(承前)
村上芳正は1922年(大正11年)長崎生まれ、2022年11月8日歿。
筆者は恥ずかしながら名前を知りませんでしたが、会場ですぐにピンときました。彼が装画を描いた原田康子「挽歌」の文庫本を持っており、その原画が展示されていたからです。
いささか生硬な線、肉付け感と陰影に乏しい肉体描写などから、おそらく独学だろうと想像していましたが、果たしてその通りでした。
(筆者はデッサン講師などではないので、そのこと自体で評価を下すつもりはありません)
手がけた書物は多岐にわたっていて、北海道がらみでは角川文庫の渡辺淳一があり、新潮文庫のバイロンやフローベールのカバー、三島由紀夫「豊饒の海」の箱表紙、バタイユ全集などです。
小樽文学館に来る人で、彼の挿絵を見たことのない人はおそらくいないのではないでしょうか。
とりわけ「家畜人ヤプー」の挿絵はたくさん展示されています。さすがにエロティックなものは展示されていませんが、奇書として知られるこの本を取り上げるとは、あいかわらず小樽文学館は攻めてるなあと感服します。
二科に出品した大作のタブローもありました。
5年連続入選とのことでしたが、入賞ではなく入選どまりということで、この方向にはあまり向いていなかったと言えるかもしれません。
珍しいのは、三島の自筆原稿で
「村上芳正氏の画業は、ひどく反時代的なもので、時代の流行にも一般の好尚にも一切かまはず」
と、挿絵画家をほめたたえています。
さらにレコードジャケットなどもあり、熱心なコレクターの存在が想像されました。
(12月8日追記。思い出した。この展示は撮影禁止。小樽文学館では非常に珍しいことです)
なお、無料展示コーナーで12月1~28日、これも小樽とどう関係があるのかわかりませんが(まあ細かいことを言わないのがこの文学館の良いところなのですが)、
「ミニシアターの草分け・岩波ホール55年の歴史展」
というのが同時開催されています。
東京の神田神保町の交叉点ビルにあった映画館で、商業ベースに乗りづらい佳作をよく上映することで、映画ファンには知られた存在でした。
自慢話めいて恐縮ですが、ここに並んでいるパンフレットの映画の半数以上、映画館で見ています(岩波ホールとは限りませんが)。
ギュネイ「道」や、ベルイマン「ファニーとアレクサンドル」、タルコフスキー「鏡」。
懐かしいな。
2023年11月3日(金)~24年1月14日(日)午前9時30分~午後5時(入場は4時半)、月曜(1月8日を除く)、11月7・24日、12月29日~1月3日、1月9、10日休み
市立小樽文学館(小樽市色内1)
・JR小樽駅から約720メートル、徒歩9分
・都市間高速バス「高速おたる号」などを「市役所通」で降車、約680メートル、徒歩9分
村上芳正は1922年(大正11年)長崎生まれ、2022年11月8日歿。
筆者は恥ずかしながら名前を知りませんでしたが、会場ですぐにピンときました。彼が装画を描いた原田康子「挽歌」の文庫本を持っており、その原画が展示されていたからです。
いささか生硬な線、肉付け感と陰影に乏しい肉体描写などから、おそらく独学だろうと想像していましたが、果たしてその通りでした。
(筆者はデッサン講師などではないので、そのこと自体で評価を下すつもりはありません)
手がけた書物は多岐にわたっていて、北海道がらみでは角川文庫の渡辺淳一があり、新潮文庫のバイロンやフローベールのカバー、三島由紀夫「豊饒の海」の箱表紙、バタイユ全集などです。
小樽文学館に来る人で、彼の挿絵を見たことのない人はおそらくいないのではないでしょうか。
とりわけ「家畜人ヤプー」の挿絵はたくさん展示されています。さすがにエロティックなものは展示されていませんが、奇書として知られるこの本を取り上げるとは、あいかわらず小樽文学館は攻めてるなあと感服します。
二科に出品した大作のタブローもありました。
5年連続入選とのことでしたが、入賞ではなく入選どまりということで、この方向にはあまり向いていなかったと言えるかもしれません。
珍しいのは、三島の自筆原稿で
「村上芳正氏の画業は、ひどく反時代的なもので、時代の流行にも一般の好尚にも一切かまはず」
と、挿絵画家をほめたたえています。
さらにレコードジャケットなどもあり、熱心なコレクターの存在が想像されました。
(12月8日追記。思い出した。この展示は撮影禁止。小樽文学館では非常に珍しいことです)
なお、無料展示コーナーで12月1~28日、これも小樽とどう関係があるのかわかりませんが(まあ細かいことを言わないのがこの文学館の良いところなのですが)、
「ミニシアターの草分け・岩波ホール55年の歴史展」
というのが同時開催されています。
東京の神田神保町の交叉点ビルにあった映画館で、商業ベースに乗りづらい佳作をよく上映することで、映画ファンには知られた存在でした。
自慢話めいて恐縮ですが、ここに並んでいるパンフレットの映画の半数以上、映画館で見ています(岩波ホールとは限りませんが)。
ギュネイ「道」や、ベルイマン「ファニーとアレクサンドル」、タルコフスキー「鏡」。
懐かしいな。
2023年11月3日(金)~24年1月14日(日)午前9時30分~午後5時(入場は4時半)、月曜(1月8日を除く)、11月7・24日、12月29日~1月3日、1月9、10日休み
市立小樽文学館(小樽市色内1)
・JR小樽駅から約720メートル、徒歩9分
・都市間高速バス「高速おたる号」などを「市役所通」で降車、約680メートル、徒歩9分
(この項続く)