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ロータリーエバポレーターのマクロ回転で、ねじれたキラル分子の合成に成功

2020-04-17 | 科学・技術
 東京大学 生産技術研究所の石井和之教授、半場藤弘教授、黒羽みずき大学院生、南部翔平大学院生、服部伸吾研究員(現:横浜市立大学助教)、北川裕一大学院生(現:北海道大学特任講師)、新村和寛大学院生、水野雄貴大学院生のグループは、ロータリーエバポレーターを使用して、フタロシアニン分子の単量体を含む溶液を濃縮することにより、キラルな触媒を用いずに、マクロな機械的回転に応じて、右巻きまたは左巻きにねじれたフタロシアニンキラル会合体を、高い再現性で合成することに成功した。会合体の"ねじれ"構造は分光測定により決定され、フラスコ内流体運動の"ねじれ"も計算することで、キラル誘起機構を提案した。本研究成果は10月31日(木)(中央ヨーロッパ時間)に、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」(オンライン版)に掲載。
 発表概要:
 分子は、その構造の鏡像と重ね合わすことができない性質(キラリティー)を示すことがあり、医薬品や材料の開発などにおいて極めて重要である。最近、マグネティックスターラーなどのマクロな機械的回転を使用した渦運動によって、超分子または高分子をねじってキラリティーを発現させる例が報告されており、生命のホモキラリティー起源の候補であることやキラルな触媒を用いない新たな合成法などの観点から注目を集めていた。一方、ロータリーエバポレーターのマクロな機械的回転を使用したキラル化合物の合成例も報告されていたが、再現性が低く、キラリティーを誘起する機構も不明であった。
 今回の発見は、マクロな機械的回転(~10-1m)とナノスケールの分子キラリティー(10-7~10-9m)に結びつけている点から、新しい科学分野となりえるだけでなく、生命のホモキラリティー起源を考える上での手がかりも提供している。さらに、キラルな触媒を用いずにキラル分子を合成する合成法やキラル光学材料へ調整する方法へと発展することが期待できる。
 発表内容
 背景
 分子は、その構造の鏡像と重ね合わすことができない性質を示すことがあり、これを分子のキラリティーと呼び、そのような分子をキラル分子と呼ぶ。アミノ酸には、D体、L体の鏡像異性体が存在するが、生物を構成するアミノ酸は、片方の鏡像異性体のL体のみである。これを生命のホモキラリティーと呼び、生命の起源に関わる未解決の難問である。また、分子のキラリティーは、医薬品や材料の開発などにおいて極めて重要であるため、キラルな触媒を用いた不斉合成(片方の鏡像異性体を選択的に合成すること)が数多く実施されており、更なる研究開発も盛んに行われている。
 渦運動は本質的にキラルであるが、スケールの違いにより、マクロな渦運動はナノスケールの分子のキラリティー(10-7~10-9m)には影響を与えないと考えられてきた。最近、マグネティックスターラーなどのマクロな機械的回転(~10-1m)を使用した渦運動によって、超分子または高分子をねじってキラリティーを発現させる例がいくつか報告されており、①地球の回転運動によって引き起こされる渦運動(コリオリ力)が生命のホモキラリティー起源の候補の一つであること、および②キラルな触媒を用いない新たな不斉合成法などの観点から注目を集めている。しかしこれらは、超分子やポリマーにキラルな"ねじれ"を与えることに相当し、キラル化合物を合成する方法ではなかった。一方、ロータリーエバポレーターのマクロな機械的回転を使用して、キラルではない分子の溶液を濃縮することにより、キラル会合体を合成した例も報告されてはいたが、①再現性が低いこと、②分子のキラリティーを誘起する機構が不明であったこと等から、マクロな機械的回転を使用して、ナノスケールのキラル化合物を合成することは、挑戦的な課題であった。
 研究
 本研究グループは、ロータリーエバポレーターにより、フタロシアニン分子の単量体を含む溶液を濃縮することにより、キラルな触媒を用いずに、マクロな機械的回転に応じて、右巻きまたは左巻きにねじれたフタロシアニン キラル会合体を、高い再現性で合成することに成功した。ここで、合成されたキラル会合体は、溶媒を完全に除去することで固定化されている。会合体の"ねじれ"構造は、円偏光二色性分光測定により決定され、フラスコ内流体運動の"ねじれ"も計算することで、キラル誘起機構を提案し、その機構をマグネティックスターラー実験によっても確認した。
 今回の発見は、マクロな機械的回転(~10-1m)とナノスケールの分子キラリティー(10-7~10-9m)に結びつけている点から、新しい科学を開拓しているだけでなく、生命のホモキラリティー起源を考える上での手がかりも提供している。さらに、キラルな触媒を用いずにキラル分子を合成する合成法やキラルな光学材料を調整する方法へと発展することが期待できる。
 ◆用語解説
 〇ロータリーエバポレーター
 溶媒を除去(留去)するために一般的に用いられる蒸留装置である。 フラスコを回転させることによって蒸発の効率を高めるとともに、突沸を防ぐ効果もある。
 〇キラル分子
 分子構造が、その鏡像と重ね合わすことができない性質を分子のキラリティーと呼び、そのような分子をキラル分子と呼ぶ。キラル分子は、ちょうど右手と左手のように互いに鏡像である1対の立体異性体を持ち、これらは互いに鏡像異性体であるという。アミノ酸や糖では、D体、L体の鏡像異性体が存在する。

 〇生命のホモキラリティー
 生物におけるアミノ酸はL体のみ、糖はD体のみであることを生命のホモキラリティーと呼び、その起源は未解明である。現在、①地球の自転運動による渦運動(コリオリ力)、②円偏光を用いた光化学反応、③磁気キラル二色性を用いた光化学反応の3つが、生命のホモキラリティー起源の候補となっている。
 〇フタロシアニン
 さまざまな場面で利用されている青・緑色の染料・顔料であるとともに、多様な応用の観点(光記録媒体、光伝導体、太陽電池、光がん治療など)からも注目される光機能性分子である。
 〇単量体と会合体
 同じ分子が集合することを会合と呼び、その集まりを会合体と呼ぶ。集合していない分子を単量体と呼ぶ。

 今日の天気は晴れ。風もなく、穏やかな日だ。夜から雨・風が強くなる、予報。
 藤川沿いの散歩で見つけた”ユスラウメ”の花。開花期間が短いようで、タイミングが合わないと見過ごす。でも、6月過ぎには径1cmほど赤く熟した果実を見ることができる。
 果実には、赤実種と白実種がある。この木は赤実種かな、赤実種は柄の短いサクランボの様に見える。白実種は果実が大きく、赤実種に比べると採れる量は少ない。果実は生食のほか、果実酒にも利用できる。
 名(ユスラウメ)の由来は、朝鮮語の”移徒楽(いさら)”が転訛して”ゆすら”となったとの説、揺すったら果実が落ちるからとの説などがある。
 ユスラウメ(桜桃・梅桃・山桜桃梅)
   桜桃(おうとう)はサクランボの別名でもある
 別名:ゆすら
 英名:downy cherry、Nanking cherry
 学名:Prunus tomentosa
 バラ科サクラ属
 落葉低木(丈は2m~3m)
 中国・朝鮮半島の原産、江戸初期に渡来
 開花時期は3月~4月
 花びらは5枚で径2cm前後、枝を覆うように沢山咲く
 花色は白・淡紅
 6月頃に赤い果皮の実(径1cm位)となる、熟した果実には光沢がある
 果肉は薄い白で、果皮が白色の品種もある


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