日本では日本エアコミューターと天草エアラインが導入しているヨーロッパのATR社のプロペラ機ATR42に離着陸に要する滑走路が短くて済むATR42-600Sがリリースされ2022年頃から納入開始になることが明らかになりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b2/e6eb827ddb5c078aace8e0750ba8c684.jpg)
(こちらは通常型のATR42-600)
この機材は800mの滑走路で乗客40人を乗せて離着陸が可能です。現在日本で使用されているATR42-600が就航している滑走路の短い空港は天草空港の1,000mで、これより短い空港、例えば新島・神津島・佐渡・福井・波照間などにも就航が可能になります。
ATR社は日本での売り込みを強化しており、小笠原に計画されている飛行場に使用できるとしていますが果たして小笠原向きの機材なのでしょうか?
[航続距離が足りない]
羽田-小笠原は直線で約970kmです。一方ATR42-600Sの航続距離は1,560kmではないかとされています(ATR42-600から推定されたもの)。「十分じゃないの?」と思われるかも知れませんが大きな落とし穴があります。それは「片道分の航続距離しかない」ということです。
飛行機に搭載する燃料は考え得る万一の際を考慮し、出発地に引き返すか代わりの空港に着陸するために十分な量を積まなければなりません。例えば「小笠原まであと50km地点」にやってきたが現地が雷雨で着陸不能ならば待機するか引き返すかになりますよね。既に920kmを飛んできた飛行機には羽田に引き返すための920kmを飛ぶだけの燃料が残っていません。雷が落ちて滑走路が損傷し補修に時間がかかるとなれば燃料切れで墜落するしかなくなってしまいます。つまり「1,560kmの航続距離では全然足りない」ってことです。
小笠原の父島に近い飛行場としては父島よりさらに南方にある硫黄島があります。自衛隊が管理する滑走路は2,560mですからボーイング767や787あたりまで離発着できるはずですが給油ができないため過去に民間機をチャーターした硫黄島への戦没者遺族訪問では無給油で羽田まで往復しています。この際に使われたのは旧JASが持っていたMD-90で、羽田-硫黄島が片道約1,200kmに対しMD-90は約3,800kmの航続距離を持つものの、万一の際を考え乗客を166名→100名に減らして運航しています。これでもギリギリなんです。
[どこかで給油すればいいじゃん]
「それではどこかで給油すればいいじゃん」と思うでしょう。小笠原に一番近い民間空港は八丈島空港です。八丈島-小笠原間は約700km、満タンなら何とか引き返せると思いきやこれまた余裕がほとんどなく、万一を考えると厳しいと思います。仮に乗客数を30名に絞っても上空の気流によっては八丈まで引き返せず燃料切れで墜落の可能性が捨てきれません。万に一つの可能性でも燃料切れが起きてはダメなのがこの世界、全く余裕がないのです。
八丈島空港には給油車がおり給油は可能なんですが、八丈島空港への路線は羽田からの全日空しかありません(ヘリもありますがここでは割愛)。同社グループはATRを1機も所有しておらず、所有しているJALグループが運航するためには新規で地上係員の配置が必要になります。
小笠原に加え八丈島にも給油のための要員配置が必要であれば相当な経費が掛かります。これも就航を阻害する要因となります。そもそも小笠原に航空燃料を安定して備蓄する施設や体制を作るとなれば相当な費用が掛かることも明らかです。また海が荒れて半月ほど本土からタンカーが来ないこともあり得ますから極めて難しい話になると思われます。
[八丈島空港の致命的問題点]
さらに八丈島空港には小笠原までの距離以上に致命的とも言える問題点があります。それは地形上風が小刻みに変化し霧も出やすいというもので、国内では指折りの難しい空港だとされます。
全日空もベテランのパイロットをこの路線に充てているほどですが、それでも条件付き運航となることが多く、引き返しや欠航もしばしばです。八丈島空港で給油するのならば小笠原が微風晴天であっても八丈島に確実に着陸できないために欠航となる場合が出てきます。八丈島が足を引っ張ることになるのです。
[小笠原には2,000mの滑走路が必要では?]
ご覧の通り航続距離が足りずATR42-600Sでの就航は無理があります。近くに給油可能な代替空港がないからです。硫黄島は制約がありすぎ、八丈島は遠すぎる上に条件が悪過ぎるのです。
4,000km前後の航続距離を持つ飛行機であれば羽田から小笠原まで無給油の往復が可能ですが、それはボーイング737型などの機材と2,000m以上の滑走路が必要ではないかと思います。
1,000mの滑走路&ATR42-600Sでは安全運航が確保できずダメってことだと思います。恐らく国交省の担当部署はこれを分かっているはずで、小笠原村などが自然保護を訴える一部の島民に配慮して検討しているふりをしているに過ぎないのでしょうね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b2/e6eb827ddb5c078aace8e0750ba8c684.jpg)
(こちらは通常型のATR42-600)
この機材は800mの滑走路で乗客40人を乗せて離着陸が可能です。現在日本で使用されているATR42-600が就航している滑走路の短い空港は天草空港の1,000mで、これより短い空港、例えば新島・神津島・佐渡・福井・波照間などにも就航が可能になります。
ATR社は日本での売り込みを強化しており、小笠原に計画されている飛行場に使用できるとしていますが果たして小笠原向きの機材なのでしょうか?
