京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

五月は吠える如く

2014-05-24 | インポート
 

 京都市中京区河原町通竹屋町東入末丸町284

 

 上の住所は当館のものである。

 他の市町村ならば、京都市中京区末丸町284、で済むだろう。

 実際、京都だって、それで郵便はちゃんと届く。

 

 河原町通竹屋町東入、とは、河原町通と竹屋町通の交差点を東に入ったところ、という意味だ。

 京都では、実はこの部分が案外重要である。

 何しろ、京都は町区割りが細かい。

 交差点と交差点に挟まれた通りの両側で、一つの町内が構成される。

 大体そんな感じだ。

 京都の中心地は碁盤の目を作りだすように通りがあって、その通りが縦横それぞれ40前後はあるだろう。

 その交差点を過ぎるたびに町が変わるのだから、町数がとてつもない数になる。

 お江戸八百八町というが、きっとそれどころではない。

 つまり、町名で場所を特定するのが難しい。

 そこで、「東入」「西入」「上ル」「下ル」が登場するわけだ。

 キーボード入力でローマ字変換のほうを覚えるのが楽なのと似た原理だ。

 

 しかし、困ったことに、住所が長くなる。

 他府県の人間から、住所が長すぎて書くのが大変だ、と、苦情が来る。

 ここにマンション名とかが入ったら、一層大変だ。

 全国共通の書式に住所を書く際、欄が足りないことが多々ある。

 

 京都市上京区智恵光院通元誓願寺東入元妙蓮寺町

 

 これは実在の住所だが、一体何事かと思う。

 もはや漢詩か呪文の類かに見えてくる。

 寺の名前が三つあるのも、中々壮観である。

 これに番地とマンション名が入ったら、宛先印刷のソフトを使っても、レイアウトに苦労しそうだ。

 

 しかし、こういう住所を見ていると、その地名の由来を知りたくなる。

 元○○寺町などは、よくあるのだが、一体今はどこにあるのか、とか、なぜ移転したのか、とか。

 ○○屋町というのも、よくあるが、このあたりにそういう店が多かったのか、とか。

 まあ、考えてみたりするのも面白い。

 そして、実際にそこへ行き、その名残を見つけると、なお楽しい。

 京都観光の楽しみの一つである。

”あいらんど”