あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

散歩

2013-06-14 | 日記
最近の日課は犬の散歩である。
朝、娘が学校に行く時にバス停まで1回。
これは30分ぐらいの普通の散歩。
住宅地を歩くので袋を持って歩き、糞をしたら拾って持って帰る。
ついでにその辺の落ちているゴミも拾う。
常に犬の糞用のビニール袋はポケットの中に入っており、糞をしない時はゴミがそこに入る。
今まではゴミが落ちていても、拾ったらどうしよう、ということもあったが犬と一緒に歩くようになって躊躇無くゴミを拾えるようになった。
良いことである。

そして昼間、マウンテンバイクで近くの公園を1周する。
昼の散歩をすれば疲れてグターっと昼寝をするが、そうでないとエネルギーが有り余るのか「遊んでよ、遊んでよ」とうるさい。
犬というのは常に散歩に行きたがるものなのか、ガレージから自転車を出すとそれだけで大興奮である。
近所の公園はかなり大きく、ありきたりな言い方だが東京ドーム30個分ぐらいの大きさだ。
その外周を大きく1周。距離にして4キロ、いや5キロぐらいはあるか。
それがいつもの散歩コースである。
向かいの家の裏側がすぐ公園で、直線距離にしたら30mぐらいだが人様の家を通るわけにはいかない。
公園の入り口までは綱をつけて走る。
マウンテンバイクのハンドルの真ん中にカラビナをつけて、細いザイルを犬につないで走るのだが、スタートダッシュがすごい。
グイグイと引っ張り、油断をするとケガをする。
犬のココはラブラドールの雑種だが、どこかでハスキーの血も混ざっていると買う時に聞いた。
祖先が遠い昔、犬ぞりを引っ張った血がよみがえるのかもしれない。
1分ぐらいで公園の入り口へ着く。



小川にかかる橋を渡れば、そこから先は自由の身である。
走り放題、ウサギ追いかけ放題、小便し放題、クソし放題である。
クライストチャーチにはドッグパークという犬専門の公園もいくつかあり、そこでは犬のフンを飼い主が拾う。その公園はちゃんとそれを捨てるゴミ箱がいくつも用意されている。
近所のカンタベリーパークという公園は牧場とつながっていて、そこには羊の糞がゴロゴロしてる。
牧場で羊の糞を拾う人はいない。
だがそれでも公園、色々な人が利用する。
犬もそれが分かっているのか、小道の真ん中でなくちょっと離れた茂みで糞をする。
茂みを抜けると視界が開ける。
僕はこの景色が好きだ。
広い空、緑の大地、その大地が空と交じ合うあたりに白い雪の載った山。
あと一ヶ月もすれば、あの斜面に僕は立つ。
去年の今頃も同じような事を思った。



だだっ広い公園の中の牧場を走る。
柵でいくつかにしきってあり、その時によって羊のいる場所が違うので羊のいない場所を走る。
タイヤの太いマウンテンバイクは牧場の中を走るのに最適だ。
当然ながら羊のウンコもかなりの数踏む。
ウンコをよけながら走るなんてできやしない。
それぐらいのことを気にしては、この国でやっていけない。
ゲートを開けて犬を通し自転車を通しゲートを閉める。
この作業を何回繰り返しただろう。
僕はこれが嫌いではない。
そこの柵に羊がいるかいないか確認をして、いる場合は綱をつけるという、飼い主の責任を再確認する作業でもある。
ここでは犬が羊を襲ったらその犬は殺さなくてはいけない。
一度羊を殺した犬は必ずくり返す、というのがその理由だ。
どんなに飼い主が可愛がっていようがそれが掟。例外は無い。
飼い主に与えられる選択は、自分で殺すか人に任せるか、である。
クィーンズタウンでも友達の飼い犬が羊を襲って殺し、友達は泣く泣くその犬をライフルで撃った、という話も聞いた。
楽園にも厳しいルールはある。



牧場を抜け公園を突っ切って反対側へ出た。
ここからしばらくは新興住宅地を走るので再び犬に綱をつける。
この辺りまで来ると犬も落ち着いてきて、グイグイ引っ張らない。
ココがトコトコと走る速度に合わせゆっくりと走らせる。
そして高速道路にかかる陸橋を越える。
高速道路が開通してまだ数ヶ月だが、すっかり周りの景色になじんだ。
開通する前には散歩がてら道路まで出てきて、犬と一緒に夕日を見ながら「あと数ヵ月後にはここに車がビュンビュン走るようになるんだなあ」などと思ったものだった。
時が経つのは早いものだ。
道路の脇には自転車と歩行者用の舗装された道もできた。
道路というものを車のためだけでなく、歩く人と自転車の人のために同時に作る。
この国のこういうところが好きなのだ。
小道は公園の外周に沿って通り、所々で外の一般道と通づる。
そういう場所には案内標識がある。
僕は地元なので案内板など必要ないが、これなら初めての人でも地図を持ってサイクリングが楽しめる。
小道は自動車道側にきっちりとフェンスが張ってあるので、犬を放しても大丈夫。
車の道路との間には充分なスペースがあり、フェンスで囲われた道でも閉塞感はない。
空いている場所にはタソック、ヒービー、ランツウッド、フラックス、コプロズマといったこの国の山へ行けばどこにでもある草木が植えられて、数年後にはこのあたりも違う景色となるだろう。





