映画を観終わった鈴木鈴子は、ふうっ・・・と笑みを浮かべた。
「あんたのスーパー、おもろい事しか起こらないわけ!?」
「もっと、ドロドロの人間関係とかさあ~描けないの?」
「本社と現場の確執とか、観てみたい!」
知り合いは、シビアなもので、まるで、テレビドラマのような次から次へと
事件発生!どろどろとけちゃいそ~ な物語を要求してきたりする。
そこで、生まれたのが、この映画版だ。
簡単に言えば、
本社の人が「これ、しょっちゅう品切れしてる!」
と言ったセリフが担当者にも聞こえ、「バック在庫あるのに、たまたまだよね!」 で終わる。
ただ、これしきの事である!
ただ、それだけの事を
ドロドロ~を期待する一部の読者の為に
ドラマ仕立てにせねば ならないほど、
とあるスーパーは、平和だという事だ。
実際には、本社と現場に確執なんて無いし。
人事のおじさまは、今日も私を見てニコニコしてくれたし。
店長は休憩室で本社社員と談笑しているし。
今朝は雨の為、バスのダイヤが大幅に乱れ、のろのろ運転。
その結果、ジャストに店に到着、着替えて売り場へ行くと、5分遅刻した。
矢木さんは、私の顔を見るなり、
「渋滞でしょ?雨で込んでたもんね、今朝。 社員には、
『私は悪くありません!親会社(とあるバス会社)が悪いんです!』って言わなきゃ!」
と、言って笑っていた。
バックで西村チーフに会い、
「遅刻しました、すみません」
と、告げると、
「大丈夫です。誰も見ていませんから!」
という返答だった・・・
そして帰宅時間・・・。
「店長、お疲れ様でした。坦々麺・・・」
「 ぶっ 」
真面目な顔でパソコンに向かっていた店長なのに、
私が、たった一言、坦々麺と発しただけで、
三枚目の お笑いムードになった!
「坦々麺、5ケース発注したのですが、入荷されず、
副店長が取引先に電話して、今、確認中です。
もし、本社のおじさまが、何かおっしゃった時には、そのようにお伝えください。終売ではないと思いますけど・・・」
もしも終売になれば、室井課長は相当ショックを受けるだろう。
「ハイ、分かりました」
店長は、そういいながら、ホントに可笑しそうに笑っていた。
これが、鈴木すず・・・の日常である。
ドロドロでなくて、御免なさいね~。
うちの店長最高でしょう?
包容力があり、あったかい人柄が伝わらないかしらん?
カトちゃんなんて、店長が他の店舗から異動になったから・・・って、
そこを辞めて、湾岸店の方へ一緒に移動 してきちゃったらしいのだ。
良い人には良い人が集まるのだ。
類は友を呼ぶ! と、言うではないか!
「それじゃあ、カトちゃん、また店長が異動になったら、一緒に移動するの?」
「う~ン、それは・・・。誰かがいるでしょうから」
誰かが・・・副店長か、西村チーフか・・・。
そうだよね。
まさか、三人揃って同じ店舗へ異動・・・ なんて事は100%ないだろうし。
そうなれば、グロッサリー全員束になって移動となるだろう。
親会社に『臨時バス』の手配を頼まねば!
ある日、狸部長は、湾岸店のグロッサリースタッフ全員が忽然と消えたことに気付くのだ。
「室井君、湾岸店のグロッサリー一族は何処へ消えたのかね」
「それがですね、部長 湾岸店の上司三人にくっついて、グロッサリー全員束になって、新店舗へ移動しましたあっ~!」
バタッ! (*注意 狸部長が倒れた音)
「店長万歳 」
(注意 このセリフはカトちゃん)
それでは、映画を観終わった皆さん、
さよなら、サヨナラ、さよなら・・・・