ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

シンガポールから帰国して

2006-08-18 19:26:54 | 時事
 シンガポールから無事に帰国した。小泉首相の靖国訪問を現地のThe Straits Timesで読んでいたのだが、立花隆の一文を読んで、なるほどと思った。

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」 - nikkeibp.jp
第83回 小泉首相“開き直り参拝” 日本が見失った過去と未来
同じようなイメージの問題が、欧米における靖国報道にもある。

外国で靖国問題が報じられるとき、靖国神社(YASUKUNI シュライン)などといっても、それが何であるか、誰も知らないから、靖国を報道するときには、必ず、同格の形容句として、「A級戦犯を祀った(Aクラス・戦争クリミナルをエンシュラインした)」という言葉が枕詞のように必ず付くのである。

そうなると、小泉首相がよく使い、日本人の多くもそうかなと思う小泉首相の弁解「私が拝みに行っているのは、戦没者全体であって、A級戦犯ではありません」が、まるで通じないのである。

外国の報道では、靖国神社とはこういう所で小泉首相はこう主張しているなどというくだくだしい説明は、日常の短いニュースの中で付けられるわけがないから、先に述べたような枕言葉がつくだけなのである。そういう枕言葉つきの神社に小泉首相が行ったというニュースを聞けば、当然のことながら「小泉首相はA級戦犯を拝みに行っている」としか聞いてもらえないのである。

「A級戦犯を拝みに行っているわけではない」という小泉首相の弁解は、外国人には理解不可能な強弁としか聞いてもらえていないということなのである。

 The Yasukuni Shrineの説明についてThe Straits Timesがどう書いていたか、詳しいことは忘れてしまった。が、14名のA級戦犯が祀られているということははっきり書かれていた。



「かぶりもん」の中の人の苦労

2006-08-16 19:22:25 | 時事
 たまには軽い話題をひとつ。一応兵庫県民だし。

国体キャラクターは体力不足? 「はばタン」熱中症
 9月30日に開幕する「のじぎく兵庫国体」のマスコットとして、子供や若い女性に人気の「はばタン」。“スポーツ万能”の触れ込みなのに、着ぐるみ人形の中はほとんどサウナ状態とあって、県職員が扮(ふん)したはばタンが次々とダウンする異常事態に陥っている。

(中略)

 国体100日前イベントが行われた6月25日、神戸市中央区の三宮センター街を各競技種目が記されたシャツを着た43体のはばタンが行進した。ところが、11体が次々と救護テントに搬送され、中には、はばタンが手当てを受けている様子を目撃した幼い子供がショックを受けるというハプニングも生じた。

 着ぐるみの重さは約10キロもあるうえ、内部の暑さはサウナ並みといい、国体実行委員会事務局の足立宰さん(41)は「あまりにもハード。元気でいられる時間はせいぜい15分間」。“スポーツ万能”の触れ込みとは裏腹に、とても運動どころではないのが実情という。

 関西風にいえば「かぶりもん」。この暑さで10キロものサウナの中で演技する人のご苦労は計り知れないものがあります……43体のうち11体がダウンとは、いやはや。

シンガポールの空の下から

2006-08-15 19:46:57 | 時事
 ここシンガポールも、かつて日本に占領されていた地だった。去年の8月15日は、確か出張で北京入りした当日だった。2年連続で8月15日をかつて日本が占領していた地で迎えるのは、何かを考えさせるための天の配剤であろう。

日本国憲法 前文

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


 特に、日本国憲法でありながら「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という理想を掲げているところが好きだ。そして、その前の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という、世界平和への貢献のあり方について述べているところも好きだ。

 ……日本という国が、我々が、どこまでその理想に近づけたかは、世界の現状に対して日本がどの程度の影響力を発揮できたかということで測れば、悲しくも、まだまだ道遠し、だと思う。

 この憲法前文をもって、今日の鎮魂への祈りの言葉にしたい。


鎮霊社

2006-08-12 19:43:55 | 時事
 シンガポールの空の下より、書いている。ブロードバンドが使えるのはありがたいが、レートがけっこう高い……1週間料金にしたせいもあるのだが、189ドルだったかな(約80円として1万5千円……^_^;)。ブロードバンドがタダで使える日本のビジネスホテル事情を考えると、ちと凹む。

『鎮霊社』からみた靖国神社 
ひっそり鉄柵の中

 「明治維新以来の戦争・事変に起因して死没し、靖国神社に合祀(ごうし)されぬ人々の霊を慰めるため、昭和四十年七月に建立し、万邦諸国の戦没者も共に鎮斎する。例祭日七月十三日」

