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■井越有紀個展「エレンディラのための小作品」(2015年12月1~30日、札幌)

2015年12月31日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 展覧会の正式名称は井越有紀個展「Pequeñas obras para Eréndira エレンディラのための小作品」
 ト・オン・カフェのカウンター席の後ろに設けられたキャビネットが、小さな個展のできるスペースとして新たに誕生したのだ。
 もっとも、とうてい大きなタブローなどは展示しようのないささやかな空間なので、アクセサリーの展示販売などに向いているだろうなと思われるのだが、第1弾の井越さんの個展は、狭小の空間をフルに生かしきった、スケール感のある展示になっていると思う。


 「エレンディラ」は、ラテンアメリカの代表的小説家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの短編集。
 ちょっと長い表題作「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」と、短編6編の計7作を収めている。
 個人的な好みでいうと、口承文学や民話のような風合を持つ短編のほうがすきなのだが、この井越さんの個展は、表題作のほうを題材にしているように思われる。

 たとえば、右下の画像の作品は、白い鯨なので、孫娘のエレンディラに売春を強いる化け物のような祖母をモティーフにしているのだろうと思う。
 もちろん、作品を読まないで鑑賞しても、いっこうに差し支えない。
 それぞれの作品は、くだんの小説を、挿絵のように解説しているのでは全くなく、個展と小説とは独立した作品なのである。
 右から左へと物語が進んでいるらしいが、たとえば最後の作品は、自由を求めて走るエレンディラの姿をリアルに模しているわけではないことは、一目瞭然だろう。

 ただし、ガルシアマルケスの小説が持つ、悲惨さと笑いが、残酷さと明るさが共存しているような荒唐無稽な感覚は、あるいは井越さんの作品にも通底するものがあるかもしれない。



 井越さんの作品について「気持ち悪い」という感想を抱く人が少なからずいるという。
 筆者はわかるような気もする。ただ、はっきりしているのは、彼女が札幌市資料館で2008年に「kijumiska」名義で行った2人展が、いちばん不気味だった。なんだか、皮膚がはがれた子どものような、あるいは、悪夢をふいに思い出してしまったような、生々しさが伝わってきたことを覚えている。

 今回も、首が切断されたところから植物が伸びて尖端で花が開いているという残酷な作品もある。
 ただ、別の小説に仮託されているので、やや残虐さを薄めて鑑賞できるのかもしれない。 


2015年12月1日(火)~30日(水)午前10時30分~午後10時(日曜~午後8時)、14日休み
TO OV cafe (札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)


井越有紀個展 ある、あった (2013)

参考
Titi日記 井越有紀さんのこと http://titidiary.exblog.jp/19701919

KIJUMISKA http://kijumiska.exblog.jp/9668177/


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