毎日新聞のネット記事を読んでいて、これは凄い、と思うと同時にでも本当にそれで大丈夫なのかしら?と思った。以下、転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
どうすれば安全安心
夜間の「外来がん治療」 仕事と両立、待ち時間短縮(毎日新聞2017年9月14日 東京夕刊)
外来治療の日中と夜間の違い(表:略)
がんは日本人の2人に1人が一度は患うと言われている。治療法が進歩し、通院しながら抗がん剤治療(化学療法)を受けることは可能になった。だが、長期間に及ぶため、仕事と治療の両立が困難になり離職してしまう患者も多い。そこで注目されるのが、外来の夜間治療だ。【庄司哲也】
生活リズム変えずに/患者の家族も負担軽減/スタッフの確保難しく
「見舞いに来た会社関係者が、治療中の患者に離職を促している光景を目にしたことがあります。がんになったことを周囲に悟られないように苦労されている人もいます。そのような人たちに配慮した治療ができないかと思っていました」。そう話すのは、群馬県高崎市の日高病院化学療法センター師長の徳満(とくみつ)葉子さんだ。
同センターは2014年1月から、群馬大医学部と提携し、就労支援として金曜日の夜間(おおむね午後5時半~午後9時)の外来化学療法を導入している。がんの種類は、消化器がん、肺がんなど日高病院が診療科を設けているもの。現在は病院が実施する送迎サービスも使い、県内の約20人の患者が、夜間に治療を受けている。
同病院が、スタート時に夜間治療を受けた患者29人に、選択した理由を尋ねたところ、勤務後の治療を希望したのが19人、付き添いの家族の勤務後の治療を希望したのが4人、その他は「遠方に住んでいる」「生活時間を変えたくない」などといった理由だった。
夜間治療の最大の利点は、抗がん剤を点滴するまでの待ち時間が短くなることだ。一般的な外来化学療法は次のように進む。
来院後、採血→白血球や赤血球の数などを調べる血液検査→医師による診察→点滴する抗がん剤の調製(ミキシング)→点滴を開始--。大規模な病院の場合、午前の診療開始直後に受け付けをしても、点滴終了まで数時間に及ぶこともあり、治療が終わるのは夕方になることも珍しくない。
がん患者にとって治療で平日に休まなければならないのが、仕事を続ける上での高いハードルだ。夜間ならば、生活のリズムを変えずに治療を受けやすいし、がん患者に限った検査や診察になるので治療時間の短縮につながる。
日高病院が化学療法の点滴の開始までにかかった日中と夜間の平均時間を比較したところ、日中は83分だったのに対し、夜間は49分だった。患者側の負担軽減だけではなく、病院側にとっては検査や診察に追われることが少なくなり、医療ミスが発生しにくくなるメリットもあるという。
年間約100万人が新たにがんになる時代だが、働きながら治療を続けられる状況とは言い難い。内閣府が1月に発表したがん対策に関する世論調査の結果によると、治療や検査のため2週間に1回程度通院しながら働く環境が整っているかを聞いたところ「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」という回答が64・5%に上った。さらに治療と仕事の両立が難しい理由を尋ねたところ「代わりに仕事をする人がいないか、頼みにくい」が21・7%で最多。続いて「職場が休みを許すかわからない」が21・3%だった。
静岡県立静岡がんセンターの研究グループの調査によると、がん患者の34%が依願退職や解雇で仕事を失い、自営業者の17%が廃業を余儀なくされている。一方、がんを患い仕事ができないことによる労働損失が年間最大約1兆8000億円に上るという推計もある。
