老人会の旅行
「おい、今年の老人会の旅行、お前、三かするやてのう」
「え?」
やけにうれしそうな父の言葉に面喰い、しばし絶句した。確かに昨年、家族から還暦を祝ってもらったが、その後も老人会や、その旅行も全く意識したことはない。
「そんな知らんわ。誰か、勘違いしとんねんやろ」
「ほうけ…。ほな、お前は旅行に行かへんねんな?」
「当たり前やろ!」
思わず言葉を呑んだ。さっきのうれしそうな父の顔が、いっぺんにしょげ返って見えたからだ。
80代後半にさしかかる父にとって、老人会であろうと、息子と旅行をともにできることが、よほどうれしかったに違いない。それを慮りもせず、即座に否定した親不孝者のわたしだった。
しかし、父と息子が同じ時期に、同じ老人会のメンバーになり、恒例の旅行に参加するのは……!複雑な気持ちで、自分の年齢を実感した。
(神戸・2008年8月21日掲載)
「おい、今年の老人会の旅行、お前、三かするやてのう」
「え?」
やけにうれしそうな父の言葉に面喰い、しばし絶句した。確かに昨年、家族から還暦を祝ってもらったが、その後も老人会や、その旅行も全く意識したことはない。
「そんな知らんわ。誰か、勘違いしとんねんやろ」
「ほうけ…。ほな、お前は旅行に行かへんねんな?」
「当たり前やろ!」
思わず言葉を呑んだ。さっきのうれしそうな父の顔が、いっぺんにしょげ返って見えたからだ。
80代後半にさしかかる父にとって、老人会であろうと、息子と旅行をともにできることが、よほどうれしかったに違いない。それを慮りもせず、即座に否定した親不孝者のわたしだった。
しかし、父と息子が同じ時期に、同じ老人会のメンバーになり、恒例の旅行に参加するのは……!複雑な気持ちで、自分の年齢を実感した。
(神戸・2008年8月21日掲載)