 靖国神社は「本来、国のために一命を捧(ささ)げた人たちの霊を慰めようと」(同神社作成のパンフレットから)、一八六九(明治二)年に「東京招魂社」の名前で建てられた。

 靖国神社は必ずしも軍人・軍属だけを祀(まつ)っているのではなく、沖縄戦で死亡した「ひめゆり部隊」の女学生や学徒動員中に軍需工場で爆死した学徒たちも祭神として合祀されている。

 その一方で、戊辰戦争時に官軍に敗れ、自決した会津藩白虎(びゃっこ)隊の少年兵や、維新の元勲でありながら、西南戦争で明治政府に反旗を翻した西郷隆盛は除外されている。また東京大空襲や原爆に遭った戦災者も同じだ。

 「将来、国を守る基礎をつくるため、国に殉じた人を祀るのが靖国の基本。遺族のために存在しているのでもない」と同神社に近い関係者は指摘する。

 その靖国神社ができてから、約百年後に本殿とは別に鎮霊社は建てられた。ここには白虎隊や西郷だけでなく、イラク戦争の死者など「万邦諸国の戦没者」も祀られているとされる。しかし、それらの人々の名簿はない。

 建立の経緯などについて靖国神社広報課に取材を申し込んだが、「業務繁多で十八日以降でないと回答できない」と言われた。


 まつろわぬ者の霊をこういう形で封じ込めてるわけですか。

 一方、筑波大の千本秀樹教授(現代日本史)は「霊を鎮めるという名前には、天皇に敵対して死んだ人たちがたたって出てこないようにする意味が含まれる。鎮霊社の本来の目的は天皇制、国家に逆らって死んだ人をたたりのないように鎮めることだ」と前出の関係者と同じ見方をとる。

 鎮霊社が国内にとどまらず世界中の戦没者を祀っている点については「対象を広げているところにごまかしがある。本来は天皇のために死んだ人だけを祀る神社なのに、世界平和を祈っているというポーズをつくっている」と語る。

 さらに、靖国が市民の戦争被災者と戦死者を分ける姿勢にも疑問を呈する。

 代わりに前出の関係者は「賊軍も外国人も同様に祀るのは、人は死ねばみな仏になるという仏教にも影響を受けている」と話す。

 ただ、これは多分に建前のそしりを免れない。出雲大社や太宰府天満宮は怨霊(おんりょう)を鎮めるために建立されたとされる。この関係者は「鎮霊社もこれと同じ。怨霊を恐れ、抑えようとするのは神道の考えの根本だ」と説く。

(中略)

 「靖国神社は鎮霊社に参拝しなくていいという姿勢だ。なぜ、原爆や空襲の犠牲者が、賊軍と同じ場所に祀られているのかの説明もない。鎮霊社の存在は、天皇はすべての人を平等に愛するという『一視同仁』の思想にすら矛盾する」


 「賊軍」の霊の扱い方についても私は不満なのだが、一般人の犠牲者も、まつろわぬ者たちの霊を封じ込めるのと同じ扱いじゃ、浮かばれまい……。

 やはり、A級戦犯の分祠だけじゃ、すっきりしないなぁ。


時事つれづれ

2006-08-11 13:08:11 | 時事
靖国神社前宮司、非宗教法人化や分祀案を否定
 靖国神社の前宮司の湯沢貞氏は9日、東京都内で行った講演で、靖国神社の非宗教法人化案について、「靖国神社というものが、形無しになり、名前だけというようなことで終わってしまうという心配があり、うかつには乗れない」と述べ、否定的な見解を示した。

 また、日本遺族会会長の古賀誠・元自民党幹事長らが主張しているA級戦犯の分祀(ぶんし)案については、「246万余の御霊(みたま)は大きな一つの座にいらっしゃるわけで、どう考えても無理だ。神社にプラスになるものは一つもない」とし、神道の教学上、不可能との考えを改めて強調した。

 教学上の解説において「神社にプラスになるものは一つもない」という表現に違和感を感じる。「無理」とか「あり得ない」とか「受け容れられない」という反応はわかりますが、プラスとかマイナスとか、なんだか損得勘定を連想させる表現ですね……。

