あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

8月22日 Lake Tekapo

2013-08-25 | ガイドの現場
朝5時半に家を出た。
車を南に向かって飛ばす。
今日の仕事はテカポからクライストチャーチまでお客さん2人の送迎。
テカポで8時半にお客さんをピックアップするので、それに合わせて早朝に出発なのだ。
「そんなに朝早くから大変ねえ」と人は言うが僕にとっては何てこと無い。
どっちみちこの時間はすでに起きている。
僕はとても早起きで、毎朝4時か5時くらいに起きる。
たまに3時とかに起きてしまう。
二度寝という事ができない体質で、バチっと覚醒してしまう。
覚せい剤をやっているわけではないのだが覚醒してしまう。
スイッチオン、ポチ、イエーイ!というノリだ。
朝が弱くて起き掛けはボーっとして何も考えられない、という人には異人を見るような話だろうな。
夜中の2時から4時というのは宇宙からのエネルギーが最も強い時間帯なんだそうで、この時間に行動するのは悪い事ではない。
人は眠っていてもそのエネルギーを受け取っているのだから。
ただし毎日その時間に行動をすると、実生活に支障をきたすこともある。そりゃそうだ。
まあ、朝4時とか5時ぐらいならちょっと風変わりな早起きの人、ぐらいで世間は見てくれる。
日が昇る数時間前に起きて、日が沈んで数時間後に寝るという生活なのである。
早朝のモーターウェイは車も少なく気持ちがよい。
車を走らせるうちに辺りが明るくなり始めた。
雲の切れ目から満月が顔を覗かせ、山にゆっくりと沈むのを見ながらドライブする。
テカポに着く頃には青空が広がり、朝日が反射する湖を見ながらコーヒーを一杯。
夏の間は良く来るが、冬にここへ来る事は少ない。
季節が変わると風景も変わる。
やはり山は雪があったほうが美しい。



お客さんを時間通りピックアップして、おしゃべりをしながら来た道を戻る。
冬の間は観光ガイドはほとんどしないのだが、数ヶ月ぶりに普通の観光ガイドである。
スキーをしない人にバックカントリースキーのことを話しても理解はできない。
なので会話は一般的な事なのだが、お客さんは僕の話を喜んで聞いてくれて、僕はこの国の事をべらべらとしゃべりあっという間にクライストチャーチに着いた。
空港でチェックインをしてお客さんは機上の人となり、車をオフィスに戻してお昼過ぎには仕事終了。

さて、帰りがてらホームセンターに寄ってから庭仕事でもしようかな、と思って車を走らせているとちょうどオノさんがあるお店の駐車場から出てくるところだった。
オノさんは行きつけの整体師で以前にもこのブログでいくつか話を書いている。
向こうは気がついていない様子だったが僕の後ろを走っていて、見ていると行きつけのバーへ入っていくようだ。
こういうタイミングで人に会う時は、その人と会って話をしなさい、という神のお告げである。
しかもその人がバーでビールを飲むのならば一緒に飲みなさいという酒の神バッカスのお告げである。
仕事は終わったのだし予定はなにもない。
こういうお告げには神妙に従うべし。
僕はこういう嬉しい出会いがある時は、自分が良い状態にいるサインだと思っている。
そんな時には自分を誉めてあげる。
「いいぞ、俺。その調子でどんどんやりなさい」
人にはよく言ってあげるが、誰も僕には言ってくれないので自分で言う。
人間という物は、他人はよく見えるが自分自身が一番見えにくい。
僕は常日頃から自分自身をも客観的に見るようにこころがけている。
そう、ゴルゴ13のように自分をも第三者の目で見るようにしているのだが、どうしても主観という物は混じるし、疑いを持つこともある。
そんな時にこういうタイミングで人と会うというのは、それでよしというサインなのだ。
そういう時は嬉しい出会いは次から次へと起こるし、仕事は上手くいきお客さんはハッピー、ビールもご飯も旨く、世の中はバラ色なのである。
こういう時によく「そんなうまいことばかりじゃないぞ、そのうちに足をすくわれるぞ」という声も聞く。
それは心の奥にある防衛本能がそうさせるのか、自分からブレーキをかけてしまう。
その人がそう思ったらそうなるさ。
それがどこから来るのかといえば心の奥の恐怖だ。
今、目の前の幸せを失う事の恐怖。
もっと突き詰めていえば、今ある幸せへの執着だ。
悪い事が起こるならば、その時に100%の力で対処すればいい。
その覚悟があれば怖れる物は何もない。
そして100%で生きてどうしようもないのならば・・・
しゃあないやん。
それよりも大切なのは今この瞬間。
この瞬間に自分が良い状態で居ることを自覚する。
それが心の繋がりで、即ち愛であり、全ての答なのである。

バーへ入っていくと、居た居た。ちょうどビールをオーダーしたところだったのだな。
声をかけると『何でここにいるの?』という顔から喜びの表情になり、すぐさまビールで乾杯という流れになった。
オノさんに話を聞くと駐車場から出る時に、行こうと思えば行けたタイミングだったんだけど何となく車の列が途切れるのを待とうと思ったと。
その列の一番後ろに僕が居て、出てこようとしたオノさんを見つけたわけだ。
僕だってその前の交差点で自然に車線変更をして遅いトレーラーを抜かして車の列に入ったわけで、ちょっとタイミングがずれてもこういう出会いにならなかっただろう。
「そうやって考えると不思議だなあ」と言いながら飲むビールは旨いのである。
今回はこういうタイミングで人と会ったが、逆に同じ店の中にいながらもある人とは出会わない、ということもある。
会うべくする時は予定を入れなくてもばったり会うか、忙しい中でピンポイントで空いた所に相手も都合よく時間が取れたりする。
会えない時にはどうやっても時間が取れない。
無理を押し通してもロクなことにならない。
それは会う時ではない、というサインだと僕は見る。

軽く一杯やったあと家に戻り庭仕事。
自転車で犬の散歩に行き、その日の晩は近くの大衆中華料理店。
帰りがけに満月が薄い雲の向こうに輝いていた。
お月さんは地球の裏側をぐるっとまわって来たんだなあ。
今日は月が沈むところから、月が出てくるまでの1日だった。
こんな1日ももちろん最高なのである。


コメント (6)
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