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新規作用機序に基づくB型肝炎ウイルス治療薬候補を同定

2018-11-01 | 医学
 東京大学医学部附属病院消化器内科の關場一磨大学院生、大塚基之講師、小池和彦教授らの研究グループは、相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術を応用し、ウイルスタンパクHBxと宿主タンパクDDB1との結合阻害剤を簡便に探索できるスクリーニング系を構築し、それによってニタゾキサニドをB型肝炎治療候補薬剤として同定した(10月25日発表)。
 さらに、ニタゾキサニドはHBxとDDB1結合を阻害することによって、ウイルスRNAをはじめとしたウイルス産物量を有意に抑えるという、既存B型肝炎治療薬には無い効果を有することを、初代ヒト肝細胞を用いた検討などで明らかにした。ニタゾキサニドは原虫による腸炎の治療薬として米国食品医薬局(FDA)で既に認可されている薬剤であり、今後のB型肝炎治療薬への転用(ドラッグリポジショニング)が期待される。
 研究グループはウイルスタンパクHBxと宿主タンパクDDB1との結合活性を簡便に測定するために、それぞれのタンパクにルシフェラーゼタンパクを断片状に付加した状態で発現することができるDNA分子を作製した。それらのDNA分子を細胞内で共発現させると、HBxとDDB1との結合状態をルシフェラーゼタンパクの酵素活性の強さで簡便にモニターすることができた。ここに、FDAがすでに認可している817種の薬剤を添加してルシフェラーゼ活性値の変化を観察したところ、ニタゾキサニドという薬剤が強くルシフェラーゼ活性値を抑制したことから、ニタゾキサニドがHBx・DDB1結合阻害作用を有することが示唆された。このニタゾキサニドのHBx・DDB1結合阻害作用は、免疫沈降法をはじめとした複数の別の実験で確認できた。
 次に、HBx発現細胞におけるニタゾキサニドの投与によるSmc5の発現回復効果を検証したところ、ニタゾキサニドはSmc5の量を有意に回復した。また、ミニサークルDNA技術を用いてウイルスのcccDNAを模倣するDNA分子を作製し、それに対するニタゾキサニドの効果を見たところ、ウイルスRNA転写が有意に抑制された。さらに、ストップコドンを挿入してHBx発現を欠損させた変異型の擬似cccDNAでは、このニタゾキサニドによるウイルスRNA転写抑制効果は失われることから、ニタゾキサニドの効果はHBx依存的であることが確認された。
 最後に、初代ヒト肝細胞を用いたB型肝炎ウイルス感染系において、ニタゾキサニドはSmc5の発現回復をもたらし、ウイルスRNAをはじめ、ウイルスタンパク、ウイルスDNA、cccDNA量を低下させることが確認された。
 以上のことから、ニタゾキサニドは、HBx・DDB1結合阻害という作用機序を持つ、新規のB型肝炎治療薬となる可能性が示された。
 これらの結果は、ニタゾキサニドがHBx・DDB1結合阻害剤として、既存のB型肝炎治療薬では達成困難なHBs抗原陰性化(Functional cure)を実現する可能性を有していることを示している。また、cccDNA量自体の減少効果も認めたことから、ウイルスRNA転写抑制にとどまらずウイルス完全排除へ向けた病態解明への一助ともなる可能性がある。
 今後は、これらのデータをもとに、化合物構造の最適化や動物モデルなどでの検討を加えて、ヒトへの応用の可能性を探っていきたいと考えている、と言う。
 ◆肝炎(英Hepatitis)
 肝臓に炎症が起こり発熱・黄疸・全身倦怠感などの症状を来たす疾患の総称。
 日本ではウイルス性による肝炎が80%を占め、特にA型、B型、C型が多い。
 肝炎の原因は、
 ウイルス性肝炎A型肝炎:経口感染が主、慢性化しないので重症化は少ない
 B型肝炎:体液感染(血液・唾液・精液など)や産道感染が感染経路。慢性化する可能性がある。
 C型肝炎:血液感染(輸血による場合が多い)が主で、慢性化しやすく、肝癌や肝硬変に移行する可能性が高い。C型肝炎はワクチンが存在しないので予防接種による感染の予防はできない。
 ◆ニタゾキサニド
 分子式:C12H9N3O5S
 他の名称: Nitazoxanide(ニタゾキサニド)、2-(Acetyloxy)-N-(5-nitro-2-thiazolyl)benzamide
 体系名:2-(アセチルオキシ)-N-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ベンズアミド
