FT-817で使うバッテリについての2回目はシールドバッテリです。
[シールドバッテリの特徴]
自動車用の鉛バッテリを改良したものですが、原理は同じです。倒しても中の硫酸が漏れないようになっており、補水も不要です。手軽に扱えるようになっています。パソコン用のUPSやバッテリ式の非常電源に使われたりしていますので大量に生産されています。
アマチュア無線では20年ほど前から使われているようです。当初はジャンク屋に中古バッテリが安く流れており、移動好きな局長さんの口コミで広まっていったように記憶しています。当時ジャンク屋には電電公社のミニファクスの中古流れ品もあり、これをアマチュア無線で使うことも流行っていました。現在はロボット等にも使われるため、パーツ店などでシールドバッテリの新品を購入することができます。
長所としては、
・技術的にこなれており、大量生産されているので価格が安い
・2AHクラスから20AHクラスまで各種容量が揃っており、選択の幅が広い
・12Vの製品があり、そのままFT-817に使える
一方、短所としては
・電極が鉛、電解液が硫酸で重い
・放電状態で放置すると使用不能になることがある
といったあたりでしょうか。
前回もちらっと触れましたが、シールドバッテリの12VではHIモードにはなっても真値の「5W」は出ません。念のため。
[選定のツボ]
2AHクラス
シールドバッテリは重いため、1kgを切る重量の軽い2AHクラスのバッテリに目が行きがちです。しかし、このクラスのバッテリはFT-817のHIモードには向かないのが現実です。細かいことは割愛しますが、このクラスのバッテリにとっては受信時の消費電流が0.5A前後になるFT-817は受信だけでヘビーな負荷なのです。ましてやHIモード送信時の消費電流たるや…ということなのです。そのため前回説明した「希望運用時間×1000mAH」の目安よりかなり短い運用時間しか確保できません。かつてのFT-690mkIIならばこのクラスのバッテリで軽く3時間以上は運用できましたが、FT-817ではL3モードにしても3時間の運用は困難かと思われます。あくまでL3モードで短時間の運用向けと割り切ってください。
5~8AHクラス
このクラスになるとようやくHIモードが使えてきます。しかし、7.2AHのバッテリで2.7kgと結構な重量です。以前6AHのシールドバッテリを持っていましたが、かなり重かった記憶があります。とはいえ朝から昼過ぎまでの運用にはこのクラスが必要です。L3モードで使用するのでしたらかなりの長時間運用が可能です。
20AHクラス
このクラスの容量はニッケル水素やリチウムイオンでは実現が困難で、シールドバッテリならではの容量と言えます。HIモードを使っても1日好きなだけ運用できます。もっとも重量は7kgとかになりますので、バッテリだけでかなりの重量です。このクラスですと自動車での移動とか何局かでまとまって担ぎ上げるとかでないと無理だと思います。
なお、同一サイズのバッテリを2個直列にして24Vにし、そこからDC-DCコンバータなどでDC13.8Vを作るという方法もあります。電圧変換効率が悪いため大容量バッテリでないと実用になりませんが、電圧が安定しHIモードで5Wを確実に出せます。
[入手方法]
秋葉原の秋月電子が比較的種類を揃えています(通販可)。同店ではGSユアサの製品と台湾のLONGブランドの製品を扱っています。LONGはGSユアサより安くて容量が大きめですが、「スペック通りの性能ではない」というレポートも見たことがありますのでどちらがいいかは微妙です。値段重視ならLONG、安定性重視ならGSユアサでしょうか。
[充電器]
秋月電子で充電キットを販売しています。完成品はなく、自分で組み立てて調整する必要があります。お金をかけても既製品の充電器が欲しい方はお近くのGSユアサ製品の取扱店から同社製の充電器を取り寄せてください。20時間充電タイプの製品があるようです。
なお、私は0.1C(容量の1/10の電流。8AHのバッテリなら0.8Aのこと)の電流容量を持つACトランスとブリッジ整流器で充電器を自作して使っていました。最初は低い電圧で電流を多めに充電し、電圧が上がると徐々に電流が少なくなります。これでじっくり充電すればいい具合に充電できました。ACトランスタイプのACアダプタでも同様に充電できそうです。
重いですが、値段で選ぶならシールドバッテリだと思います。