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光照射のみでメタンの二酸化炭素改質反応を起こす光触媒材料の開発

2020-04-29 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の庄司州作博士後期課程3年と宮内雅浩教授、物質・材料研究機構の阿部英樹主席研究員、高知工科大学の藤田武志教授、九州大学大学院工学研究院の松村晶教授、静岡大学の福原長寿教授らの共同研究グループは、低温でメタンの二酸化炭素改質反応、ドライリフォーミングを起こすことができる光触媒材料の開発に成功した。
 ロジウムとチタン酸ストロンチウムからなる複合光触媒を開発し、光照射のみでドライリフォーミングを達成した。加熱を必要としないため、燃料の消費が大幅に抑えられるとともに、ヒーターなどによる加熱による触媒の劣化が起こらず長期間安定的に反応を継続することができ、地球温暖化ガスを有効利用できる方策として期待される。
 ドライリフォーミングは温室効果ガスのメタンと二酸化炭素を有用な化学原料に変換できる魅力的な反応であるが、800度以上の加熱が必要で、かつ加熱による触媒凝集並びに炭素析出による劣化の問題から、実用化には至っていない。
 本研究成果は2020年1月27日(英国時間)、英国科学誌「Nature Catalysis」にオンライン掲載。
 ポイント
 〇光照射のみでメタンの二酸化炭素改質反応を起こすことに成功。
 〇複合光触媒を開発し、従来の光触媒とは異なる反応機構を解明。
 〇 球温暖化ガスの有効利用策として期待。
 研究の背景と経緯
 ドライリフォーミング反応は温室効果ガスであるメタンと二酸化炭素から、水素と一酸化炭素の合成ガスに変換することができる(CH4+CO2→2CO+2H2)。生成した合成ガスはアルコールやガソリン、化学製品を製造する化学原料となるため、ドライリフォーミング反応は天然ガスやシェールガスの有効利用および地球温暖化抑止のために注目されている。
 しかし、この反応を効率よく進行させるためには800度以上の高温が必要となり、大量の燃料消費と高温条件における触媒の劣化が問題となっていた。本研究グループは、光エネルギーを使ってドライリフォーミング反応を起こす光触媒を開発した。従来の光触媒反応は水中の水素イオンが反応の媒体となって駆動する一方、乾燥条件で進行するドライリフォーミングに適した光触媒の探索が重要なポイントであった。
 研究成果
 開発した光触媒はチタン酸ストロンチウムに金属ロジウムがナノスケールで複合されている。この光触媒はチタン酸ストロンチウムとロジウム塩水溶液を密閉容器内で加熱処理することにより簡便に合成することができる。
 この光触媒に紫外線を照射すると、加熱をしない条件でも50%を超えるメタンと二酸化炭素転換率を示した。従来型の熱触媒で同じ性能を出すためには、500度以上の加熱が必要となることから、本研究グループの開発した光触媒の性能の高さが分かる。
 光触媒の各温度での活性を示す。本研究グループが開発した光触媒に光照射を行うことで、熱触媒の性能上限値を大きく上回る。また、この光触媒による水素と一酸化炭素の生成速度は、メタンと二酸化炭素の消費速度の2倍となった。このことから、光照射でドライリフォーミング反応が化学量論的に進行し、副反応がほとんど起こっていないことが示唆された。なお、光触媒として従来からよく知られる二酸化チタンを用いた場合は、本研究で用いたチタン酸ストロンチウムのような高い性能を示さない。
 この光触媒の耐久性を調べたところ、長期にわたり安定であることが分かった。反応前の光触媒と反応後の光触媒の超高解像度の電子顕微鏡写真を見ると、反応の前後でチタン酸ストロンチウムおよび、複合したロジウムに変化がないのに対し、従来型の熱触媒の代表であるニッケルを担持したアルミナの場合では、反応の前後で大きな変化が観察された。
 反応後に見られるチューブ状の物質は触媒表面で析出、成長したカーボンチューブであり触媒劣化、反応器の破壊の原因となる。すなわち、光触媒では加熱による触媒劣化が抑制されたのみでなく、工業的に致命的な副反応となる炭素析出が劇的に抑制された。
 次に、反応メカニズムを明らかにするため、開発した光触媒に対して実際の触媒反応の条件下で電子スピン共鳴法の解析を行ったところ、光照射によって生じた電子と正孔の電荷が反応を駆動していることが分かった。ドライリフォーミングは二酸化炭素の還元反応を含むため、種々の光触媒の中でも高い電子の還元力を持つチタン酸ストロンチウムが好適であることが分かった。
 さらに、同位体を用いた詳細な解析により、チタン酸ストロンチウム内の格子酸素のイオンが反応の媒体として作用していることを明らかにした。これまでよく知られている光触媒反応である水の分解や二酸化炭素還元などの人工光合成反応では、反応の媒体として水素イオンが使われていたが、本研究の光触媒反応は格子酸素イオンを媒体とする新しい反応で、さまざまな気相反応への展開が期待できる。
