被差別の出身である野中広務氏と在日朝鮮人辛淑玉氏の対談。
このタイトルを見た瞬間、「日本人の差別意識を書いた本」=ここでいう「日本人」は差別する側の人だけで構成されていると思ってしまった人(それは僕です)ほど読むべき本。
本書にもありますが、オバマ大統領は黒人と白人のハーフなのに「初の黒人大統領」と言われていて、それは国籍の有無にかかわらず「在日○世」とされるという線の引きかたとも同根ですね。
本書は二人の対談+辛氏のコメントという形式になっています。
このコメントがあることで、対談本にありがちなわかったようで実はわからないまま読み流してしまう、ということがなくなります。
その反面、必然的に辛氏による評論の色あいが濃く出ています。ただ、野中氏は差別についてあまり直截的に語らない一方で、辛氏はストレートに切り込んでいるので、これはひとつの補助線が引かれている、と考えればいいと思います。
しかし、以下のような洞察はきちんと受け止めるべき。
差別とは、富を独り占めしたいものが他者を排除するために使う手段である。そして、この差別は、する側になんとも言えない優越感を与える享楽でもある。
差別は、古い制度が残っているからあるのではない。その時代の、今、そのときに差別する必要があるから、存在するのだ。差別の対象は、歴史性を背負っているから差別されるのではない。
これは「いじめ」などにも通じる構造。
さらに、辛氏は在野で既存権力(特に司法や行政)に批判的な立ち位置で活動してきたようですが、そこからみた「政治家野中広務」像はなるほど、という部分もあります。
「野中広務」という政治家は、談合で平和を作り出そうとする政治家だった。(中略)(野中氏は)人間の欲望や利権への執着といった行動様式を知り抜いているからこそ、それらをテコに、談合と裏取引で、平和も、人権も、守ろうとしたのではないだろうか。それも生涯をかけて必死で。
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