日高病院副院長の成清(なるせ)一郎さんは「夜間化学療法のスタート時に、治療で有給休暇を使い切ってしまい、これ以上会社を休むと減給になるという患者さんがいました。治療費が掛かるため収入を得なければならない。そのような人には夜間の利点は大きいのです」と語る。
夜間化学療法には、課題もある。徳満さんは「実施できたのは、この病院が透析施設として多くの患者さんを受け入れ、夜間透析も行っていたことが大きい。勤務体制をどうすれば実施できるのか。それは悩ましい問題です」と明かす。同病院の取り組みについてほかの医療施設から問い合わせをよく受けるが、その多くは「スタッフから反対はなかったのか」という質問だ。
化学療法を行うには、医師、看護師のほか、薬剤師や医療事務ら多くのスタッフが関わる。患者の体調や副作用によって、抗がん剤の投与が中止になることがあり、スタッフの勤務が無駄になる恐れがある。実際に日高病院では夜間化学療法が予定されていた患者全員に投与できない事態もあった。このため、同病院では夕方で勤務を終えた看護師が超過勤務で対応しており、現状はスタッフの「やる気」だけで乗り切っている側面がある。実際、県内のほかの医療施設も、夜間化学療法を検討したが、勤務体制の問題が障害となり実施に至っていない。
がん患者の治療を夜間に行っている施設はほかにもある。化学療法ではないが江戸川病院(東京都江戸川区)では、高精度放射線治療装置「トモセラピー」を使い、午後10時まで治療に当たっている。
がん治療と就労の問題の解決に向け、昨年、改正されたがん対策基本法では、企業などにがん患者の雇用継続などへの配慮に努めることが明記された。ただ、具体的な取り組みが進んでいるとは言えない。
日高病院と連携し、夜間化学療法に取り組む群馬大大学院がん治療臨床開発学講座特任教授の解良(かいら)恭一さんは「夜間化学療法が患者や家族の就労に利点があることが確認されています。患者の就労支援のために47都道府県に1機関は、夜間化学療法が行われる施設が配置されるのが望ましい。そのためには医療機関側の努力に頼るだけでは限界があり、行政の支援も必要となります」と訴える。
「治療と仕事の両立が困難になっているのに医師に打ち明けられない患者さんもいます」(徳満さん)。まずは、仕事を続けられる治療があるかどうかを医師や看護師らに相談してみることが大切だ。
(転載修了)※ ※ ※
私の治療日記を読んでくださっている読者の方々は、私の通院日のタイムスケジュールを概ねご理解くださっていると思うが、外来がん治療が一日がかりとは、経験がない方にはなかなか理解しがたいものかもしれない。
大きい病院だから、記事にあるとおり来院受付から採血(やレントゲンなどの検査)、診察にいたるまで、つまり先生にお目にかかるまでに概ね2時間はかかる。そして診察後、薬が届いてから点滴が始まるまでの準備に小一時間、点滴は本数にもよるけれど、始まってから、短い日が1時間半弱、長い日が2時間半弱である。となると朝一番に行って検査、診察、治療を済ませ支払、薬局で薬を受け取ると、15時クローズのランチタイムには間に合わない、という状況だ。
これでも体力温存に加え、朝一で受付出来るように前泊して8時には病院に入っているので、15時前に終わっている。けれど、これが例えば1時間遅れて9時に入ると、押せ押せでどんどん待ち時間が長くなる。下手をすると会計する時には17時を回っていて「救急窓口でどうぞ」になったり、ということもある。冬は真っ暗。これはちょっと切ない。
もう昔のことになるが、毎週のハーセプチン点滴で休暇を頂き始めた時分(毎週、つまり年間52回休むとなると、年間20日の年次休暇では到底足りない)、職場の上司に相談した時、「土曜日や日曜日には治療できないのか」とか「丸1日休まないで時間休で抜けることは出来ないのか」と訊かれたことがある。
まあ普通のクリニックでちょいと1本注射をしてくるなら充分それもOKということで、決して悪気はなかったと思うのだけれど、かくかくしかじかで病院も月曜日から金曜日迄で、土日は開院していないし、平日でも朝からこういう流れなので1日がかりになります、と説明した記憶がある。