 ◆用語
 〇B型肝炎ウイルス
 血液や体液などを介して肝臓に感染するDNAウイルス。感染したウイルスは炎症(肝炎)を惹起し、肝硬変や肝癌の原因となる。
 世界保健機関(WHO)は、B型肝炎ウイルス感染者は世界中で20億人、そのうちB型肝炎ウイルス持続感染者は2.57億人、さらに年間90万人がB型肝炎ウイルス関連疾患で死亡していると報告し、その克服を重要課題として挙げている。
 〇相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術
 ルシフェラーゼ(発光酵素)のDNA配列を適切な部位で2つに分断し、生成したルシフェラーゼ断片(スプリットルシフェラーゼ)が細胞内で物理的に近づくと、構造的相補性に基づき分断されていても活性を回復する現象を活用した測定技術。
 〇初代ヒト肝細胞
 ヒトから採取された肝臓組織から培養した細胞。B型肝炎ウイルスはヒトやチンパンジーなど、感染できる宿主が限られており、一般的に研究に用いられる肝癌細胞株にも感染しないため、B型肝炎ウイルスの感染実験を行うには初代ヒト肝細胞を用いる。
 〇ドラッグリポジショニング
 目的の疾患の治療薬を、別の疾患に有効な治療薬の中から見つけ出すこと。この手法では、すでにヒトでの安全性や薬物動態の試験に合格している薬剤を用いるため、新薬であれば行わなければいけない試験を省略できる、薬剤の製造方法が確立しているため開発期間の短縮・研究開発コストを低減できる、といった利点がある。高騰し続けている医薬品価格の抑制への寄与も期待される。
 〇逆転写酵素阻害剤
 B型肝炎の治療に広く用いられているウイルスDNA複製阻害剤。B型肝炎ウイルスはその生活環の中で、プレゲノムRNAからDNAへの逆転写を行うが、逆転写酵素阻害剤はウイルスDNAポリメラーゼ/逆転写酵素による基質の取り込みを競合的に阻害してDNA鎖の伸長を停止することでウイルスの増殖を阻害する。エンテカビルやテノホビルがその代表薬。
 〇cccDNA
 covalently closed circular DNAの略。B型肝炎ウイルスは肝細胞に侵入すると、もともと不完全環状二本鎖の形態をとっているウイルスDNAが核内に移行し、完全閉鎖環状二本鎖の形態cccDNAに変換される。cccDNAは核内に安定的に存在し続け、ウイルスRNAを作るための鋳型として働く。既存のB型肝炎ウイルス治療薬では排除が困難である。
 〇ユビキチン・プロテアソーム系
 ユビキチンの活性化から結合、プロテアソーム(タンパク分解酵素)によるタンパク分解までを担う一連の生化学経路。ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)の3種類の酵素の働きで、E3に選択的に識別された標的タンパクがポリユビキチン修飾を受けると、ポリユビキチン鎖が標識となって、ユビキチン修飾を受けたタンパクはプロテアソーム(タンパク分解酵素)によって分解される。
 〇ミニサークルDNA技術
 プラスミドDNAからバクテリア由来の複製開始点や抗生物質耐性遺伝子などバックボーン部分を取り除き、標的遺伝子配列のみの環状2本鎖DNA(ミニサークルDNA)を作成する技術。この技術を用いると、B型肝炎ウイルス遺伝子配列のみを完全閉鎖二本鎖の状態で合成することができ、cccDNAを模倣した状態を再現できる。

 今日の天気は晴れ。風が少しある。
 天気が良いので、曹洞宗(禅宗)の古刹である輪王寺に出かけた。輪王寺の禅庭園は東北有数の名園として知られており、”仙台市わがまち緑の名所100選”(北山界隈、輪王寺・資福寺・覚範寺・東昌寺・光明寺)に選ばれている。
 もうモミジがだいぶ色付いたかな、と思ったら、ほんの一部だけが紅葉。あと少しで紅葉の見ごろになる・・!!。
 ★輪王寺
 所在地:宮城県仙台市青葉区北山
 嘉吉(かきつ)元年(1441年)に、伊達持宗が祖母の冥福を祈るために福島県伊達郡に建立。その後、伊達家居城の移動と共に米沢・岩出山などと巡り、慶長7年(1602年)に伊達政宗が居を仙台に移したので、現在(北山)の地に落ち着いた。
 明治9年(1876年)の北山大火で輪王寺もほとんどの建物が焼失した。焼け残った山門は、昭和61年(1986年)に仙台市指定有形文化財に指定された。火災後の明治36年(1903年)に福定無外和尚が復興し、大正4年(1915年)に現在の本堂や庫裏を建築し、庭園を整備した。


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