北武記念絵画館が1996年開館して以来、おそらく初めて写真をメインに据えた展覧会。
社会問題にかかわる内容(というか、題材が東北沿岸なので、どうしてもそうなってしまう)も同館としては異例のことです。
当初は12月22日までの予定でしたが、事情により会期末が2日繰り上がっています。
「海町」は、街角の写真などで知られる尾仲浩二(1960年、福岡県直方市生まれ)が、1991~93年に東北の太平洋沿岸で撮ったモノクロのシリーズ。
90年代というと、ついこの間というか、現代という感じがしてしまうのですが、街並みはいかにも懐かしい雰囲気が漂っています。昭和が終わったばかりの頃です。
写真家は「3・11」の衝撃を機に、20年前のフィルムを写真集にまとめました。そこには東北に寄せる痛切な思いがつづられています。
写っている街角には、津波や原発事故で失われてしまったものも多いのでしょう。
冒頭画像の左側は宮城県気仙沼市ですが、筆者は2012年1月に同市を訪れているので
「津波の前はこんなにたくさん建物が建っているのか」
と驚きました。
撮影地のキャプションがついていました。
宮古
鮎川
小名浜
塩竈
気仙沼
釜石
志津川
女川
石巻
陸前高田
画像の左手前は、陸前高田駅です。
ディーゼルカーがホームに入ってくるところですが、中央附近にレールバスが置かれているような気がしてなりません(プリントをさらに倍ぐらいにしてもらわないと確認できないような小ささです)。
レールバスが活躍したのは主に1960年代で、この時代には走っていないはずなのですが…。
宮古では、自転車に乗った制服姿の女子生徒2人が踏切を渡る場面のスナップがあり、手前の家の壁に「向町 8」の表示があるのが見えます。
(いまストリートビューで確認すると、向町8は三陸鉄道北リアス線が閉伊川を渡る直前で、踏切は存在しない。住居表示の変更があったのかもしれない)
あと、鮎川港に船が入ってくる写真で、港に「鮎川ホエールワールド」などという看板が見えてにぎやかさがうかがわれ、これもショックでした。
筆者は2019年にこの地を訪ねているのですが、大震災による大打撃をへて、コンビニエンスストアがないような地区になっていたのです。
尾仲さんが撮影した当時はまだ石巻市と合併する前の、独立した村です。捕鯨基地として栄えていた時代の名残りがあったのでしょうか。
小名浜は福島県いわき市内です。
漁港の岸に、いらなくなった氷の山があり、その前を犬が歩きすぎる、という1枚があり、のんびりした雰囲気が忘れがたいです。
順番は前後しますが、1階の部屋に、若手の坪井明花さんによる油彩の大作2点が展示されていました。
「暖かい時間」など、いずれも夕暮れ時の広々とした風景の中に、なぜか裸の赤ん坊が何人かいるという、坪井さんならではの絵です。
風景描写は美しく、クロード=ロランなどの泰西名画を思い出させます。
100号クラスの絵画は、団体公募展に出品した後は、始末に困っている人も多いことでしょう。
こうして地元のコレクターが購入するというのは、とってもすてきなことだと思います。
それはさておき、例によってこの絵に近づいて見ると…。
右下の部分を写してみました。
シカがいるのはともかく、石油タンクがあるのに笑ってしまいました。
中央奥の廃屋2棟には、赤い旗が掲げられています。
中央の川には壊れたミツバチ飼育用のような木箱がいくつも転がり、左手には馬が何頭かいます。
ほかに高橋美則の油絵と関野準一郎の木版画が2点ずつありました。
関野の版画「松嶋」が展示されている部屋にコーヒーサーバーが置かれ、入場者は1杯飲むことができます。
ふと上を見ると、ゆらゆらと揺れているのは jobin. さんのモビールではないですか!