もちろん15時に解放されて(昼食は点滴椅子に座ったままおにぎりやサンドイッチで済ませるとして。)薬の大袋を持って職場に直行すれば17時前に到着しないことはない。けれど、それから1時間強、加えて溜まった仕事を整理すれば残業は必至だ。疲労と副作用のだるさや気持ち悪さに苛まれてしっかり職責が果たせる自信はない。
それならその日は通院だけに特化して、身体を休めて翌日に備えた方がよほどコストパフォーマンスが良いだろう。そう思って今は1日休暇を頂いている。
そんなわけでこれ迄9年半の間、職場の理解を得て平日に病気休暇を頂いてこれまで治療を続けられてきている。
これが夜間通院可能になったら、確かに仕事を終えてから病院へ出向き、待ち時間も少なく治療が出来る、というメリットがある。
けれど、フルタイムで働いた後、私が病院に出向くとなれば、定時に職場を飛び出しても到着は19時前になるだろうか。待ち時間はどんなに短くとも点滴開始は20時になるだろう。終了は早くて21時半、遅くて22時半。帰宅はシンデレラ宜しく24時になってしまう。
そんな時間に抗がん剤治療を受けるのはやはり身体への負担が心配だ。まあ治療を始めたばかりで若くて元気!ならそれもありかもしれないけれど、いざ再発してエンドレスに抗がん剤治療が必要な身となると身体をだましだまし少しでも長持ちさせていかなければならないから、治療以外での大きな負荷はかけたくないというのが本音だ。
職場の隣が病院というのならまだしも、私のように8時に着いて15時に解放されたって通院往復の移動時間を加えればプラス2時間ないし3時間、というのが普通ではないだろうか。徒歩5分の大きな病院に通える患者さんはそれほど多くはない筈だ。上記の記事では昼より夜行うことで待ち時間が30分ほど縮減されるようだけれど、それにしたって上に書いたとおり就業後からの通院は残業を数時間しているのと同様、大きな負担になるだろう。
また、土日の休みに治療をしてもらえるとすれば、投与後の体調不良で休日はほぼ潰れるだろう。家事や余暇を過ごすどころではなくなるのは目に見えている。月曜日から金曜日まで働いて、土日に治療をしたら、身体を休める時間は一体どこにあるのだろう。
さらに医療関係者側だって、どうだろう。上記にもあったけれど、患者の体調によっては当日投与キャンセルがありうる。残業体制で複数の方たちが残ってスタンバイして、結局無駄になるということだ。さらに彼らにも家庭やプライベートがあるのだから、この残業をするためにどこかに皺寄せが行くことは明らかだ。どこで代わりの休みを取れるのか、心配だ。人間だから平常以上に疲弊してくれば必ずミスの恐れも出てくる。
これは消費者が夜遅くまで働いているから少しでも便利なように、とスーパーが深夜営業をするのと同じなのではないかという懸念がある。ただでさえハードな職場である医療現場で働く人たちの生活を誰がケアするのだろう。
こう書くと、病気休暇が保障されているお前は恵まれている、と言われてしまうかもしれない。仰るとおりだ。どの職場でもこうした対応が出来るわけではないという厳しい現実もあるだろう。
けれど、そういう選択にはメリットもあるけれど、こんなデメリットもあるのだ、ということを少しでも多くの人に分かって頂きたい。そして、今や2人に一人がこういう生活をする可能性があるのだからこそ、治療で休暇を取るということを普通のこととして受け入れ、皆で分かち合ってもらえないのか、と思うのは甘えなのだろうか。
さて、ようやく金曜日。
今月末から後期が始まる息子が、珍しくその合間に3泊4日で帰省していた。別に用事がないならそんなに無理して帰ってこなくても、と言ったのだけれど、実家の母のところへ御機嫌伺いに行ってくれたり、4月から東京で働き始めた先輩に面会したりと、リフレッシュして帰って行った。
