『戦略プロフェッショナル シェア逆転の企業変革ドラマ』三枝匡(日経ビジネス人文庫) リンク先はamazon.co.jp
自分の読書歴からすると、
単行本が出た1991年に読んでいてもおかしくない本なのだが、この年はちょうど自分がアメリカのコロンビア大学経営大学院に入学した時だった(93年にMBAを取得して卒業)。しばしば通った紀伊国屋書店に置かれていた記憶もあるが、ビジネススクールの聞きしにまさる読書やレポートの課題量に追われて、課題の読み物以外に手を出す余裕はなかったのだった。
後回しにしているうちに今に至ったのだが、コロンビアに留学前に読んだ大前研一の『
企業参謀』シリーズに匹敵する、企業戦略の入門書だと思う。また、小説仕立てになっているので、ハーバードビジネススクールをはじめとする欧米ビジネススクールのケースよりも臨場感をもって読めると思う。
ちなみに、ビジネススクールのケーススタディという学習の方法論の是非については、またいずれ、ミンツバーグの著作をちゃんと読んだ上で考えてみたいものだ。自分個人の感覚としては、仮想の世界ではあっても自分をその環境に置いて考えるということさえできれば、有効な学習手段だと思っている。学習姿勢によっては、所詮は他人事で後付けの議論しかできない評論家で終わってしまうというリスクを内包していても、有効性はあると思う。
ボストンコンサルティングがアベグレン博士のもとで日本法人を開設した時の若手コンサルタントのひとりで、スタンフォードMBAで、ベンチャーキャピタリストの経験があり、ターンアラウンドのスペシャリストで、あのミスミの代表取締役CEO。戦略コンサルティングと企業経営という、似て非なる立場のどちらでも成功しているというだけでも凄い人だと思う。
ケースにとりあげている業界が自分のいる業界に近い(グループ会社のひとつが同じ業界で事業を展開している)ので、扱っている製品のビジネスモデルについては、すぐにわかってしまったが……要はコピー機業界と同じなのね、と。ただ、そのモデルを見抜いて自社の事業戦略に応用できたという点は、やはり凄いと思う。