<A級戦犯遺族>8人が分祀受け入れ 18人中反対3人
 靖国神社へのA級戦犯の合祀(ごうし)・分祀問題に関連して、毎日新聞社が合祀されたA級戦犯の14遺族に考えなどを聞いたところ、連絡できた13遺族18人(一部の遺族は複数)のうち、8遺族8人が分祀受け入れの意向を示した。反対は3遺族3人だった。「教義上、分祀はできない」とする同神社の姿勢と遺族らの意識に隔たりがある実態が浮き彫りになった。
 昭和天皇が合祀に強い不快感を示したとされる富田朝彦元宮内庁長官のメモが見つかったことを受けて、一斉聞き取りを行った。その結果、合祀・分祀については、5遺族の7人が「ノーコメント」「判断できない」などとしたが、10遺族11人が判断を示した。


元日本兵の台湾遺族、靖国神社合祀取り消し求め提訴へ
【台北=石井利尚】台湾の先住民の高金素梅・立法委員(国会議員)は9日、台北で記者会見し、元日本兵の台湾先住民の遺族が、靖国神社に合祀(ごうし)されている元兵士の合祀取り消しを求める訴訟を大阪地裁に起こすため訪日することを明らかにした。

 台湾先住民族で組織した「高砂義勇隊」の遺族で、日本の遺族とともに、11日に提訴するという。


<社民党>千鳥ケ淵戦没者墓苑の整備・拡充を検討
社民党は10日の常任幹事会で、靖国神社に代わる平和祈念施設として千鳥ケ淵戦没者墓苑の整備・拡充を検討することを決めた。月内に外部有識者も加えた「千鳥ケ淵戦没者墓苑・平和祈念施設提言委員会」(委員長・福島瑞穂党首)を設置、今秋をめどに提言をまとめる。


安倍氏、A級戦犯分祀に否定的…雑誌インタビュー
 安倍氏は、靖国参拝問題について「政治問題化させたり、ましてや外交問題化すべきことではない。歴代首相もそうしないための努力をしてきた」と強調。1978年のA級戦犯の合祀後に参拝した大平、鈴木、中曽根、橋本、小泉の5首相について「戦争指導者が合祀されているからといって当時の日本の軍国主義を肯定している人は一人もいない」と述べ、合祀を理由に首相の参拝中止を求める意見に反論している。


靖国参拝、反対49%、賛成30% 本紙アンケート
十五日の終戦記念日を前に、新日本海新聞社は七、八の両日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝の是非などについて、鳥取県在住の本社モニター百人にアンケート調査した。その結果、小泉首相の参拝には48・9%が反対し、賛成の29・8%を大きく上回った。また、A級戦犯の分祀(ぶんし)を求める人が、現状の合祀(ごうし)を認める人を大きく上回った。

 鳥取県限定の結果ですが、全国紙の傾向と余り変わらないですね。

 その全国紙のひとつ。
靖国、次期首相の参拝「反対」50%…読売調査
 読売新聞社が5、6の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、次の首相の靖国神社参拝の賛否を尋ねたところ、「どちらかといえば」を合わせた「反対」が計50%、「賛成」が計40%だった。

 6月調査に比べ、「反対」が8ポイント増加、「賛成」が6ポイント減少し、同様の質問をした今年2月以来計3回の調査で初めて反対が賛成を上回った。

 小泉首相が2001年の自民党総裁選で公約していた終戦記念日の8月15日に靖国神社を参拝することへの賛否でも、「反対」が計49%で、「賛成」の計43%を上回っており、首相の靖国参拝に慎重な意見が広がりを見せている。

 「靖国神社からA級戦犯を分祀(ぶんし)すべきだ」との意見に対する賛否を聞いたところ、「賛成」は計62%で、「反対」計24%を大きく上回った。「分祀」に理解を示す人が多かった。


 靖国に関しては読売新聞の代表取締役会長で主筆のナベツネこと渡辺恒雄も小泉首相を批判してきてますからね……小泉首相が昨日マスコミ全般にかみついたのもその辺りが反映しているような。

☆★☆★

 追記。昨日のTBSラジオに聴取者から投稿された「生きている 公約 靖国だけですか?」という川柳が発表されたそうで、複数のブロガーさんが記録していた。

 かつて「公約なんて破っても大したことない」という暴言をかましてくれた小泉首相ですからね……靖国にこだわるのは、自分の力で実現できそうな数少ない公約だからではないかと思ったりして。

大前研一の靖国論

2006-08-10 22:54:46 | 時事
大前研一 「産業突然死」の時代の人生論
第40回 A級戦犯問題を「論理思考」で考察する

 さすが大前さん、かなり大胆に書いているなぁ。

靖国問題がいやらしいのは、その見事な演技の背景にある論理矛盾をあぶり出すからである。日本人が忘れてしまった、あるいは忘れたいと思っていることを我々の目の前に突き付けるからである。