今晩からまた、夫婦2人の生活である。
※ ※ ※(転載開始)
どうすれば安全安心
夜間の「外来がん治療」 仕事と両立、待ち時間短縮(毎日新聞2017年9月14日 東京夕刊)
外来治療の日中と夜間の違い(表:略)
がんは日本人の2人に1人が一度は患うと言われている。治療法が進歩し、通院しながら抗がん剤治療(化学療法)を受けることは可能になった。だが、長期間に及ぶため、仕事と治療の両立が困難になり離職してしまう患者も多い。そこで注目されるのが、外来の夜間治療だ。【庄司哲也】
生活リズム変えずに/患者の家族も負担軽減/スタッフの確保難しく
「見舞いに来た会社関係者が、治療中の患者に離職を促している光景を目にしたことがあります。がんになったことを周囲に悟られないように苦労されている人もいます。そのような人たちに配慮した治療ができないかと思っていました」。そう話すのは、群馬県高崎市の日高病院化学療法センター師長の徳満(とくみつ)葉子さんだ。
同センターは2014年1月から、群馬大医学部と提携し、就労支援として金曜日の夜間(おおむね午後5時半~午後9時)の外来化学療法を導入している。がんの種類は、消化器がん、肺がんなど日高病院が診療科を設けているもの。現在は病院が実施する送迎サービスも使い、県内の約20人の患者が、夜間に治療を受けている。
同病院が、スタート時に夜間治療を受けた患者29人に、選択した理由を尋ねたところ、勤務後の治療を希望したのが19人、付き添いの家族の勤務後の治療を希望したのが4人、その他は「遠方に住んでいる」「生活時間を変えたくない」などといった理由だった。
夜間治療の最大の利点は、抗がん剤を点滴するまでの待ち時間が短くなることだ。一般的な外来化学療法は次のように進む。
来院後、採血→白血球や赤血球の数などを調べる血液検査→医師による診察→点滴する抗がん剤の調製(ミキシング)→点滴を開始--。大規模な病院の場合、午前の診療開始直後に受け付けをしても、点滴終了まで数時間に及ぶこともあり、治療が終わるのは夕方になることも珍しくない。
がん患者にとって治療で平日に休まなければならないのが、仕事を続ける上での高いハードルだ。夜間ならば、生活のリズムを変えずに治療を受けやすいし、がん患者に限った検査や診察になるので治療時間の短縮につながる。
日高病院が化学療法の点滴の開始までにかかった日中と夜間の平均時間を比較したところ、日中は83分だったのに対し、夜間は49分だった。患者側の負担軽減だけではなく、病院側にとっては検査や診察に追われることが少なくなり、医療ミスが発生しにくくなるメリットもあるという。
年間約100万人が新たにがんになる時代だが、働きながら治療を続けられる状況とは言い難い。内閣府が1月に発表したがん対策に関する世論調査の結果によると、治療や検査のため2週間に1回程度通院しながら働く環境が整っているかを聞いたところ「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」という回答が64・5%に上った。さらに治療と仕事の両立が難しい理由を尋ねたところ「代わりに仕事をする人がいないか、頼みにくい」が21・7%で最多。続いて「職場が休みを許すかわからない」が21・3%だった。
静岡県立静岡がんセンターの研究グループの調査によると、がん患者の34%が依願退職や解雇で仕事を失い、自営業者の17%が廃業を余儀なくされている。一方、がんを患い仕事ができないことによる労働損失が年間最大約1兆8000億円に上るという推計もある。
日高病院副院長の成清(なるせ)一郎さんは「夜間化学療法のスタート時に、治療で有給休暇を使い切ってしまい、これ以上会社を休むと減給になるという患者さんがいました。治療費が掛かるため収入を得なければならない。そのような人には夜間の利点は大きいのです」と語る。