 今後の展開
 本研究では光触媒として紫外線応答型のチタン酸ストロンチウムを使っているが、実用化に向けては太陽光の主成分を成す可視光の利用が重要である。一方で、本研究では酸素イオンが媒体となるエネルギー製造型反応の機構を初めて見いだし、今後この新しい反応機構をもとに、可視光を吸収できる光触媒材料に展開することも可能である。本研究成果が天然ガスやシェールガスの有効利用につながるとともに、温室効果ガス低減に貢献できると期待される。また、低温で合成ガスを製造することができるため、既往の工業的手法と組み合わせることでガソリン製造などの施設の大幅な簡略化と効率化が望める。
 ◆用語解説
 〇ドライリフォーミング
 メタン改質反応の1つ。反応式はCH4+CO2=2H2+2COで表される。天然ガスの主成分であると同時に主要な温室効果ガスでもあるメタンと二酸化炭素を化学原料に転換することができるため、天然ガス有効利用と地球温暖化抑止の観点から注目されている。
 〇ロジウムとチタン酸ストロンチウ
 ムロジウムは原子番号45の元素。元素記号はRhで表される。チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)はストロンチウムとチタンの複合酸化物で、ペロブスカイト型の結晶構造をとる。
 〇シェールガス
 粘板岩層(シェール)の隙間に貯留された、メタンやエタンを主成分とする化石燃料の1つ。存在自体は古くから知られていたが、この10年、技術の進歩により、特に北米を中心として、商業ベースでの採掘が可能になった。
 〇光触媒
 光を吸収し触媒作用を示す物質の総称。酸化チタンが代表的な光触媒として知られている。
 〇化学量論的
 化学式通りの反応物量と生成物量を示す状態。ドライリフォーミングであれば、反応物と生成物の比が1:2になる場合に化学量論的に反応が進行したといえる。
 〇電子スピン共鳴法
 不対電子を持つイオン、ラジカルなどの検出が可能な実験手法。光触媒の中の電子や正孔など、多くの情報を得ることができる。
 〇同位体
 同一の原子番号で質量数が異なる物質。酸素の場合、質量数が16、17、18の同位体があり、地球上の99.8パーセントの酸素の質量数は16である。本研究では質量数18の酸素を触媒の中に導入し、質量分析装置を使ってその反応過程を追跡した。
 〇ペロブスカイト構造
 ペロブスカイト構造とは、結晶構造の一種である。ペロブスカイト(perovskite、灰チタン石)と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば、BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、RMO3 という3元系から成る遷移金属酸化物などが、この結晶構造をとる。
 理想的には、立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO6 八面体の向きは、金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。
 これにより、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、モット転移を起こし、金属Mのサイトに局在していた価電子がバンドとして広がることができるようになったり、金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による反強磁性秩序が崩れ、常磁性に転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。

 今日、4月29日は「昭和の日」と定められた祝日である。もともとは昭和天皇の誕生日を祝う祝日であったが、「みどりの日」を経て昭和の日となった。・・だんだんと遠くなる昭和の日々。
 道沿いのお庭の”ヒメリンゴ”。花が満開に咲いている。
 ”ヒメリンゴ”の果実は、小さなリンゴ(径1cm~2cm位)である。秋に、赤・黄色と熟す。
 ”ヒメリンゴ”の祖に、中国原産の犬林檎(いぬりんご)の別名説、犬林檎と蝦夷の小林檎(えぞのこりんご)の雑種説がある・・と言う。
 ヒメリンゴ(姫林檎)
 別名:犬林檎(いぬりんご)、実海棠(みかいどう)
 バラ科リンゴ属
 耐寒性落葉小高木
 開花時期は4月~5月(桜より遅れる)
 花は5弁花、花色は最初薄桃で満開時に白色となる
 果実は小さなリンゴ似(径2cm位)で、秋に赤・黄色となる
 果実の観賞期は10月~11月
 果実の数は春に咲いた花の数よりとても少ない。バラ科(リンゴ、ナシ、ウメなど)の多くは自家不和合性(自家受粉では受精しない性質)だから


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