金曜日。
曇りのち雨のち雷。天気はめまぐるしく変わる。
恩田すみれはプラットホームへ急いだ。
この日は乾物の入荷日。坦々麺も届いているはずだ。
あれ?どこだろう。カップラーメンの台車だけで、3台あるけれど・・・。
坦々麺は・・・?
「恩田さん、まず、カップラーメンから、出す?」
私がきょろきょろしていると、川石さんが声を掛けてきた。
「はい」
きっと、調味の台車の後ろに隠れて見えないのだろう。
私は手前にある台車から荷出しを開始した。
ええ~ッと。これが最後ね。
坦々麺は・・・?
無い???
私はもう一度、プラットホームへ足を運んだ。
次にバックへ行ってみる。
一昨日まで3ケースあった坦々麺の在庫は、2ケースになっている。
昨日、私は休みだったので、誰かが補充してくれたのだろう。
私は在庫の2ケースを売り場へ運び、早速、棚替えに取り掛かった。
荷出しも、発注も、補充も終わった。
あとは、心おきなく、坦々麺の為に広~いスペースを・・・。
でも、入荷されるべき、坦々麺5ケースは、どうなったわけ?
私が野っぱらのように広いスペースを中央に確保し、
坦々麺を並べている所へ、真下副店長が通りかかったのである。
彼こそ、知る人ぞ知る、噂の熱血交渉人、真下副店長である!
「あっ、副店長。私、坦々麺、5ケース発注したんですけど、今日、入ってきてないんです」
もしや、副店長がキャンセルしたのでは・・・?と思った私は
念のために聞いてみた。
「5ケース?坦々麺を?」
真下副店長は、ちらっと床に転がった坦々麺の空き箱2つを見た。
「これは・・・?前々回の発注分?」
「はい、そうです」
次に副店長は、ど真ん中にズラッと並んだ坦々麺へ視線を走らせた。
そこには3段に積み重ねられた坦々麺が並んでいる。
「・・・・・?」
そうだった。
副店長は、先日の事件を知らないのだ。
「実はですね・・。狸部長が坦々麺がしょっちゅう品切れしてるって・・。
そこで、店長の提案もあって(?)フェイスを広げることにしたんです。
それで、多めに発注を・・・」
すると、副店長は、黙ってポケットから携帯電話を取り出した。
おお、頼れる熱血交渉人!
早速、取引先と交渉してくださるのね!
ところが・・・。
「あっ・・・。しまった!もう、バッテリーが・・・ないかも。(^_^)」
えっ・・・? バッタッツ! (*注意 恩田すみれ、卒倒)
あれから、どのくらい時間が流れたのだろう?
意識が戻り(?)、ふと副店長の方を見ると、彼は携帯電話でお話中であった。
「湾岸店の・・・はい、今日、入荷分です。確認して連絡いただけますか・・・?」
自腹を切ってマイ携帯で連絡を取るあたり、さすがである!
バッテリー、あったんですね。
しかし、待てど 暮らせど、取引先から電話が来ない。
「恩田さん、一応、発注上がってるかどうか、モニターリストで確認してもらえますか?もしかしたら、発注洩れかも・・・?でも、5ケースって覚えてるんなら・・・」
覚えてますとも!
今ある在庫分でも、充分間に合います。
でも、ひな壇は3段じゃ、ボリュームが足りない。
やはり、狸部長を喜ばせるには、
5ケース発注して、ひな壇5段じゃなくっちゃね!
とにかく、取引先からの連絡を待ちましょう。
続く・・・。