褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 アルジェの戦い(1966) アルジェリアの独立戦争を描いています

2021年08月15日 | 映画(あ行)
 フランスから地中海を南に隔てたところに北アフリカのアルジェリアがある。かつてはこの国もフランスの植民地だったのだが、フランスからの独立を目指して戦う姿を描いた戦争映画が今回紹介するアルジェの戦い。正直なところ日本人にとってはアルジェリアという国は遠い異国の地であり、今となればちょっとばかり昔の時代なので大して興味が湧かないテーマのように思えたりする。しかし、映像を通して伝わるパワーは現代に生きる我々にも衝撃を与えるし、戦争の悲惨さを改めて教えさせられる。
 植民地支配を行うフランスとアルジェリア人はアルジェリア国土の様々な所で戦いを繰り広げていたのだが、本作が描かれている戦いの場所はカスバ及びその周辺の地区。あの名作映画望郷の舞台となっていることで有名であり、世界遺産にも登録されている所だ。
 ストーリーの軸はフランスからの独立を目指す地下組織に加入して奮闘する若者アリの行動が主となっている。独立戦争を描くといっても戦車、戦闘機が出動して爆撃、ミサイルが飛び交うようなスペクタルな場面はない。しかし、カスバの狭い場所で撃ち合ったり、爆弾を装置したり、拷問シーン等、ドキュメンタリータッチで描いているのが効果を発揮しており緊迫感が伝わってくる。そして、登場人物の顔のアップの表情が多いが、その表情が非常にリアリティがあり、怖さを感じさせる。

 それでは植民地支配を続けようとするフランス軍とアルジェリア独立を目指す地下組織の抵抗を描いたストーリーを紹介しよう。
 1954年、アルジェリアのカスバが舞台。常日頃から悪い素行を繰り返している青年アリ(ブラヒム・バギアグ)は刑務所を出た後に、アルジェリア独立を目指す抵抗組織FLN(民族解放戦線)に入り、フランス警察との闘争を繰り返す。この事態を重くみたフランス政府はマチュ(ジャン・マルタン)中佐をリーダーとするフランス軍をアルジェリアの派遣。そのことを境に次第にFLNは苦境に立たされ、アリ自身も次第に追い込まれていく・・・

 なかなか細かい部分でも興味を引き付けられるように描かれている。アリ青年がFLNにスカウトされる方法、イスラム系らしさを感じさせる規律が厳しいFLN の内部の結束、そしてFLN がフランスの警察を始末していく場面などは、ちょっとした娯楽性を感じさせる。
 そして、次々警察が殺されて業を煮やした署長がカスバへ出かけて爆弾を仕掛けるのだが、ここでの爆破シーンが凄い。本作の凄さに度々出てくる爆破シーンがあるのだが、これが本当に建物をぶっ飛ばしている。地下組織も警察も繰り広げる爆弾の仕掛け合い。罪なき一般市民が血まみれになっているシーンをみて人間の愚かさがクローズアップされる。
 さらに衝撃なのが、地下組織活動に女性や幼い子供が自らの意志で参加していること。戦争映画の良し悪しの判断の要素は人それぞれにあると思うのだが、単に勝った負けただけでなく生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれた時の人間の心理状況が描かれているのを個人的には重視している。その点ではこの映画はバッチリ描かれているし、そしてどちらからの偏った見方をしていないのが良い。
フランス側の事はもちろんだが、地下組織側の立場の問題点に突っ込んでいる点も良い。特にFLNのリーダーがアリに話しかける会話のシーンは非常に惹きつけられる。『革命や戦うことよりも独立した後の方が大変なんだよ』。だいぶ端折って書いてしまったが、本作を観なおした時はこのシーンの台詞をしっかり自分の心に植え付けよう。
 他にも本作を観ると、我々日本人にとっても考えさせられることがある。本作のラストで民衆が叫ぶ『独立、誇り、自由』。この三つの言葉が日本人の俺には突き刺さる。未だにGHQの置き土産である憲法が真の意味での『独立、誇り、自由』を奪っていることにハッとした。
 他にもフランス人のアラブ人に対する差別、そして映画音楽の大家であるエンニオ・モリコーネの音楽、ジャーナリズムの役割、オールロケや大量のエキストラ出演による迫力のある描写など、他にも褒めないといけない点が多々ある。あまりにも嘘パチが多い戦争映画に飽き飽きさせられている人に今回はアルジェの戦いをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はイタリア人のジッロ・ポンテコルヴォ。本作はイタリア制作の映画であり、本国の名作映画である無防備都市の影響を受けていることが分かります。




 
 
 
 

 

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