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あいちアートトリエンナーレ2010・瀬戸内国際芸術祭2010報告(4)

2010年10月05日 20時54分29秒 | 読者からの投稿
承前


9月8日(水)

瀬戸内国際芸術祭 男木島(人口200人)

ジャウメ・プレンサ(案内所)/大岩オスカール/井村隆/松本秋則/川島猛とドリームフレンズ/高橋治希(焼物の花)/北山善夫/漆の家プロジェクト/オンバ・ファクトリー/西掘隆史/谷山恭子/中西中井/谷口智子/島こころ椅子プロジェクトグループ/眞壁陸二/ジェームズ・ダーリング&レスリー・フォーウッド

 男木島は、まずジャウメ・プレンサの案内所が迎えてくれる。急な坂道に寄り添うように家々がある。迷路の様な坂道を巡りながら美しい風景の中アート探索は実に興味深い。過疎化のため空き家を利用した施設がほとんどで男木島の活性化に寄与している。なかでもオンバ・ファクトリーは村人が坂道に使用する台車をリニューアルや制作するプロジェクトを展開して、地域の高齢者に寄与する関わりを見る事ができた。注文が殺到していると聞いた。素晴しい地域貢献の例である。他に、眞壁陸二の家々の壁画や大岩オスカール、谷山恭子、川島猛とドリームフレンズなど地域に取材した作品が多く見所満載であった。9/26に大岩オスカール「大岩島」の作品が火事のよる延焼で消失してしまったのは残念である。地域で開催するとこのようなデメリットがあることを念頭におかなければならない。



瀬戸内国際芸術祭 女木島(人口200人)=写真は女木島からの眺め=

レアンドロ・エルリッヒ/鈴木康弘/禿鷹墳上/愛知県立芸術大学アートプロジェクトチーム/木村崇人/ロルフ・ユリアス/サンジャ・サソ/行武 治美
福武ハウス2010:杉本博司/大塚聡/石川直樹/スターリング・ルビー/ビル・ヴィオラ/ビョルン・ダーレム/チャン・ジュンホ/邱黯雄/ラング&バウマン/ジュン・ヤン/ギャルリー・タデウス・ロパック

 女木島は鬼が島伝説の島である。鷹が峰山頂の洞窟や山頂の作品を見る。頂上は瀬戸内海が一望できる名所である。山道を下り福武ハウスの各ギャラリー選出の作品を見て島内のアート探索をした。金沢や越後妻有での活躍も目覚ましいレアンドロ・エルリッヒの作品はレストランにもなっていて憩いの場として提供されている。枯山水の庭に足跡が付いたり消えたりする作品と二重の茶室で不在の存在を出していた。興味深い作品であった。愛知県立芸術大学アートプロジェクトチームはオオテと呼ばれる防風防潮用の石垣と空き家をうまく利用して庭にと家の床を連動するフラットな床を作り、各種イベントが開催されるステージを作っていた。我が札幌市立大学も参加の場を確保したいものである。鈴木康弘の瀬戸内の海をチャックの用に空けるファスナーの船は出港中で見る事が出来なかった。




9月9日(木)

瀬戸内国際芸術祭 大島(人口100人)

◎ やさしい美術プロジェクト
大島はハンセン病の療養所の島で、永らく強制隔離された悲劇の島である。2008年にハンセン病問題基本法が制定され、偏見を取り除く啓発活動により、今回の瀬戸内国際芸術祭に島が解放された。現在も国立療養所大島青松園として園内にハンセン病の方々が暮らしている。ガイドツアーで島の人々の顔写真を撮らないなどの制約がある。納骨堂やつながりの家、ギャラリーを見る事ができた。当時、ハンセン病の方々は亡くなっても遺骨が出生地に還る事ができなく、患者同士の結婚は許されたが、ハンセン病は遺伝するため妊娠しても堕胎させられこの地に葬られる。納骨堂には人々の悲劇と想いが込められていて感慨深いものがあった。風の舞のモニュメントは魂が風に乗って自由に解き放たれる患者の想いが込められている。高松からのフェリーは国立療養所の職員や患者が利用するためのもので無料である。同船した患者さんは、一同に明るく歴史の中でその呪縛を解き放たれた事を感じる。高松からの乗船時や帰りの下船時において、高松の支援者が笑顔で迎えてサポートする光景を見て歴史の書き換えを感じた。


瀬戸内国際芸術祭回遊美術館

◎坂出:讃岐醤油資料館・四谷シモン人形館
 現代美術家の小沢剛が鎌田醤油の展示施設に醤油で描いた醤油画を展示。美術の歴史を遡りパロディして見応えのある資料館であった。隣の四谷シモン人形館は瀟洒な洋館に四谷シモンの作品が配されて、本人いわく、作品の最高の終の住処が出来たと喜んだそうである。鎌田醤油のオーナーの趣味の良さが品格として現れていた。

◎ 丸亀:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
京都を中心に活動するkyupikyupiと石橋義正の「Sicketel」展が行われていた。映像&パフォーマンスユニットとしての活動はCMや映画、ライブ活動、アートインスタレーションと多岐に渡り、その全貌を見せてくれた。




9月10日(金)

瀬戸内国際芸術祭 高松大巻伸嗣作品

椿昇/大巻伸嗣
 高松は国内有数の海の玄関口であることが理解できる。瀬戸内国際芸術祭の実行委員会の事務所や総合インフォメーションセンター、ボランティアスタッフ「こえび隊」の拠点などがある。高松港には大巻伸嗣のウエルカムゲートが設置され花を添えている。椿昇は旧高松港管理事務所をミラーパネルで覆い、内部に高松港に往来した人々の記憶を映像にして展示した。椿昇のもう一つの作品は「高松うみあかりプロジェクト」は市内各所19カ所に展示され人々と協働して作られた竹と和紙による灯りは高松の町に彩りを添えていた。

 これらの先例を踏まえながら、札幌ビエンナーレや炭鉱遺産を活用したアートによる地域を活性化に取り組みたいと考える。





 以上で上遠野敏さんからの報告は終わります。
 いや~、9日間も費やして何カ所も回ったようで、うらやましい限りであります。

 たいへん密度の濃い、しかし簡潔な報告で読み応えがありました。
 あらためてお礼申し上げます。


幌内布引アートプロジェクト (2009年)
越後妻有アートトリエンナーレ報告
「Interaction」ドイツ展 帰国展(2005~06年)


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