(承前)
北広島市芸術文化ホールが企画した4人展について、残る2人(谷口明志さん、藤沢レオさん)を紹介します。
おふたりとも、道内では屈指の、精力的な活動を行っている作家なので、このブログの読者にもなじみが深いのではないでしょうか。
谷口さんは、北広島高校で美術を教えています。
小樽美術館での個展(2015年)などで、床下なども含めた空間を線が自在に疾走するようなドローイング作品を発表したあと、さらに「線」についての考察を進め、壁に投影された針金の影がつながることによって壁面を線が走るようなインスタレーション(架設展示)を展開しています。
3年ほど前に「between」(間)というテーマでグループ展を開いた際に思いついた手法だそうです。
この画像だけではわかりづらいと思うので、一昨年2月にギャラリーレタラで開いた個展の様子を見てほしいのですが、壁面に垂直に、高さ数センチの針金を、数センチ間隔でいくつも取りつけます。
スポットライトを複数の方向から当てると、針金が影をつくり、その影が他の針金の影と壁の上でつながって、長い1本の線になっていきます。
したがって、このインスタレーションで何が大変かというと、設営なのです。
スポットの位置や角度を現場で調節しながら針金の設置を一つ一つ進めていきます。
このときも、スポットの設定に1日かかり、その後は仕事が終わると毎日、午後10時まで会場で微調整。全体で30時間ほどかかっているそうです。
目を引くのが足元に置かれた立体の数々。
これは、子どもが壁に突進して針金でけがをすることなどを防ぐための結界の役割を果たしています。
天井にはセンサーが3個取りつけられ、人が近づくとスポットライトが作動します。
会期中に行われたアーティストトークで筆者が印象に残っているのは、谷口さんが「『関係』は『動き』がないとできない。それがスポットの光」と話したことでした。
絵画制作になにやら大きな示唆をはらんでいることばのような気がします。
藤沢レオさんのインスタレーションは、以前、札幌市東区の茶廊法邑で発表済みのものの流用で、今回の4人の中では最もコンセプチュアルな作品だといえそうです。
藤沢さんは、苫小牧を拠点に、アートと地域を結ぶ地道な活動に取り組みながら、展覧会の開催、金工作家、モニュメント制作など幅広く活動をしています。
床に直方体が置かれ、ひとつ穴があいています。
旗や柱が立てられるスペースのように見えます。
レオさんによると「柱を立てる」という行為は「ものごとを始めることの象徴」であり、2011年の大震災以降、考え続けてきたことのひとつの帰結なのだそうです。
「洞窟から出てきた原始の人類がまず行ったのは、柱を立てることではないか。ささいな行為ではあるけれど、みんながそれをすると、場は変わっていくのではないかと考えています」
この画像にはありませんが(1枚の画像に全景が入らないように配置されていたので)、壁側には青い板のようなものが飾られていたと記憶しています。青いボールペンでひたすらかいたものだそうです。
「生と死」について真摯に考え続けている藤沢レオさんの姿勢はとても好ましく感じられます。
抽象的な言葉を視覚に翻案するのではなくて、そういう対応関係からこぼれ落ちるもの、言葉ではついにすくいきれない「何か」が感じ取れるようになれば、作品はさらに良くなるのではないかと思います(偉そうですみませんが、期待しております)。
2017年11月11日(土)~16日(木)
北広島市芸術文化ホールギャラリー(北広島市中央6)
関連記事へのリンク
■札幌のアーティスト50人展 (2017~18)
■谷口明志展 空間への drawing の試み (2016)
■谷口明志展 (2016年2月)
■谷口明志 インスタレーション 線の虚構 (2015)
【告知】谷口明志インスタレーション 線の虚構
■川上りえ 札幌文化奨励賞受賞記念 Plus1 Group Exhibition (2013年)
■JRタワー・アートプラネッツ2012 楽しい現代美術入門 アルタイルの庭 (2012年)
■谷口明志・川上りえ Space Abstraction II (2012年)
谷口明志「Drawing」 ハルカヤマ藝術要塞
■500m美術館(2010年11~12月)
■谷口明志 × 川上りえ (2010年10月)
■PLUS ONE THIS PLACE (2010年9月)
■第7回北海道高等学校文化連盟石狩支部顧問展 (2010年1月)
■水脈の肖像09-日本と韓国、二つの今日 (2009年12月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 谷口明志 坂東宏哉 大島潤也 ダム・ダン・ライ(2009年8月)
■PLUS 1 Groove (2009年8月)
■谷口明志展(2009年3月)
■第6回北海道高等学校文化連盟石狩支部美術部顧問展(2009年1月)
■40周年小樽美術協会展(2008年6月)
■Dala Spaceオープン記念作品展(2007年)
■第39回小樽美術協会展(2007年)
■絵画の場合(2007年)
■PLUS1 groove (2007年)
■グループ プラスワン展(2006年)
■谷口明志展(2006年)
■第3回高文連石狩支部美術部顧問展(2006年)