僕は新しくできたこの道がお気に入りで、時間があれば毎日ここを走る。
道ができたばかりの頃はゴミも目立ったが、毎回散歩の度に僕がゴミを拾うので最近はかなりきれいになった。
ここでゴミ拾いについて一言。
僕はあちこちでゴミを拾うが、以前は「全くこんな所にゴミなんか捨てて」とやや怒りながら拾っていた。
人目のあるところでそういう行為をする照れみたいなものもあったのだろう。
今は違う。
どうせ同じ事をするのならニコニコしながらやった方がいいという事に気がついた。
なので、笑顔で拾う。
僕はゴミを捨てる人を責めない。
僕がやるべきこととは、人を責めることではない。
だって人を責めても・・・しゃあないやん。
その代わりと言ってはなんだが、ゴミを見つけてゴミを拾える状況でゴミを拾わない自分を責める。
自分ができることなのに、それをやらない自分を責める。
ゴミを見ながら通り過ぎてしまった時に、「あーあ、あのゴミ拾わなかったなあ」と後悔する。
後から後悔するぐらいなら、その場で拾ってしまえば後悔は生まれない。
シンプルだろ?
そしてそれを人に強制しない。
たとえ自分の子供だろうと。
こういうことは心の奥から湧き上がる気持ちでやるものだ。
なので子供にやらせるのではなく、自分がやる。
そして自分のそういう姿が子供の教育になる。
親の背中を見て子供は育つのだ。
それにゴミ拾いは僕の仕事でもある。
それはお金を産まない、世のための仕事だ。
『自分ができること』という意味で、野菜や石鹸や料理を作ったり、ガイドやドライバーをするのと同じ僕の仕事である。
仕事は楽しくやらにゃあ。
なので最近はニコニコと笑いながらゴミを拾うように心がけている。
ある日出合った人と挨拶をしたら、彼女は僕が持っているゴミの袋を見て「あなたの行動はお金をもらうのに値するわ」と誉めてくれた。
「いや別に、お金とかそういうことじゃないんだけど」と思ったが変に説明するのも面倒だったので適当に相槌を打っておいた。
散歩の途中でゴミ拾いをするのだが、これはココの休憩時間にもなる
ずーっと走りっぱなしではココも疲れてしまう。
愛に基づいた行動は全てが上手く回る。





犬と一緒に自転車で公園の外周を走る。
時々車の人と目が合ったりする。
僕もこの道を車で走る事があるが、ある時に自転車で犬と一緒に走っている人を見て、「ああ、いいな」と思った。
そして「そうか自分も人から見ればああいうふうに見えるのかな」とも思った。
自分が見ていいなあ、と思う自分になる。
それは次世代の人への指針にもなるだろう。
例えば僕の家へ遊びに来た若い人が庭を見て「いいなあ、いつか自分もこんなふうに家の庭で野菜を作るような生活をしたいなあ」と思うとしよう。
その想いはすぐにではないが、そのうちに実現する。いつかは実現する。
僕が蒔くのは野菜の種だけではない。
自分というものを通して、未来への希望の種を蒔いている。
ぼんやりとそんな事を考えながら、目が合ったドライバーに手を振る。
歩く人も自転車に乗る人も車に乗る人も、せかせかしていない。
みんなをひっくるめて時間はゆっくりと流れる。



公園を大きく半周してメインのゲートから再び中に入る。
ココもずいぶん疲れてきたのか、遅れ気味である。
トイレの横の水場で水分補給。
こういう公園の水場が又すばらしい。
真ん中は人が普通に飲むように上向きに水が出るもの。
端に水筒などに水を補給できるよう、下向きにミスが出るもの。
そして反対側には犬用の水飲み場。
こういう細かな配慮が嬉しい。
ココがガブガブ水を飲む横で僕も水を飲む。
クライストチャーチの水源は南アルプスの氷河で、ニュージーランドの中でも美味い水として有名だ。
何気ないことだが、こういう所がきちんとしている所が住みやすい国なんだと、そして大人の社会とはこういうことなんだと思う。
公園を抜けて再び住宅地に入り、犬がトコトコ走る速度で家に帰る。
ざっと40分ぐらいの散歩だが、こんな日々の散歩でも色々なドラマがある。
夕日が山に沈む様子はきれいなものだし、霧の早朝は幻想的でこれまた良い。
この前はちょっと寄り道をして、廃材屋さんで温室用にリサイクルの窓を買った。
写真の一番手前の窓だがこれで80ドルは破格値だ。これがそのまま温室の壁になる。
雨上がりには牧場にマッシュルームが出てくるから今度はバスケットを持ってきてマッシュルーム狩りでもしようかな。
夢は膨らみ、現実となる。







コメント (2)
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