あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

チャリンコ野郎達 1

2010-05-24 | 
南半球、ニュージーランドに秋がやってきた。
今年の夏も様々な人達との出会いがあったが、自転車で旅する日本人が印象に残った。
ここ数年、ニュージーランドへ旅する人の形態が変わったような気がする。
お仕着せのツアーから、今までとはちょっと違う目的意識を持った人が多くなった。
山が好きだから、自然にどっぷり浸りたくて、のんびりしたいから、自分の足で周ってみたい。そういう人が増えてきた。
今までも自転車でこの国を旅をする人はいたが、ほとんどはヨーロッパ人で、日本人が大きな荷物を自転車の両側にくっつけてエイコラこいでいる、というのはあまり見なかったのだ。



春には北海道でガイド業を営む山小屋がやってきた。
山小屋という二ックネームで、彼の店は『ガイドの山小屋』という。その名前だけでボクならフラフラ引き寄せられてしまう。
http://www.yamagoya.jp/
山小屋とは2年前に初めてクィーンズタウンで出会った。
インターネットを通して知り合い、彼のウェブサイトからその人なりを予想していたが、それは裏切られることなく、初日から僕らは旧知の間がらのようなつきあいを始め、数日後には兄弟と呼び合うようになった。
年も体型も同じ。自然観や物の考え方も酷似していて、とても他人のように感じられないのだ。
山小屋はクライストチャーチの自宅に居つき、1週間ほど過ごしただろうか。
深雪もすぐに山小屋になついた。親父と同じ臭いがしたのだろう。
その間に一緒にスキーに行ったり、マウンテンバイクを乗りに行ったり、庭の手入れを手伝ってくれたりと家族同様に時を過ごした。ヤツのおかげで家の庭は見違えるほどにきれいになった。
山小屋が家を去るときには、娘の深雪が心配して泣き出してしまったほどだ。



その後、ボクは夏の仕事を始めるためクィーンズタウンへやってきた。
今年のフラットは景色が良い。
去年までは丘の一番てっぺん、だが景色は松林だけ。他の家の影で湖は見えず、ただ単に標高が高いだけという家だった。
通りの一番奥だったので他人が入って来ず、のんびりするのにはよかったが景色は家からは直接見えなかった。
今年は家のリビングからダイニングから、どかーんと湖が広がりパノラマビューで山々が見える。
空港から町へ行く途中でドライバーがサービスで立ち寄る場所。誰もが「わあ、きれい!こんな場所で暮らせたらいいわね」というような家だ。
僕も時々車を停めてお客さんに写真を撮ってもらう。その場所からこの家は丸見えだ。
だが通りからちょっとだけ離れた場所にあるのでプライバシーも確保されている。
さらにテラスもあり、『どうぞ、ここでビールを飲んでください』というようにテーブルとイスが置いてある。
隣の家ともほどほどに離れていて、とにかくいい感じの家なのだ。



フラットメイト(同居人)は二人。大阪のおっさんと、地元土産屋で働くエーちゃんである。
おっさんとは数年前からのつきあいだが、日本のスキー業界で働いているので今まで会った人が繋がる繋がる。会って数日で僕らはソールメイトと呼び合うほど親しくなった。
おっさんは日本の冬はどこかのスキー場でインストラクターをしているので、日本の冬が始まる頃になると日本へ帰る。夏にクィーンズタウンに来るボクとはすれ違いになるが、それでも一緒の時はフリスビーゴルフをやってビールを飲んだり、山へ歩きに行ってビールを飲んだりしている。
このおっさん、失敗は数知れずやっているが後悔は無し、というスーパーポジティブなおっさんで、とにかくよく酒を飲む。
「しゃあないやん」が口癖であり、こういう人と議論をしてもムダだ。何を言おうと最後には「しゃあないやん」で落ち着いてしまう。そうなるとこちらも「せやな、しゃあない、しゃあない」となってしまう。僕が一番好きな大阪弁である。
 もう1人、エーちゃんは去年からのつきあいである。この人もスゴイ人だ。
 どうすごいかというと、エーちゃんは数々の失敗をやっているが、それらを全て笑い話のネタにしてしまう。かなり痛い笑い話も多々ある。
 オッサンとエーちゃんの話は、この2人だけで話が一つできあがるぐらいだからとっておこう。
 ここ数年は毎年おっさんのフラットをクィーンズタウンの宿としている。非常に居心地が良い。
 今年は以前のフラット(景色なし)を追い出されて、代わりに不動産屋が用意したのがこの家だ。
 多少家賃は上がるが、この景色があると思えば安いものだ。
 ぼくはシーズン中、かなり多くの時間をこのテラスでビールを飲みながら、時に本を読み、時にギターをつまはじき、時にボンヤリと雲を眺めて過ごした。

コメント (4)
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