 救急車を先導しに 行ってくれました。

 おばあさんの意識は はっきりしていて、

 取り乱しながらも しゃべることはでき、 特に痛みはないと言います。

 「迷惑かけて申し訳ありません」 と 何べんも謝っています。

 しかし おばあさんは動けず、 僕はおばあさんの顔を 手で支え続け、

 あとの二人は ティッシュで血を拭き取ったり、

 おばあさんに (僕の) コートを掛けて さすったり。

 もう一人の女性は、 「鼻から息を吸って、 口から吐いて」 と言っていました。

 おばあさんは、 いつも倒れやすいので 気を付けているのにと、

 動転しながらしゃべっています。

 スーパーの買い物袋は かなりの重さで、 とても危ないと思えました。

 さらに別の住民が、 おばあさんの部屋番号と 名前を聞き、

 ご主人を呼んできてくれました。

 おばあさんは82才で、 ご主人もかなり衰えています。

(次の記事に続く)
 
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100点か0点ではなく、 50点を

2010年04月08日 19時14分54秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 事実と解釈を 一緒くたにしてしまうのも、 認知のワナです。

 推測したことが、 いつの間にか 事実のように見なされてしまいます。

 記録カードを見ながら、 他に受け止め方や対処法は なかったかと問いかけ、

 考えを語り合います。

 こういう方法もあると 提案したり、 話し合いを重ね、

 ロールプレイをすることもあります。

 記録カードを つけ続けていくうちに、

 落ち込むときのパターンや、 怒りが爆発するときの パターンが見えてきます。

 それが自覚されると、 行動や感情の コントロールが改善していきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60532375.html

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 解釈 (頭の中の考え) が いつの間にか 事実になってしまうことは、

 心子にもありました。

 心子が友だちから ピュアだと言われたそうで、

 心子は  「あたし、 ピュアじゃないんだけどォ」 と 冗談めかし、

 僕もふざけて  「じゃ、 汚れてんの?」 と 口が滑ってしまったのです。

 むろん、 汚れてないでしょ という前提です。

 けれども 心子は急に、

 「どうせ あたしはけがれてる」 と 落ち込んでしまいました。

 それから約1ヶ月に渡り、 心子は自宅に 閉じこもることになってしまいます。

 その間に、 「じゃ、 汚れてんの?」 という 僕の失言は、

 「しんこ、 穢れてるじゃん」 という言葉に すり変わっていました。

 「穢れ」 という言葉は、 クリスチャンにとって 生きる価値もないことだそうです。

 その言葉によって、 心子はより一層 苦しめられてしまうのです。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (3)

2010年04月05日 21時30分11秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60492469.html からの続き)

 認知療法の 優れた点のひとつは、

 トラブルがすべて 教材として活用できるということです。

 まさに 逆転の発想で、 トラブルに意味があり、

 問題を解決する手がかりとして 役立てることができます。

 嫌なことがあっても、 記録カードに 書くことができたと、

 得したような気に なることさえあります。

 気を付けることは、 本人の偏りのパターンに 自分自身で気付いてもらうことです。

 こちらが決めつけるのではなく、 さり気なくヒントを与えたりします。

 もうひとつの優れた点は、

 書いた方が整理しやすく、 経験が蓄積されるということです。

 境界性パーソナリティ障害の人の 移ろいやすい傾向を、

 話し言葉は 助長してしまいますが、

 書くことで統合されやすくなり、 第三者的な目を 養うことができるのです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子とこの方法を 試してみたらどうだったでしょう。

 落ち着いているときなら、 ある程度冷静に 自分のことを見られたかも知れません。

 或いは、 自分のネガティブな 反応パターンを見て、

 自己否定的に なってしまうかもしれません。

 または、 トラブルが起きたときの感情が 甦ってしまうこともあるかもしれません。

 でも 最初は失敗はあったとしても、 それらを重ねていくことによって、

 少しずつ 自分の反応パターンを認識し、 修正していくことができただろうか、

 試みてみたかったと思います。
 
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今年は花冷え

2010年04月04日 22時22分53秒 | 心子、もろもろ
 
 今年も 桜が満開になりました。

 例年ジョギングをかねて 花見に行っていたのですが、

 今年は 新しい自転車に乗って 行ってきました。  (^^)