■絵画の場合アーティストトーク(2005年)
■5th グループ・プラスワン(2004年)
■高文連石狩支部美術部顧問展(2004年2月6日の項。画像なし)
■札幌の美術2002(画像なし)
■さっぽろ美術展2001(画像なし)
□ http://leofujisawa.com/
北見赤十字病院のパブリックアート 藤沢レオさん
茶廊法邑のリニューアル後を見に行きました(2017)
■REIJINSHA GALLERY’S EYE Vol.2 (2017)
■紐解く時間 読む時を演出する作品展 (2016)
【告知】樽前arty2015 × 時間旅行/樽前堂 (2015)
【告知】想像の山脈 vol.1(2015年)
ICE HILLS HOTEL - アイスヒルズホテル in 当別 (2014)
札幌アートフェア2013に行ってきました。
【告知】樽前arty2013 アートセンターのある暮らし
【告知】藤沢レオ「森にて、」 (2012)
藤沢レオ「知ル」 ハルカヤマ藝術要塞
【告知】Approach デザインとアートの接近(2011年11月)
■記憶の循環(2011年8月)
【告知】藤沢レオ小品展 Le Auction vol.2
■500m美術館 (2010年)
■アートとの対話~森迫暁夫&藤沢レオの場合~ 鉄筋布張り住宅(2010年9~10月)
■水脈の肖像09-日本と韓国、二つの今日 (2009年12月)
■国松希根太・伴翼・藤沢レオ「ある」(2009年3月。執筆途中)
■法邑芸術文化振興会企画展〔滲-shin-〕(2008年)
■法邑芸術文化振興会企画展〔滲-shin-〕=品品法邑
■ART BOX 札幌芸術の森・野外ステージ
■藤沢レオ-パサージュ
■鉄 強さとやさしさの間で(07年12月、画像なし)
■藤沢レオ展(07年)
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谷口さんは、北広島高校で美術を教えています。
小樽美術館での個展(2015年)などで、床下なども含めた空間を線が自在に疾走するようなドローイング作品を発表したあと、さらに「線」についての考察を進め、壁に投影された針金の影がつながることによって壁面を線が走るようなインスタレーション(架設展示)を展開しています。
3年ほど前に「between」(間)というテーマでグループ展を開いた際に思いついた手法だそうです。
この画像だけではわかりづらいと思うので、一昨年2月にギャラリーレタラで開いた個展の様子を見てほしいのですが、壁面に垂直に、高さ数センチの針金を、数センチ間隔でいくつも取りつけます。
スポットライトを複数の方向から当てると、針金が影をつくり、その影が他の針金の影と壁の上でつながって、長い1本の線になっていきます。
したがって、このインスタレーションで何が大変かというと、設営なのです。
スポットの位置や角度を現場で調節しながら針金の設置を一つ一つ進めていきます。
このときも、スポットの設定に1日かかり、その後は仕事が終わると毎日、午後10時まで会場で微調整。全体で30時間ほどかかっているそうです。
目を引くのが足元に置かれた立体の数々。
これは、子どもが壁に突進して針金でけがをすることなどを防ぐための結界の役割を果たしています。
天井にはセンサーが3個取りつけられ、人が近づくとスポットライトが作動します。
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絵画制作になにやら大きな示唆をはらんでいることばのような気がします。
藤沢レオさんのインスタレーションは、以前、札幌市東区の茶廊法邑で発表済みのものの流用で、今回の4人の中では最もコンセプチュアルな作品だといえそうです。
藤沢さんは、苫小牧を拠点に、アートと地域を結ぶ地道な活動に取り組みながら、展覧会の開催、金工作家、モニュメント制作など幅広く活動をしています。
床に直方体が置かれ、ひとつ穴があいています。
旗や柱が立てられるスペースのように見えます。
レオさんによると「柱を立てる」という行為は「ものごとを始めることの象徴」であり、2011年の大震災以降、考え続けてきたことのひとつの帰結なのだそうです。
「洞窟から出てきた原始の人類がまず行ったのは、柱を立てることではないか。ささいな行為ではあるけれど、みんながそれをすると、場は変わっていくのではないかと考えています」
この画像にはありませんが(1枚の画像に全景が入らないように配置されていたので)、壁側には青い板のようなものが飾られていたと記憶しています。青いボールペンでひたすらかいたものだそうです。
「生と死」について真摯に考え続けている藤沢レオさんの姿勢はとても好ましく感じられます。
抽象的な言葉を視覚に翻案するのではなくて、そういう対応関係からこぼれ落ちるもの、言葉ではついにすくいきれない「何か」が感じ取れるようになれば、作品はさらに良くなるのではないかと思います(偉そうですみませんが、期待しております)。
2017年11月11日(土)~16日(木)
北広島市芸術文化ホールギャラリー(北広島市中央6)
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