夜間化学療法には、課題もある。徳満さんは「実施できたのは、この病院が透析施設として多くの患者さんを受け入れ、夜間透析も行っていたことが大きい。勤務体制をどうすれば実施できるのか。それは悩ましい問題です」と明かす。同病院の取り組みについてほかの医療施設から問い合わせをよく受けるが、その多くは「スタッフから反対はなかったのか」という質問だ。
化学療法を行うには、医師、看護師のほか、薬剤師や医療事務ら多くのスタッフが関わる。患者の体調や副作用によって、抗がん剤の投与が中止になることがあり、スタッフの勤務が無駄になる恐れがある。実際に日高病院では夜間化学療法が予定されていた患者全員に投与できない事態もあった。このため、同病院では夕方で勤務を終えた看護師が超過勤務で対応しており、現状はスタッフの「やる気」だけで乗り切っている側面がある。実際、県内のほかの医療施設も、夜間化学療法を検討したが、勤務体制の問題が障害となり実施に至っていない。
がん患者の治療を夜間に行っている施設はほかにもある。化学療法ではないが江戸川病院(東京都江戸川区)では、高精度放射線治療装置「トモセラピー」を使い、午後10時まで治療に当たっている。
がん治療と就労の問題の解決に向け、昨年、改正されたがん対策基本法では、企業などにがん患者の雇用継続などへの配慮に努めることが明記された。ただ、具体的な取り組みが進んでいるとは言えない。
日高病院と連携し、夜間化学療法に取り組む群馬大大学院がん治療臨床開発学講座特任教授の解良(かいら)恭一さんは「夜間化学療法が患者や家族の就労に利点があることが確認されています。患者の就労支援のために47都道府県に1機関は、夜間化学療法が行われる施設が配置されるのが望ましい。そのためには医療機関側の努力に頼るだけでは限界があり、行政の支援も必要となります」と訴える。
「治療と仕事の両立が困難になっているのに医師に打ち明けられない患者さんもいます」(徳満さん)。まずは、仕事を続けられる治療があるかどうかを医師や看護師らに相談してみることが大切だ。
(転載修了)※ ※ ※
私の治療日記を読んでくださっている読者の方々は、私の通院日のタイムスケジュールを概ねご理解くださっていると思うが、外来がん治療が一日がかりとは、経験がない方にはなかなか理解しがたいものかもしれない。
大きい病院だから、記事にあるとおり来院受付から採血(やレントゲンなどの検査)、診察にいたるまで、つまり先生にお目にかかるまでに概ね2時間はかかる。そして診察後、薬が届いてから点滴が始まるまでの準備に小一時間、点滴は本数にもよるけれど、始まってから、短い日が1時間半弱、長い日が2時間半弱である。となると朝一番に行って検査、診察、治療を済ませ支払、薬局で薬を受け取ると、15時クローズのランチタイムには間に合わない、という状況だ。
これでも体力温存に加え、朝一で受付出来るように前泊して8時には病院に入っているので、15時前に終わっている。けれど、これが例えば1時間遅れて9時に入ると、押せ押せでどんどん待ち時間が長くなる。下手をすると会計する時には17時を回っていて「救急窓口でどうぞ」になったり、ということもある。冬は真っ暗。これはちょっと切ない。
もう昔のことになるが、毎週のハーセプチン点滴で休暇を頂き始めた時分(毎週、つまり年間52回休むとなると、年間20日の年次休暇では到底足りない)、職場の上司に相談した時、「土曜日や日曜日には治療できないのか」とか「丸1日休まないで時間休で抜けることは出来ないのか」と訊かれたことがある。
まあ普通のクリニックでちょいと1本注射をしてくるなら充分それもOKということで、決して悪気はなかったと思うのだけれど、かくかくしかじかで病院も月曜日から金曜日迄で、土日は開院していないし、平日でも朝からこういう流れなので1日がかりになります、と説明した記憶がある。