2024年12月5日(木)~20日(金)午前10時~午後5時(入場30分前)、月・火・水曜休み
HOKUBU 記念絵画館(札幌市豊平区旭町1)
一般700円
□尾仲浩二 公式ホームページ https://www.onakakoji.com/
過去の関連記事へのリンク
東川町国際写真フェスティバルの受賞者フォーラム (2002。この下、7月28日付のところにも尾仲浩二さんの話題があります)
■第5回ホープ展 太田香・坪井明花「追憶のかたち」 (2024年10月4日~11月1日、岩見沢)
■第16回春季二紀展 (2024年3月)※坪井さん出品
・地下鉄東豊線「学園前駅」から約500メートル、徒歩6分
・地下鉄南北線「中島公園駅」から約900メートル、徒歩11分
・地下鉄東西線「菊水駅」から約1.1キロ、徒歩14分
・じょうてつバス「旭町1丁目」から約240メートル、徒歩3分
※地下鉄南北線中の島駅で乗り継ぎ
・ギャラリー犬養から約750メートル、徒歩10分
・ト・オン・カフェから約940メートル、徒歩13分
社会問題にかかわる内容(というか、題材が東北沿岸なので、どうしてもそうなってしまう)も同館としては異例のことです。
当初は12月22日までの予定でしたが、事情により会期末が2日繰り上がっています。
「海町」は、街角の写真などで知られる尾仲浩二(1960年、福岡県直方市生まれ)が、1991~93年に東北の太平洋沿岸で撮ったモノクロのシリーズ。
90年代というと、ついこの間というか、現代という感じがしてしまうのですが、街並みはいかにも懐かしい雰囲気が漂っています。昭和が終わったばかりの頃です。
写真家は「3・11」の衝撃を機に、20年前のフィルムを写真集にまとめました。そこには東北に寄せる痛切な思いがつづられています。
写っている街角には、津波や原発事故で失われてしまったものも多いのでしょう。
冒頭画像の左側は宮城県気仙沼市ですが、筆者は2012年1月に同市を訪れているので
「津波の前はこんなにたくさん建物が建っているのか」
と驚きました。
撮影地のキャプションがついていました。
宮古
鮎川
小名浜
塩竈
気仙沼
釜石
志津川
女川
石巻
陸前高田
画像の左手前は、陸前高田駅です。
ディーゼルカーがホームに入ってくるところですが、中央附近にレールバスが置かれているような気がしてなりません(プリントをさらに倍ぐらいにしてもらわないと確認できないような小ささです)。
レールバスが活躍したのは主に1960年代で、この時代には走っていないはずなのですが…。
宮古では、自転車に乗った制服姿の女子生徒2人が踏切を渡る場面のスナップがあり、手前の家の壁に「向町 8」の表示があるのが見えます。
(いまストリートビューで確認すると、向町8は三陸鉄道北リアス線が閉伊川を渡る直前で、踏切は存在しない。住居表示の変更があったのかもしれない)
あと、鮎川港に船が入ってくる写真で、港に「鮎川ホエールワールド」などという看板が見えてにぎやかさがうかがわれ、これもショックでした。
筆者は2019年にこの地を訪ねているのですが、大震災による大打撃をへて、コンビニエンスストアがないような地区になっていたのです。
尾仲さんが撮影した当時はまだ石巻市と合併する前の、独立した村です。捕鯨基地として栄えていた時代の名残りがあったのでしょうか。
小名浜は福島県いわき市内です。
漁港の岸に、いらなくなった氷の山があり、その前を犬が歩きすぎる、という1枚があり、のんびりした雰囲気が忘れがたいです。
順番は前後しますが、1階の部屋に、若手の坪井明花さんによる油彩の大作2点が展示されていました。
「暖かい時間」など、いずれも夕暮れ時の広々とした風景の中に、なぜか裸の赤ん坊が何人かいるという、坪井さんならではの絵です。
風景描写は美しく、クロード=ロランなどの泰西名画を思い出させます。
100号クラスの絵画は、団体公募展に出品した後は、始末に困っている人も多いことでしょう。
こうして地元のコレクターが購入するというのは、とってもすてきなことだと思います。
それはさておき、例によってこの絵に近づいて見ると…。
右下の部分を写してみました。
シカがいるのはともかく、石油タンクがあるのに笑ってしまいました。
中央奥の廃屋2棟には、赤い旗が掲げられています。
中央の川には壊れたミツバチ飼育用のような木箱がいくつも転がり、左手には馬が何頭かいます。
ほかに高橋美則の油絵と関野準一郎の木版画が2点ずつありました。
関野の版画「松嶋」が展示されている部屋にコーヒーサーバーが置かれ、入場者は1杯飲むことができます。
ふと上を見ると、ゆらゆらと揺れているのは jobin. さんのモビールではないですか!
2024年12月5日(木)~20日(金)午前10時~午後5時(入場30分前)、月・火・水曜休み
HOKUBU 記念絵画館(札幌市豊平区旭町1)
一般700円
□尾仲浩二 公式ホームページ https://www.onakakoji.com/
過去の関連記事へのリンク
東川町国際写真フェスティバルの受賞者フォーラム (2002。この下、7月28日付のところにも尾仲浩二さんの話題があります)
■第5回ホープ展 太田香・坪井明花「追憶のかたち」 (2024年10月4日~11月1日、岩見沢)
■第16回春季二紀展 (2024年3月)※坪井さん出品
・地下鉄東豊線「学園前駅」から約500メートル、徒歩6分
・地下鉄南北線「中島公園駅」から約900メートル、徒歩11分
・地下鉄東西線「菊水駅」から約1.1キロ、徒歩14分
・じょうてつバス「旭町1丁目」から約240メートル、徒歩3分
※地下鉄南北線中の島駅で乗り継ぎ
・ギャラリー犬養から約750メートル、徒歩10分
・ト・オン・カフェから約940メートル、徒歩13分