こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

合格祝い

2015年06月18日 20時20分41秒 | 家族
 ひとつ違いの兄は高校農業科に合格すると、親は早速腕時計を買った。「どないや。ピカピカやで」と見せびらかす兄に、内心羨ましくて堪らなかったが、「そんなもん要らんわ」と無視を決め込んだ。兄との差が生まれたのを感じた。「お?もうこんな時間や」と腕を顔の前に上げ時間を確かめる兄の姿が眩しかった。
 机に無造作に置かれた兄の腕時計を見つけた。手に取って右腕左腕とシルバー色のバンドをつけたり外したりした。手首に巻かれた腕時計の重さはしびれるような感覚だった。
高校に合格すると、夢に見た腕時計を手にできた。いつも兄が見せびらかしたのと同じもの。コチコチと時を刻む文字盤に感激した。新品の腕時計を左腕につけると、それだけで、大人に一歩近づいたと晴れがましかった。
「大事にせいや。遅刻はもう出来んからな」
 ふだん寡黙な父がボソッと言った。父にしては珍しい冗談を口にした。それだけ、息子の高校合格が嬉しかったのだろう。
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タロの復活

2015年06月18日 13時39分53秒 | 文芸
タロの復活

 朝の散歩から帰ってきた子どもが、飼い犬のタロの様子がおかしいと訴えた。血の混じったオシッコとウンコをして尻もちをつき、子どもを驚かせたらしい。
 ご飯を持ってタロの前に立った。食べる気配も見せず、ジーッとわたしを見つめている。
 これはおかしいぞ!慌てて動物病院に連れていくと、診たてはフィラリア!手術しないと助からないと聞く。戸惑っている暇はない。即刻手術をお願いする。成功率は90パーセントとか。6万円の費用は、わが家にとってきつい出費となるが、とても大事なタロの命には代えられない。
 入院2日。迎えに行ったわたしの顔を見ると、タロは〈ああ、来てくれたー!〉と縋りつくような目をして、クフーンと鼻を鳴らす。思わず抱きしめてしまった。
 タロが我が家に来てもう10年近い。家族の一員であることをあらためて実感させられた一日だった。
 久しぶりにタロの散歩に付き合った。鎖を引っ張るタロの力をあぐねながらも、その復活がうれしくてたまらない。
(神戸・1998・7・18掲載)
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熱さも慣れでガマンできる

2015年06月18日 11時48分33秒 | 文芸
暑さも慣れで我慢できる

 暑い日が続いている。クーラーの販売量や電力消費量がすごく伸びているという。
 そんな暑さをしのぐ、わが家の強い味方は『うちわ』だ。クーラーは経済的な理由もあって手が出ないでいるが、この夏は扇風機もまだ出番がない。
 暑ければうつわをバタバタさせるが、これが結構涼しい。それに田舎の強み、網戸で外気を取り入れながら寝たりと、実に経済的な暑さ対策を実行している。
 別にやせ我慢をしているわけではないが、少々の暑さも慣れればさほど感じなくなるから、不思議だ。
 たっぷり汗をかいてから入る風呂の醍醐味といったらない。そして湯上りの夕涼みもまたこたえられない。
 いまのところ妻も三人の子どももブツブツ言わないところを見ると、彼らも人口の涼に頼らない夏の生活を満喫しているのだろう。
「あんたら、電気がなくなっても大丈夫よ」という妻の言葉はさておいても、自然に順応できる体づくりに役立てばなあ…などと欲が出る。
(神戸・1995・8・30掲載)
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記憶の記事

2015年06月18日 10時30分23秒 | 思い出
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わが職場は寒冷地だった

2015年06月18日 08時08分18秒 | 文芸
家に帰ったら鍋でも囲むか

 夏はクーラーをガンガン効かせ、冬は暖房なし、という仕出し・弁当会社の調理場で働いている。
 総コンクリート床の職場で、しかも夜間専門。底冷えは相当厳しく、氷点下何十度の冷凍室への出入りはしょっちゅう。いくら十二月生まれの身でも、万全の防寒対策をしなければ、いち日としてもつはずはない。
 そんな職場も5年目。最初のころは防寒の要領が分からなくて、年中風邪ひき状態だった。だが最近は不思議に風邪と縁が切れた。寒ければ重ね着をし、暖かくなれば脱ぐ。このごく当たり前の対処法にたどり着いたおかげである。
「中年太りやん」「もうダルマやな。つまみ食いが全部肉になっとるで」など、言いたい放題の同僚の言葉を聞き流し、今夜も不格好極まりない重ね着で、マグロの刺し身を黙々とつくっている。
 寒冷地(?)では湯気の立つラーメンや肉まんが恋しい。家に帰ったら、もう鍋を囲むしかないよ。
(讀賣・2002・1・27掲載)
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まんが

2015年06月18日 07時05分14秒 | マンガ
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絵手紙

2015年06月18日 00時58分29秒 | 絵手紙
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恐怖消しの特効薬を捨てた妻

2015年06月18日 00時04分29秒 | 文芸
恐怖消しの特効薬捨てた妻

 小さいころから、雷は大の苦手だった。ゴロゴロ鳴りはじめるだけで、蚊帳の中に飛び込み、さらに布団にくるまってブルブル震えていた。とにかく怖くてたまらなかった。
 大人になったいまも、相変わらず雷は恐ろしい。全く情けない話だが、こればっかりはどうしようもない。妻や子どもたちは、日ごろ偉そうなことばっかり言っているわたしが、「ゴロゴロ」と聞いただけで、部屋の隅で頭を抱えるから、あきれ返っている。オヤジの威厳も何もあったものではない。ただただ、雷が憎い。
 最近は、わたしの強い味方であった蚊帳も姿を消してしまったのが痛い。蚊帳の中に入れば、情けないおやじの姿も、家族の前で露骨に披露しなくて済んだのに……。でも、本当に蚊帳は雷の恐怖消しの特効薬だった。
 その雷の活躍する夏がまたやって来る。どこか子どもに見つからない逃げ場を用意しておかなければ、あんなに重宝だった蚊帳を邪魔にして捨ててしまった妻の愚か者め!
(讀賣・1997・7・13掲載)
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