[航続距離が足りない]
羽田-小笠原は直線で約970kmです。一方ATR42-600Sの航続距離は1,560kmではないかとされています(ATR42-600から推定されたもの)。「十分じゃないの?」と思われるかも知れませんが大きな落とし穴があります。それは「片道分の航続距離しかない」ということです。
飛行機に搭載する燃料は考え得る万一の際を考慮し、出発地に引き返すか代わりの空港に着陸するために十分な量を積まなければなりません。例えば「小笠原まであと50km地点」にやってきたが現地が雷雨で着陸不能ならば待機するか引き返すかになりますよね。既に920kmを飛んできた飛行機には羽田に引き返すための920kmを飛ぶだけの燃料が残っていません。雷が落ちて滑走路が損傷し補修に時間がかかるとなれば燃料切れで墜落するしかなくなってしまいます。つまり「1,560kmの航続距離では全然足りない」ってことです。
小笠原の父島に近い飛行場としては父島よりさらに南方にある硫黄島があります。自衛隊が管理する滑走路は2,560mですからボーイング767や787あたりまで離発着できるはずですが給油ができないため過去に民間機をチャーターした硫黄島への戦没者遺族訪問では無給油で羽田まで往復しています。この際に使われたのは旧JASが持っていたMD-90で、羽田-硫黄島が片道約1,200kmに対しMD-90は約3,800kmの航続距離を持つものの、万一の際を考え乗客を166名→100名に減らして運航しています。これでもギリギリなんです。
[どこかで給油すればいいじゃん]
「それではどこかで給油すればいいじゃん」と思うでしょう。小笠原に一番近い民間空港は八丈島空港です。八丈島-小笠原間は約700km、満タンなら何とか引き返せると思いきやこれまた余裕がほとんどなく、万一を考えると厳しいと思います。仮に乗客数を30名に絞っても上空の気流によっては八丈まで引き返せず燃料切れで墜落の可能性が捨てきれません。万に一つの可能性でも燃料切れが起きてはダメなのがこの世界、全く余裕がないのです。
八丈島空港には給油車がおり給油は可能なんですが、八丈島空港への路線は羽田からの全日空しかありません(ヘリもありますがここでは割愛)。同社グループはATRを1機も所有しておらず、所有しているJALグループが運航するためには新規で地上係員の配置が必要になります。
小笠原に加え八丈島にも給油のための要員配置が必要であれば相当な経費が掛かります。これも就航を阻害する要因となります。そもそも小笠原に航空燃料を安定して備蓄する施設や体制を作るとなれば相当な費用が掛かることも明らかです。また海が荒れて半月ほど本土からタンカーが来ないこともあり得ますから極めて難しい話になると思われます。
[八丈島空港の致命的問題点]
さらに八丈島空港には小笠原までの距離以上に致命的とも言える問題点があります。それは地形上風が小刻みに変化し霧も出やすいというもので、国内では指折りの難しい空港だとされます。
全日空もベテランのパイロットをこの路線に充てているほどですが、それでも条件付き運航となることが多く、引き返しや欠航もしばしばです。八丈島空港で給油するのならば小笠原が微風晴天であっても八丈島に確実に着陸できないために欠航となる場合が出てきます。八丈島が足を引っ張ることになるのです。
[小笠原には2,000mの滑走路が必要では?]
ご覧の通り航続距離が足りずATR42-600Sでの就航は無理があります。近くに給油可能な代替空港がないからです。硫黄島は制約がありすぎ、八丈島は遠すぎる上に条件が悪過ぎるのです。
4,000km前後の航続距離を持つ飛行機であれば羽田から小笠原まで無給油の往復が可能ですが、それはボーイング737型などの機材と2,000m以上の滑走路が必要ではないかと思います。
1,000mの滑走路&ATR42-600Sでは安全運航が確保できずダメってことだと思います。恐らく国交省の担当部署はこれを分かっているはずで、小笠原村などが自然保護を訴える一部の島民に配慮して検討しているふりをしているに過ぎないのでしょうね。
ATR42-600の派生としていくつかの改修を行ってATR42-600Sを設計するとすれば、燃料タンクの増槽オプションを想定しているかもしれません。
小笠原にはANAしか就航していないのでATRが給油?に立ち寄った場合地上係員が必要というのも?
ATR42-600Sの運行会社がANAに委託すれば人を増やさずに対応できます。
LCCやコードシェアでやっている方式です。
天草空港が1000mで対応できているってことはなぜ1000mでは危険なのか?一足飛びに2000mでなくても、1200mにちょっと伸ばすというのが無駄な公共投資をせずに需要にも対応できる妥当な方法だと思います。
→そのようは発表はなく、単にSTOL化しただけのようです。当然ですが燃料タンクを増設し燃料を増やせば重量が増えるのでその分滑走路長も必要ですよね。
燃料タンクの増設を書いたATRの資料がありますか?
ないはずです。
・ATR42-600Sの運行会社がANAに委託すれば人を増やさずに対応できます
→これは無理です。というのは全日空グループにはATRを保有する会社がなく、そもそも給油をどうすればいいのかも分かりません。簡易な整備が必要になってもマニュアルも技術も治具もないので断るしかないです。LCCやコードシェアもよく見れば自社系で保有している機材のみです。逆にオリエンタルエアがATRを買いたくても買えないのは全日空が整備を拒否しているからです。
そうそう簡単に行きませんよ。