安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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引き続き、JR不採用問題

2010-03-04 22:16:13 | 鉄道・公共交通/交通政策
ここ数日、JR不採用問題を集中的に取り上げている。「もっと鉄道趣味的なことも書いてほしい」という読者の方もいるに違いないが、もう少しご辛抱願いたい。国鉄時代から鉄道趣味を続ける者にとって、この問題を避けて通ることはできないからである。

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JR不採用に287億円の解決金 与党・公明が素案(朝日新聞)

 1987年の国鉄分割・民営化に反対した国鉄労働組合(国労)の組合員ら1047人がJRに採用されなかった問題をめぐり、与党3党と公明党の実務担当者が3日、政治決着に向けた素案をまとめた。4党担当者は4日、前原誠司国土交通相に素案を提出し、政府の最終解決案を月内にもまとめるよう求める。

 戦後最大の労働問題とされるJR不採用問題では、組合員側が解雇の無効などを求めて訴訟を続けている。4党案は弁護士を通じて組合員側にも示されている。政府の最終解決案が4党案に沿う内容ならば訴訟を取り下げる見通しで、24年目の政治決着となる可能性が出てきた。

 4党案によると、国鉄清算事業団による旧国鉄職員への年金支払い業務などを引き継いだ独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の特例業務勘定の剰余金を活用し、解決金として1人当たり平均1650万円、生活補償金として1人当たり平均1300万円など、総額287億円を支払う。

 また、雇用対策として政府がJR北海道やJR九州などに約200人の雇用を要請するほか、JR関連企業などにも雇用を求める。JR不採用者がこれまでに設立した18事業体に平均1億円の支援金を支払うことも盛り込んだ。

 政治解決にあたり、4党案は「JRは道義的、社会的責任を重く受け止める」と明記。また、「政治的合意に基づきすべての裁判は和解する」とも記して係争中の裁判和解を条件に挙げた。

 4党の実務担当者は昨年末から10回近くの会合を重ね、素案を取りまとめた。与党関係者によると、組合員側は「路頭に迷わない内容」として1人当たり平均3300万円を求めていたが、平均年齢が50代後半と高齢化し、政権交代を契機とした政治決着に歩み寄ってきたという。

 鳩山由紀夫首相は2月初旬の参院決算委員会で、この問題について「人道的立場から解決を急がねばならない」と答えている。
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昨日のエントリで取り上げた解決案の内容を、朝日新聞がさらに詳しく取り上げている。

鉄道・運輸機構にそんな巨額の金があるのか、という疑問を持つ方もあるかもしれないが、結論から言えば金はある。同機構は、実に1.3兆円もの剰余金を抱え込んでいる。287億円払うとしても、剰余金全体からすれば2%ちょっとの額だ。

しかも、独立行政法人の剰余金を原資とするため、政府予算の組み替えは必要がなく、鉄道・運輸機構の剰余金処分について、主務省である国土交通省が認可すればよい。早ければ来年度予算の成立を待たず、今年度中に支出することも可能だろう。

当事者の年齢を考えると、この問題もそろそろ解決をしなければならない時期に来ている。政府、当事者でよく協議して、石にかじりついてもこの水準での解決を目指すべきだ。

当ブログ管理人は、実際のところ、「解決金と年金相当額の支払いだけで、雇用は相当厳しい」と見ていたから、55歳未満の希望者について、政府がJR各社に雇用を要請するというのは予想された以上の成果と見ることもできる。ただ、あくまで予定されているのは雇用に向けた「要請」に過ぎない。この枠組みでは、JR各社が応じるかどうか予断を許さず、当ブログは、解決のためにあくまで雇用は政府からJRへの斡旋に近い形を取らなければならないと考える。

JR北海道・四国・九州・貨物の4社は、鉄道・運輸機構を通じて政府が100%の株式を保有する特殊会社であり、立場上、政府から要請があれば断れない立場にはあるといえよう。政府の100%保有子会社である日本郵政の西川善文・前社長に対して、亀井静香・郵政担当相が辞任を促したように、もしJR4社が要請に応じなければ、政府はいくらでも「指導力」を発揮できる立場にある。

そもそも国鉄「改革」当時、東日本・東海・西日本の本州3社は、希望退職者が予想より多すぎて定員割れとなったため、国労など分割民営化に反対していた組合員も多くが採用された。その結果、被解雇者の多くが北海道と九州に集中することになった。この人たちの名誉のために述べておくが、彼らは決して能力が低かったため不採用となったのではない。何らかの理由(おそらく家庭の事情等)で本州への広域採用に応じられなかった人が多かったといえる。マスコミに踊らされ、物事の一側面だけ捉えて彼らを怠け者と批判する人も相変わらずいるが、官民問わず、長い人生、サラリーマンをやっていると、子どもの教育、親の介護などで広域転勤ができない時期というのは誰しもある。被解雇者の中には、たまたまその時期が国鉄「改革」の時期に当たったために解雇となってしまった人もいる。そういう人も含め、十把一絡げにして機械的に解雇処分を発令したのが23年前の「改革」だった。そうした政策の犠牲になった人たちを政府が救済することは、決して間違っていない。

一方、被解雇者受け入れが現実になれば、北海道・九州の2社は今まで以上に厳しい経営を強いられることになるだろう。だがそれは、この両社がこれまでに当然支払うべきであったコストを払わずに来たという、ただそれだけのことだ。株式会社になったからといって、企業が社会的責任を果たさなくてよいということにはならない。株式会社には株式会社なりの責任の果たし方、過去の問題に関する責任の取り方というものがあるはずである。四国・貨物も含めた4社が、政府からの要請があれば「大人の対応」をするよう当ブログは望む。

最後に蛇足かもしれないが、四国や九州で希望者全員の受け入れが困難を来すようであれば、JR西日本での受け入れを模索してはどうかと思う。山陽新幹線の関係で、JR西日本には福岡県内にも職場がある(小倉・博多駅、新幹線博多総合車両所など)。佐賀、熊本あたりの被解雇者の中には、西日本管内での異動で済むのであれば、全国転勤の貨物より好条件の職場として、希望する人もいるかもしれない。

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