 例えば東條英機首相の孫に当たる東條由布子氏は月刊誌などでA級戦犯の分祀に強烈に反対している。それはそうだろう。東條家にとってみれば戦争は国民と共同でやったものであり、統帥権を持っていた昭和天皇の命でやったものだ。自分たちのおじいちゃん達だけを犯罪人として、さっさと先に行く人など許せない、という心情になってもしかたがない。おそらく靖国神社に合祀された14人のA級戦犯の遺族の方々も同じような気持ちだろう。

 そもそもこの問題が出てくるのは、ボスが責任を取らなかったからだ、という考え方は間違っていない。今回のメモの問題点は、それをボス自身が白状してしまったところにある。つまり、昭和天皇はマッカーサーには「自分はどうなってもかまわない」と責任を認めていながら、長い間新しい役割だけに専念している間にいつの間にか自分はA級戦犯の被害者であり、自分はあの戦争にはそもそも反対していたのだ、という心境になりきっていたのではないだろうか。

(中略)

 日本では天皇問題、特に昭和天皇の問題になると理屈ぬきで崇拝する人々も多い。このメモが見つかったことで、靖国問題は一件落着、ご意思が分かった以上靖国参拝はやめてもらわなくちゃ、と発言する人も出て大騒ぎだ。

 一方、このメモについて、今の当事者である小泉首相は自らの靖国神社参拝への影響について「ありません」と答えているが、さあ、そんな強気なことを言っていていいのか。今度の8月15日に参拝に行くというのなら、もう命がけで、それこそ「国賊!」と怒号を浴び、刺されることも覚悟して参拝してもらうしかない。昭和天皇に対して熱烈親派の人たちは結構危険なところがあるのだから。

 最後の一文はどうかなーと思いますが……私は当然ながらテロリズムを支持しないが、8月15日に靖国神社を公人として参拝する小泉首相に対して「国賊!」という罵声が飛ぶ風景を想像すると、そのシュールさに苦笑してしまう。

 1972年、時の首相・田中角栄氏が訪中し、日本と中国は国交を再開した。そのときに自民党と中国の間でいったいどういう約束が交わされたのだろう。そのことを日本国民のうちどれだけの人が知っているのか。実は「戦争の加害者はA級戦犯だ。中国の民衆も日本の国民も同じ犠牲者なのである」として、A級戦犯だけを犯人に仕立て上げ、残りの日本人には責任がないことにして日中平和条約が締結され、賠償権も放棄された、といわれている(実際問題として日本は国民政府と既にこの問題は解決済みであったために、あとから政権を確立した大陸政府とはこのような解決策しかなかったと思われる)。この日中相互理解がその後田中派の利権となった中国へのODAの根拠ともなっている。靖国合祀後に登場したコチコチの参拝論者であった中曽根首相でさえも、胡耀邦・趙紫陽ら改革派を支援するために首相としての参拝をやめている。

 つまり中国の理解は、戦争責任はA級戦犯、日中両国民は犠牲者。したがってこれが、日中が将来仲良くしていくための大前提、というものだ。この政権トップの「相互理解(あるいは密約?)」は日本、および中国の一般国民にはよく理解されていない。そういう理解でODAを開始しておきながら、中国人が評価してくれないのも問題だし、日本人も「靖国に誰が行こうがこちらの勝手、内政干渉もはなはだしい」と言って譲らないのも問題。戦後の補償問題を特定政治家たちの利権に置き換えるような小ざかしいことをした張本人たちがここで登場しなくては永久にこの問題は解決しない。

(中略)

 この際、歴代の自民党の代表の方々が、日中平和条約を結んだとき、ODA開始の前提など中国との約束で、明らかにされていないものをつまびらかにしてしまってはどうだろうか。上記の中国との経緯に関しては、ばらばらな文献、中国の研究者の話、一部政治家たちのコメントなどから組み立てたものだ。

 それらの密約や合意を、日本国民は知らされていない。特に改革開放以前の中国との関係は共産党や自民党の一部の人々が仕切っており、学者やマスコミの網にもかからないことが多かった。だから、80年代半ばから急に中国が靖国神社参拝を批判し始めたのに対して、多くの日本国民が「中国にそんなことを言われたくはない」「中国に言われて参拝をやめるなんて屈辱だ」と反発してしまうのだ。だが、なぜ中国が参拝を批判するのかをよく考えてみてほしい。中国にとってA級戦犯がどういう意味を持っているのかを。

