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続き■平面と立体の交差 ・北広島のコンテンポラリーアート (2017年11月11~16日、北広島)

2018年01月23日 12時22分00秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前

 北広島市芸術文化ホールが企画した4人展について、残る2人(谷口明志さん、藤沢レオさん)を紹介します。
 おふたりとも、道内では屈指の、精力的な活動を行っている作家なので、このブログの読者にもなじみが深いのではないでしょうか。

 谷口さんは、北広島高校で美術を教えています。
 小樽美術館での個展(2015年)などで、床下なども含めた空間を線が自在に疾走するようなドローイング作品を発表したあと、さらに「線」についての考察を進め、壁に投影された針金の影がつながることによって壁面を線が走るようなインスタレーション(架設展示)を展開しています。

 3年ほど前に「between」()というテーマでグループ展を開いた際に思いついた手法だそうです。

 この画像だけではわかりづらいと思うので、一昨年2月にギャラリーレタラで開いた個展の様子を見てほしいのですが、壁面に垂直に、高さ数センチの針金を、数センチ間隔でいくつも取りつけます。
 スポットライトを複数の方向から当てると、針金が影をつくり、その影が他の針金の影と壁の上でつながって、長い1本の線になっていきます。

 したがって、このインスタレーションで何が大変かというと、設営なのです。
 スポットの位置や角度を現場で調節しながら針金の設置を一つ一つ進めていきます。
 このときも、スポットの設定に1日かかり、その後は仕事が終わると毎日、午後10時まで会場で微調整。全体で30時間ほどかかっているそうです。


 目を引くのが足元に置かれた立体の数々。
 これは、子どもが壁に突進して針金でけがをすることなどを防ぐための結界の役割を果たしています。

 天井にはセンサーが3個取りつけられ、人が近づくとスポットライトが作動します。

 会期中に行われたアーティストトークで筆者が印象に残っているのは、谷口さんが「『関係』は『動き』がないとできない。それがスポットの光」と話したことでした。
 絵画制作になにやら大きな示唆をはらんでいることばのような気がします。


 藤沢レオさんのインスタレーションは、以前、札幌市東区の茶廊法邑 さ ろうほうむらで発表済みのものの流用で、今回の4人の中では最もコンセプチュアルな作品だといえそうです。

 藤沢さんは、苫小牧を拠点に、アートと地域を結ぶ地道な活動に取り組みながら、展覧会の開催、金工作家、モニュメント制作など幅広く活動をしています。

 床に直方体が置かれ、ひとつ穴があいています。
 旗や柱が立てられるスペースのように見えます。
 レオさんによると「柱を立てる」という行為は「ものごとを始めることの象徴」であり、2011年の大震災以降、考え続けてきたことのひとつの帰結なのだそうです。
「洞窟から出てきた原始の人類がまず行ったのは、柱を立てることではないか。ささいな行為ではあるけれど、みんながそれをすると、場は変わっていくのではないかと考えています」

 この画像にはありませんが(1枚の画像に全景が入らないように配置されていたので)、壁側には青い板のようなものが飾られていたと記憶しています。青いボールペンでひたすらかいたものだそうです。


 「生と死」について真摯に考え続けている藤沢レオさんの姿勢はとても好ましく感じられます。
 抽象的な言葉を視覚に翻案するのではなくて、そういう対応関係からこぼれ落ちるもの、言葉ではついにすくいきれない「何か」が感じ取れるようになれば、作品はさらに良くなるのではないかと思います(偉そうですみませんが、期待しております)。


2017年11月11日(土)~16日(木)
北広島市芸術文化ホールギャラリー(北広島市中央6) 


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