一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

芸術分野への助成金の削減

2010-11-05 | よしなしごと

この前アメリカの美術館の運営方法をかじった関係で、ニューズウィーク日本版の「ロンドン黄金期にフィナーレの予感」を読みました。  

キャメロン政権での今後4年間で各予算平均19%にのぼる公共支出の大幅カットによってイギリスの芸術部門が大打撃を受けるという話。  

もともと美術館や劇場の資金調達方法はヨーロッパとアメリカでは180度異なり、ヨーロッパではすべて国からの資金、アメリカでは民間の寄付が主流な中で、イギリスは過去15年間公的資金を「種子資本」とし民間からの寄付と組み合わせるという折衷型をとってきたものの、芸術部門への公共支出は年間7億ドルもあるそうです。 
(ちなみに2010年4月の事業仕分けに関する朝日新聞の記事によると、国立の美術館を運営する「国立美術館」と、国立の博物館を運営する「国立文化財機構」に対しては2008年度にはそれぞれ150億円と文化財機構106億円が支出されているそうです。 ざっと3分の1なのですが、多いと見るか少ないと見るか。)

さらにイギリスの美術団体はバブル間アメリカ人をスカウトし「ニューヨークやロサンゼルスで熟練の資金調達者と献金者を横取りし」て、多額の民間資金を調達していたものが、現在ではアメリカでの資金調達も激減してしまったそうです。 
種銭と民間資金がダブルで縮小してしまったので痛手はさらに大きいわけです。


ロンドンでは、この予算カットに反対する運動も起きています。  

美術館は生き残れるか  

この記事ではロンドンの事情以上にこのくだりが興味深い。  

規模や立場の異なる機関やアーティスト個々人が、一様に国の予算カットに危機感を抱き、アピール活動のために一致団結する様はある種の驚きだった。日本でも、民主党政権下での事業仕分けが美術の世界にも多少の波紋をよんだものの、「仕分け」が対象とする問題は、大勢から見れば重箱の角をつつくようなもので、業界全体を巻き込むほどの大事件にはなっていない。日英の芸術に注がれる国家予算の規模が桁違いであることを差し引いたとしても、日本の美術関係者の厭世的な振る舞いには、自戒を込めつつ、当事者意識の低さを感じざるを得ない。  

ニューズウィークによると、景気が悪くなれば芸術関係の予算が常に削減されていたわけでもないようです。  

第二次大戦後の景気低迷期には、イギリスは文字通りケインズ方式で対応した。低迷期には政府が介入して景気を刺激するべきだと提唱した経済学者のジョン・メイナード・ケインズが、公的資金を振り分ける芸術評議会を創設したのだ。

アメリカでも大恐慌下の失業者救済プロジェクトとしてWPA(Works Progress Administration)が導入されたり、1965年に個人・企業からの助成が低迷したことを受けてNEA(National Endowment for the Arts)という援助プログラムが導入されたりしています(それ自体に反対運動があったというのもアメリカらしいですが)。

日本も「国のおかげで」と卑屈になってないで、低成長化の日本にこそ文化が必要だ、とかJapan Coolに便乗するとかで堂々と増額を主張したり、寄付への減税措置を要求するくらいの気概が必要かもしれません。


ちょうど先日のChikirinの日記にこんなフレーズがありました。  

組織には「時代に翻弄される組織」と「時代を篭絡しようとする組織」のふたつがある。  

「騙された」「制度が悪い」「自分は被害者だ」って言ってればいい立場じゃないだろーと思う。


そんじゃーねー

コメント
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