 同感だ。私もこの密約や合意を確実に知っていたわけではないけど、参拝論者である中曽根元首相が小泉首相に釘を刺す発言を繰り返す背景を考えると、ここに行き当たらざるを得なかった。

 このような経緯を見ると三つの大きな“隠されたアジェンダ”が本件を分かりにくくしていることが明白になる。

1.昭和天皇が東京裁判で免訴されたことを忘れ、いつの間にか自分も戦争の犠牲者だ、と考えA級戦犯から距離を置こうとしたこと
2.田中派と中国の為政者たちが戦後処理に関して自分たちに都合のよい解釈をし、A級戦犯に全責任を押し付けてODAなどの利権をほしいままにしたが、国民にはその前提を開示していない
3.田中派利権つぶしに奔走した小泉首相が道路、郵政、中国、などの利権の雷管を踏みまくっている間に靖国問題でやぶへびとなり、予想外のジレンマに陥った(行っても騒動、行かなくても騒動)


千鳥ヶ淵戦没者墓苑
 「先の大戦で海外における戦没軍人及び一般邦人のご遺骨を納めた『無名戦没者の墓』として昭和34年3月28日に創立されました」
(財)千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会
 「千鳥ケ淵戦没者墓苑は、昭和34年(1959年)国によって建設され、戦没者のご遺骨を埋葬してある墓苑です。
今から約60年前の大東亜戦争では、広範な地域で苛烈な戦闘が展開されました。この戦争に際し、海外地域の戦場において、多くの方々が戦没されました。戦後、ご遺骨が日本に持ち帰られましたが、ご遺族にお渡し出来なかったものを、この墓苑の納骨室に納めてあります。いわば「無名戦士の墓」とでもいうべきものです。現在、約35万柱のご遺骨がこの墓苑に納められております。」

 私は基本的に分祀論・(天皇・首相の)靖国参拝反対論だが、千鳥ケ淵の「戦没者慰霊碑」を代替案として挙げ、「(1)公人は千鳥ケ淵にのみ参拝、(2)靖国は国民の統合の象徴(天皇)、および選ばれた代表(首相など)は参拝しない、(3)靖国神社は自分たちの好きなようにすればよい」という提案でもよいと思う。

 新しい首相には是非こうした複雑系の絡みを理解し、かつ自分なりの新しい解釈を示してもらいたい。またマスコミや国民も自分の意見や考えを形成するに際しては、歴史のどの段階のどのような事象から自分の意見を形成しているのか、相手の立場に立ったらどのような景色が見えてくるのか、思考の訓練のつもりで時間を使って考えてもらいたい。

 また中国や韓国に関しても、歴史をさかのぼり、彼らもまた理解し、未来に向けて善隣・友好がわだかまりなくできるように促すべきである。そうしたことなしには近隣諸国との健全な将来関係は構築されないだろうし、またいつか来た道を避けることもできない。このプロセスを冷静に経過することなしには国民的な集団知( IQ )も向上しないだろう。


