北海道美術ネット別館

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■中根隆弥展 砂浜の中の川 (2024年11月8~14日、小樽)

2024年11月18日 17時29分15秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 小樽の梁川通でまちおこしの拠点になっている裏小樽モンパルナスで初めて行われたアーティスト・イン・レジデンス。第1号滞在作家となった山梨県の中根隆弥さんが、小樽で入手した廃品を活用したインスタレーションによる個展を開いていました。
  
 
 裏小樽モンパルナスのサイトには

小樽市ふるさとまちづくり協働事業助成事業/池袋アートギャザリング公募展 IAG AWARDS 2024EXHIBITION 連携事業 裏小樽モンパルナス特別賞受賞

とあります。
 東京有数の繁華街・池袋を擁する豊島区が「池袋アートギャザリング公募展」というコンペを行っており、その賞のひとつに「裏小樽モンパルナス特別賞」があって、小樽での滞在制作に招待されることになっています。
 戦前、裕福でない画学生を対象にしたアトリエ付きアパートが池袋駅西口に立ち並んだことから、一帯は「池袋モンパルナス」と俗にいわれていました。名付け親は小樽・旭川ゆかりの詩人小熊秀雄だったとされており、小熊が豊島区と小樽市をつなげた恰好になります。

 中根さんは11月7日まで滞在制作を行い、期間中の9日にはワークショップ、10日にはトークセッション、ライブドローイングと、精力的に日程をこなしました。
 市民の協力で、市東部にある廃業した印刷屋の廃品をたくさん入手できたのだそうです。
 冒頭画像で、右の壁に貼ってある板のようなものは、活字を収納していた木製のケースです。
 
 
 中根さんの作品シリーズに「ドローイングマシン」というのがあります。
 なにやら興味をそそられますが、どれがそのマシンなんですか?と尋ねると、なんとこの帆掛け舟のような立体がそれだとのこと。
 舷側に筆を取り付けた枝が何本もくっついており、船を曳くと、下に敷いた紙に筆の跡がつきます。
 期間中のライブドローイングというのは、よくあるアーティストが大きな紙に刷毛や筆を走らせるパフォーマンスではなく、梁川通りの路上で実際にこの舟を引っ張ったのだそうです。
 
 
 この画像や2枚めの画像で、天井から、ウニや星のように、ガラス玉から筆が何本も生えているような奇妙な物体がつりさげられています。
 これも「ドローイングマシン」の一種です。

 「マシン」という名がついていますが、人間の対立項として措定されがちな機械というよりもむしろ、人間の原初的な衝動や本能といった感情を解放するための道具のように見えてきます。


 そういえば昔は、小樽の海にガラスの浮き球がいくつも浮かんでいたものですが、近年はほとんど見かけなくなりました。
 そもそも小樽にグラススタジオが多いのは、浮き球を製造していたのが、いまや小樽を代表する観光名所である北一硝子だったことが背景にあるのですが…。  
 
 
 会場で目を引くのが、奥の小部屋との仕切りになっている壁です。
 これも廃物の古い板やガラス窓などを活用してつくったもので、とてもいい味を出していると感じました。
 中根さんに聞くと、一部をどこかに移設して残せないか、という話になっているそうです。
 
「滞在中は小樽の皆さんにほんとうに良くしていただいた。今年で一番の体験になったと思います」
と中根さんは笑顔で話しておられました。

 あと、これはご本人に確認してきておらず、いまになって気が付いたことなのですが、この副題って「小樽」のアイヌ語の語源と関係がありそうですね。
 
 
 2024年11月8日(金)~14日(木)午前11時~午後6時
 裏小樽モンパルナス(小樽市稲穂4)

□Instagram : @r.n.artist2021

2024年11月14日小樽→札幌 - 北海道美術ネット別館

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