散日拾遺

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また別の空の眺め/緑の松山

2017-05-10 20:50:40 | 日記

2017年5月10日(水)

 徳島からの帰途の風景はクリスタルクリアだったが、松山からのそれは薄曇りと黄砂で滲んでいた。コースは最高で、石鎚の鋸歯のような峨々たる頂を左に眺めながら四国を長軸方向に横切り、先日馴染みになった徳島平野から紀伊水道、紀伊山地から志摩湾と、北緯33度40〜50分あたりで日本列島南岸をサーチしていく。渥美半島から遠州灘へのゆったりとした海岸線がことのほか好きなのだが、空路が南へ逸れたのと滲んだ空気のために残念ながらよく見えない。
 それでも富士山は見つかった。ほら、こんな具合。
 

 富士山が見えない?確かに小さいが、目視ではそのように感じなかった。人の目はつくづく良くできており、関心の対象を自動的にズームアップしてくれる。カメラで同じことをしようとすると・・・ 

 全体がぼやけてしまうのね。三原山火口はいつ見ても黒々と恐ろしい。千葉上空でぐるっと旋回し、湾を横切って無事着陸。東京に戻ってきてしまった。

***

 アレン・セイの名作絵本の末尾は、「おじいさんはアメリカにいる時は日本のことを考え、日本にいる時はアメリカのことを考えていたように思われる」というのだ。僕の場合は「東京にいる時は松山のことを考え、松山にいる時は東京のことを考える」という具合である。
 もっとも今回はそれほど東京のことを考えるでもなかった。春から初夏へ移ろうとする田園は美しく、ウグイスの囀りは日を追って級位から高段者へ長足の進歩を遂げ、家の内外に仕事はいくらでもあり ~ 都会人は自分たちが忙しく、田舎の人間はヒマで暢気と思いたがるが大きなマチガイである ~ 次はいつ松山に戻ってこようかとばかり思い巡らしていた。
 滞在中、久しぶりにヘビを見かけた。30cmほどの仔ヘビなのに堂々たる紋様をまとって、若葉によく映える緑がまぶしい。いわゆるアオダイショウだけれど、チビの方が模様が鮮やかで立派に見える。別の日に草刈りをしていたら、目の前の叢に名の分からない小型の鳥が猛々しく舞い降り、何か咥えて電線に飛び上がった。捕まった獲物もやはり若草色で、この季節は甲も乙も草色に染まっている。

 草の間に伸び出したカラタチもこんな風情で、トゲまで柔らかく見える。

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