 まったく同感だ。また「国民的な集団知(IQ)」という概念を示しているところに、現状について大前氏の思いが見て取れる。

早く逢いたい……『逢いたくなっちゃだめ』板東 寛司

2006-08-10 12:33:28 | 読書
『逢いたくなっちゃだめ』板東 寛司(あおば出版) リンク先はamazon.co.jp

二週間ほど前に、書店の店頭に平積みだった。

 猫好きな私の視覚を直撃する子猫たちの写真が満載なところにもってきて、さまざまな恋を十七文字で語るさまざまな俳句の数々。

 すごく刺激的な本だったが、なぜか衝動買いすることがためらわれた。

 そして、その日一日、買わなかったことを何度も後悔した。

 翌日、その本屋の店頭に行ったら、平積みになっていた写真集が消えていた。何度も棚を探したが、一冊も残っていなかった。

 ネット書店で探そうにも、書名も著者名も覚えていない(イグアスの滝汗)。「猫・写真・俳句」などと検索をかけてみたが、出てこない。

 あの写真集をまた目にすることはないのだろうかと、本屋を覗くのが日課になって約二週間。

 ふと、ネット書店でなく、グーグルで「猫・写真集・俳句」と入力して検索してみた。

 すると、写真家のサイトがヒット。

 そして、この表紙とまた出会えた。あぁ、これだこれだ、探していたのは。

 『逢いたくなっちゃだめ』とは、また何と、小憎らしいタイトルだろう。

 書名と著者と出版社がわかったところで、ネット書店に注文を入れた。

 早くこの本に逢いたい……逢いたいんだよぉ(ぢたばた)。

『上司の頭はまる見え』川崎貴子

2006-08-10 12:32:31 | 読書
『上司の頭はまる見え』川崎貴子(サンマーク出版) リンク先はamazon.co.jp

 腰帯の惹句は「女が言うことを聞かない理由、上司はなぜか気づいていない。」25歳で起業し、人材紹介・人材派遣会社の社長として1万人以上の女性と接してきた著者(写真を見ると綺麗な方ですが、本の中でご自分の性格を「おっさん」と表現しています)による、女性社員への接し方指南本。

 一番印象に残った箇所が「女に『怒鳴ってしかる』方法が通用しない本当の理由」という章。

 女性は大声を出されると「怒鳴られた私」の防御に関心が行ってしまい、思考停止におちいってしまうのです。

 こうなると、怒ることはまったく意味をなさなくなります。

 たとえは悪いかもしれませんが、男性と女性の違いは犬をしかる時と猫をしかるときの違いに似ていると思います。

 犬は悪いことをしたとき、飼い主がその場でしかり、言って聞かせれば、ある程度"してはいけないこと"を理解できます。納得できれば、しかった飼い主を恨むようなことはありません。

 一方、猫はしかられると、飼い主が自分を"いじめている"と思います。そのとき自分が何をしたかということに思考が及ばず、飼い主からひどい目にあわされたという恐怖だけが残ります。

 その結果、しかればしかるほど飼い主への不信感がつのり、言うことを聞かない猫になってしまうのです。

 ですから猫をしつけようと思ったら、しかるのではなく、"天罰方式"にするしかないそうです。つまり飼い主が直接しかるのではなく、テーブルの上に乗ると、突然紙つぶてが飛んできたり、大音響が響くなどの災難が降りかかるようにしておければ、テーブルに乗る→災難が降りかかる→だから乗らない、という具合になると言います。

 女性にもある程度仕事をまかせ、一、二度失敗させて、自分で痛みを実感させることが大切なのかもしれません。


 この箇所だけでも、本の代金の価値があった。このネタ、管理職研修で使わせていただこう。

靖国、次期首相の参拝「反対」50%…読売調査

2006-08-10 06:51:01 | 時事
靖国、次期首相の参拝「反対」50%…読売調査
 読売新聞社が5、6の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、次の首相の靖国神社参拝の賛否を尋ねたところ、「どちらかといえば」を合わせた「反対」が計50%、「賛成」が計40%だった。

 6月調査に比べ、「反対」が8ポイント増加、「賛成」が6ポイント減少し、同様の質問をした今年2月以来計3回の調査で初めて反対が賛成を上回った。

 小泉首相が2001年の自民党総裁選で公約していた終戦記念日の8月15日に靖国神社を参拝することへの賛否でも、「反対」が計49%で、「賛成」の計43%を上回っており、首相の靖国参拝に慎重な意見が広がりを見せている。

 現首相は「世論」より「5年前の公約」の方が大事なんですかね。



学校でも評価の調整は必要なんだろうな

2006-08-08 22:04:38 | 時事
 自分は直接関わっていないが、今日研修の場で一緒になったシニアマネジャーが昨日支店の評価委員会に参加して「大変だった」という感想を聞いていたせいか、ぴぴっと反応してしまったニュース記事。

「他の組より厳しすぎ」、“抗議”で「通知表」再評価
和歌山県紀の川市立名手小学校が、2年生1クラス(23人)の1学期の通知表について、「評価が厳しすぎる」との保護者の指摘を受けて評価し直して配ったところ、一部の保護者から「子どもが不信感を抱く」などと受け取りを拒否されていることがわかった。

 学校でも会社でも、何を評価するのか、どういう尺度で評価するのか、その評価軸に評価者間の個人差はないか、という点が大事なのだと思う。

 自分の会社では、すべての部門でやっている訳ではないが、営業部門では売上や販売目標(予算)に対する達成率のような数値評価だけでなく、営業活動プロセスにおける能力の発揮度合いといったところにも評価者間のブレを少なくしようと、評価者委員会を開いている。ラインマネジャーの部下への評価をプレゼンさせて、その視点に妥当性があるか、バラツキはないか、を検証し、共有する。

 そこに参加するシニアマネジャーは大変だろうが、現場任せにして欲しくない。