難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

聴覚障害者のアクセスを保障しない改正著作権法

2009年10月31日 23時28分27秒 | 著作権
改正著作権法は、聴覚障害者の著作物アクセスについては、障害者権利条約の内容を踏まえてと言うが、極めて不十分なものというのが聴覚障害者関係団体の考えだ。

著作権法第37条2項で、聴覚により利用する著作物を聴覚著作物としている。
毎日テレビやラジオで放送されるキー局、ローカル局、ミニ放送局の番組、インターネットで流れるニュースサイトの動画。販売、レンタルされるDVD、CD。上演される演劇、舞台など枚挙に暇がない。

これらに字幕や手話通訳が付くことはまだ少ない。災害時の情報に字幕も手話も付かないのは台風18号、20号の例を見ても明らかだ。

これらを聴覚障害者がアクセスできるように著作権が制限されるのは二つの場合のみだ。

一つが自動公衆送信だ。
聴覚著作物の音声の文字化と「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」による複製を自動公衆送信出来るとある(第37条2項1の方式)。

この「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」というのが手話のことだと文化庁は説明する。手話の定義に困ったのかも知れない。
音声の字幕データ(文字による複製)と手話の映像データ(手話の複製)がインターネットで送信できるようになったという。

こうした放送番組に手話と字幕を付けてインターネットで配信しようとすると映像は送信できないと言う。
しかし、手話は元の映像なしにはあり得ないコミュニケーション方法だ。話者が自ら手話を使うか、音声で話す話者と手話通訳両方を同時に見るかのどちらかしかない。手話通訳は話者の表情から話し方、指示動作、服装までの情報を生かして、通訳するコミュニケーション支援技術だからだ。

聴覚障害者は手話通訳だけでは利用出来ず、「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」とは、手話通訳と音声を含む映像との一体的複製しかあり得ない。
元の映像と一体でなければ、手話通訳の映像と同期させるための技術が必要となり、新たな障壁だ。

従って、第37条2項の1の自動公衆送信とは、手話を付加した映像の自動公衆送信が送信可能化権とともに認められているもとと理解すべきだ。

貸し出し用の聴覚著作物の複製は映像とその音声、手話通訳の一体的複製を認めているが、手話は映像と一体的に利用するものであることを著作権法自体が認めている。


ラビット 記

改正著作権法と字幕サークル

2009年10月31日 22時48分04秒 | 著作権
改正著作権法第37条2項は、聴覚障害者の著作物の利用に関わる著作権制限条項だ。

これまで映画やDVDの字幕制作に関わってきたサークルは多い。
「もののけ姫」や今度公開される「沈まぬ太陽」の映画には字幕版がある。
これも最初は著作権の許諾がないために録音も出来ずに、映画館の了解を得て字幕サークルのボランティアが自費で上映館に通って、その場でセリフを聞き取って書き起こし字幕台本を作り、スクリーン脇に字幕を投影する上映会を重ねるなどして、配給会社を動かしたのだ。

どの字幕サークルもを同じような苦労を余儀なくされている。
しかし、これまで活動してきた映画やDVDの字幕サークルに、改正著作権法第37条二項の恩恵があるのだろうか。

字幕サークルは「福祉に関する事業者」になることは出来るかもしれないが、事業者として聴覚障害者等のために利用出来る区分は二つしかない。
つまり、字幕の自動公衆送信と複製の貸し出しだけだ。

これでは字幕サークルは映画/DVDの字幕付き上映会の度に今までどおり字幕制作の許諾を求め続けなくてはならず、しかもインターネット配信のしか出来ない。

字幕入りDVDを制作したとしても貸し出しするには、コピーガードや補償金を求められては活動のまったくの障壁だ。


ラビット 記

昔の同僚と語ったことがしみじみと。

2009年10月31日 20時50分31秒 | 人工内耳
入社以来の同僚に会ったので立ち話をしてきた。
髪の毛が総白髪になっていた。どうしたのかと聞くと前から染めていたが、定年近い年になって面倒になったし、もうそれなりでいいやと思ったから止めたのだという。
補聴器のコードを髪で隠すのを止めたのと似ている。
「いや、シルバーグレーでなかなか格好いいよ。」

定年後に備えたライフプランセミナーに行ってきて、そういう歳になったと思ったとか、親父とその親が80幾つで亡くなっているから自分も家系的に80代初めまでの寿命だから、何をやっていけばいいか分からない。
「定年後後25、6年もあるじゃん。」

やっぱり好きなゴルフはずっとやりたいと言う。
「それはいいね。青木みたいに長くやっていきなよ。」

後は何が良いか考えているんだけれど。
「今は、地域がキーワードだよ。こっちは団地住まいだからコミュニティがないけどそっちは地域のつながりがあるじゃん。うらやましいよ。」

おっ、側を通る車の音がうるさかったが言っていることが分かるゾ。
30年来の同僚だから、難聴で聞きにくいことも知っていて、聞こえないと繰り返してくれる。

(子どものことは心配だね、お互いに。そっちほどべったりじゃないよ。羽田空港までは送らないよいくら何でも。)

話が聞こえると会話が出来る。会話というのは話が噛み合ったやりとりだ。
これは難聴者には難しい。補聴器で聞き取りが悪くなって5年ほどになるが話しかけても返事が噛み合わないと同僚でも話さないようになる。

人工内耳をして、何か言われても前よりは聞き取れると思っているので、今日は家族は皆元気ですかと聞くと、一瞬話をするのをためらっていた様子だったが返事を返していくと自分から新しい話題を話してくれた。

そうかあ、人工内耳で自分から会話に持ち込む積極性が生まれたんだ、勇気が湧いてきているということか。
2年前の手術の日までもうすぐだ。


ラビット 記