 今日は花曇りで、 人出も やや少なめだったようです。

 ダウンコートを着ていくほど、 肌寒い中での 花見でした。

 東京では今月2日に 各地で満開になりましたが、

 心子と花見をした 家の近辺は 今日あたりが見頃です。

 2日は 満開と同時に 強風が吹きまくり、

 花盛りになった途端に 散ってしまうのではないかと 危ぶまれたものの、

 ほとんど散ることなく 持ちこたえました。

 桜は咲き始めや 満開になった直後は、

 まだ花びらが とてもしっかりと 額に付いているということです。

 花びらを 手で引っ張っても、 枝がしなるばかりで 花弁は取れません。

 花は 虫によって受粉をするのが 目的ですから、 その前に散るわけにいきません。

 虫を呼び寄せ、 受粉を済ませてから、 役割を終えて、

 花弁は見事に散っていくのです。

 と、 テレビニュースでやっていましたが、

 実際はソメイヨシノは 接ぎ木や挿し木でしか 増えません。

 つまり ソメイヨシノは “クローン植物” で、

 全て同じ遺伝子 ということになります。

 桜には 「自家不和合性」 という性質があり、

 同一固体 (同じDNA) の花粉では 受精できないのだそうです。

 今年は、 桜の蜜をついばむ 鳥たちの姿を 見ることができました。

 でも結局、 桜の花は その元々の目的を 果たすことはできないのですね……。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (2)

2010年04月02日 21時00分07秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 治療の現場で 行なわれるのは、

 トラブルがあったときの状況を 記録カードに記してもらう方法です。

 「認知療法」と呼ばれ、 以下の項目について

 境界性パーソナリティ障害の人に 書いてもらいます。

① きっかけになった出来事。

② あなたは、 それをどう受け止めたか。

③ あなたは、 それにどう反応したか (感情および行動)。

④ 後で冷静なったとき、 考えたこと。

⑤ その後、 どうなったか。

 例えば、 順に 次のように記入します。

① 携帯電話を使いすぎると、 親に文句を言われた。

② 妹には甘いのに、 自分だけには厳しい。

  なぜ、そんなことばかり 言われないといけないのか。

③ イライラした。

 親に暴言を吐いて、 それでもモヤモヤして、 リストカットをした。

④ 親と暮らしたくないが、 暮らすしかない。

  それがつらい。

  親の言葉に、 過度に傷ついてしまう。

  黙って流せばよかった。

⑤ 親とは、 翌日も口を利かなかったが、 今は普通にしている。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60504693.html

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 上記に加えて、 前回書いたように、

 きっかけになった出来事には、 違う受け止め方の 可能性はなかったか、

 別の反応の仕方は 考えられないか、 すると どういう結果が予想されるかなども、

 書いてみると いいのではないかと思います。

 それを積み重ねていくことで、

 悪い反応のパターンを 少しずつ修正していくことが できるのではないでしょうか。

 認知療法は 効果的な方法ではないかと思われます。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (1)

2010年04月01日 22時33分01秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人の、 認知, 感情, 行動の反応に見られる

 特有の癖を、 自覚して 修正していく必要があります。

 例えば、 カッとして 暴言を吐いてしまう 人の場合、

 どういう状況で どういう反応をしたかを、 細かく語ってもらいます。

 そして、その人がそう感じ、受け取ったことをまず尊重して、共感するように努めます。

 そのうえで、 冷静な視点で もう一度 振り返ってもらうようにします。

 カッとしたときの 相手の言葉は、 別の意味である 可能性はなかったか?

 どうして そのように感じたのか? 

 他にも 同じ反応をしてしまったことは なかったかなど、

 心の謎解きをしていくのです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の主治医の先生は、 心子に 人格障害であるとは 言っていませんでしたが、

 その認識を 心子と僕とで共有し、 自分を見つめ直していく 作業はできないかと、

 先生に質問したことがあります。

 先生は 一瞬考え込み、

 僕は恋人として 支えることをしていったほうがいいと 言われました。

 恋人の立場で、 治療的な向き合い方は 難しいということだったのでしょう。

 当時は情報も少なく、

 上記のような方法を 心子との間で 取ることはできませんでしたが、

 トライしたらどうだったか、 今となっては 心残りな気がします。
 
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