ジダン退場事件の背後にある言語文化の違いについて興味深い記事があった。
『ジダン暴走』の背景
同じフランス人でも「(階層などに関係なく)誰にでも使う表現」「フランスではめったなことでは口にしない、とても強い侮辱表現」に意見が分かれている。
マテラッツィ、バカンスのため前倒し自白
バカンスのため前倒しという事情はさて置いて。
同じラテン語文化圏でも、他民族国家となって民族差別的な表現に非常に敏感になっているフランスと、そこまで敏感ではないイタリアという違いが言葉に対する態度の違いに現れているような気がする。
『ジダン暴走』の背景
マテラッツィ選手が「テロリスト」と言ったとの報道もあったが、現段階では、「売春婦の兄弟(フラテロ・ディ・プッターナ)」と言ったのではないかと受け止められている。ジダン選手もフランスのテレビ局に出演し「母と姉に関する個人的な内容で、とても激しい言葉」「人間として許し難い言葉で傷つけるようなこと」「二度、三度と耳にした」と説明した。
相手に「サノバビッチ(son of a bitch)」と罵倒(ばとう)する場面は英語小説にも頻繁に登場する。「クソ野郎」などと和訳されることが多い。
信州大学OBで、フランス人ナレーター・DJのシリル・コピーニ氏は「売春婦の-」的な表現について「これにあたる日本語表現はないが、あえて言えば『おまえの母さんを、ぶっ殺すぞ』ぐらいでしょうか。フランスでも(階層などに関係なく)誰でも使う表現」と“慣用句”だという。だから「ジダン選手が頭突きまでしたのには、何か深い理由があるはずだ」と指摘する。
(中略)
マテラッツィ選手の「一言」についてベルカンヌ氏は「フランスではめったなことでは口にしない、とても強い侮辱表現だ。英語のサノバビッチと同レベルと考えてはいけない。ましてや、母親や女兄弟への愛情が強いイスラム系の人々に言うべき言葉ではない」と言う。
同じフランス人でも「(階層などに関係なく)誰にでも使う表現」「フランスではめったなことでは口にしない、とても強い侮辱表現」に意見が分かれている。
マテラッツィ、バカンスのため前倒し自白
バカンスのため前倒しという事情はさて置いて。
FIFAが調査を行うことを発表した翌日、マテラッツィは自らFIFA本部に出向いて事情を説明した。一部報道によれば、文書を提出して姉を侮辱する発言をしたことを公式に認めた。また、その後の聞き取り調査では「姉妹を侮辱するような言い方をしてしまったが、イタリア人ならば普通に使う“売り言葉”で、ジダンの姉を特に意識して言ったわけではない。私は彼に姉がいるのかも知らなかった。あくまで、一般的な侮辱言葉だ」という内容のことを話したという。
侮辱する言葉が含まれていたことは認めたが、イタリア人にとってはそれほど深刻でないイタリア語の言葉が、フランス人のジダンには深刻に聞こえた可能性を訴えた。
同じラテン語文化圏でも、他民族国家となって民族差別的な表現に非常に敏感になっているフランスと、そこまで敏感ではないイタリアという違いが言葉に対する態度の違いに現れているような気がする。