もちろん15時に解放されて(昼食は点滴椅子に座ったままおにぎりやサンドイッチで済ませるとして。)薬の大袋を持って職場に直行すれば17時前に到着しないことはない。けれど、それから1時間強、加えて溜まった仕事を整理すれば残業は必至だ。疲労と副作用のだるさや気持ち悪さに苛まれてしっかり職責が果たせる自信はない。
それならその日は通院だけに特化して、身体を休めて翌日に備えた方がよほどコストパフォーマンスが良いだろう。そう思って今は1日休暇を頂いている。
そんなわけでこれ迄9年半の間、職場の理解を得て平日に病気休暇を頂いてこれまで治療を続けられてきている。
これが夜間通院可能になったら、確かに仕事を終えてから病院へ出向き、待ち時間も少なく治療が出来る、というメリットがある。
けれど、フルタイムで働いた後、私が病院に出向くとなれば、定時に職場を飛び出しても到着は19時前になるだろうか。待ち時間はどんなに短くとも点滴開始は20時になるだろう。終了は早くて21時半、遅くて22時半。帰宅はシンデレラ宜しく24時になってしまう。
そんな時間に抗がん剤治療を受けるのはやはり身体への負担が心配だ。まあ治療を始めたばかりで若くて元気!ならそれもありかもしれないけれど、いざ再発してエンドレスに抗がん剤治療が必要な身となると身体をだましだまし少しでも長持ちさせていかなければならないから、治療以外での大きな負荷はかけたくないというのが本音だ。
職場の隣が病院というのならまだしも、私のように8時に着いて15時に解放されたって通院往復の移動時間を加えればプラス2時間ないし3時間、というのが普通ではないだろうか。徒歩5分の大きな病院に通える患者さんはそれほど多くはない筈だ。上記の記事では昼より夜行うことで待ち時間が30分ほど縮減されるようだけれど、それにしたって上に書いたとおり就業後からの通院は残業を数時間しているのと同様、大きな負担になるだろう。
また、土日の休みに治療をしてもらえるとすれば、投与後の体調不良で休日はほぼ潰れるだろう。家事や余暇を過ごすどころではなくなるのは目に見えている。月曜日から金曜日まで働いて、土日に治療をしたら、身体を休める時間は一体どこにあるのだろう。
さらに医療関係者側だって、どうだろう。上記にもあったけれど、患者の体調によっては当日投与キャンセルがありうる。残業体制で複数の方たちが残ってスタンバイして、結局無駄になるということだ。さらに彼らにも家庭やプライベートがあるのだから、この残業をするためにどこかに皺寄せが行くことは明らかだ。どこで代わりの休みを取れるのか、心配だ。人間だから平常以上に疲弊してくれば必ずミスの恐れも出てくる。
これは消費者が夜遅くまで働いているから少しでも便利なように、とスーパーが深夜営業をするのと同じなのではないかという懸念がある。ただでさえハードな職場である医療現場で働く人たちの生活を誰がケアするのだろう。
こう書くと、病気休暇が保障されているお前は恵まれている、と言われてしまうかもしれない。仰るとおりだ。どの職場でもこうした対応が出来るわけではないという厳しい現実もあるだろう。
けれど、そういう選択にはメリットもあるけれど、こんなデメリットもあるのだ、ということを少しでも多くの人に分かって頂きたい。そして、今や2人に一人がこういう生活をする可能性があるのだからこそ、治療で休暇を取るということを普通のこととして受け入れ、皆で分かち合ってもらえないのか、と思うのは甘えなのだろうか。
さて、ようやく金曜日。
今月末から後期が始まる息子が、珍しくその合間に3泊4日で帰省していた。別に用事がないならそんなに無理して帰ってこなくても、と言ったのだけれど、実家の母のところへ御機嫌伺いに行ってくれたり、4月から東京で働き始めた先輩に面会したりと、リフレッシュして帰って行った。
今晩からまた、夫婦2人の生活である。