Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 58

2020-10-26 10:48:09 | 日記
 『トイレだな。』

祖父の言葉に、しょ気た私は空かさず思った。ここは早く切り上げて彼の傍から去った方が良策という物だ。そんな私の考えを知ってか知らずか、祖父は彼の口上を続けて来る。

「現代っ子だったな。」

今の子供達はそういうのだそうだね。もう古い人間になった私でさえ、ちゃんと今の言葉を知っているんだ。覚えたんだよ。こんな年の私でもね。適材適所、きちんとした言葉を覚えなさい。勉強だよ。知らなければ学ぶんだ。…。
 
 そんな事では表を歩けないよ。この界隈は出来物だらけだ。今のお前のようでは見劣りする。このままでは将来、往来を歩けなくなるよ。裏道ばかり歩くような大人になったらどうするんだい。云々。

 私は唖然として祖父の意味不明の話を受けていたが、話がほぼ分からなかっただけに、何時もなら間も悪くなかなか場を切り上げられない所、早々とこの場を逃げ去ろうと決意すると、話の折をみる事無く祖父の息継ぎの時を捉えていった。

「おじいちゃん、トイレ。」

トイレに行きたいから、そう言うと、

「もう智ちゃん行くね。」

そう言って、祖父に別れを告げた。

 私は居間を横切る時、父の父か、そう祖父の事を考えた。『成る程、父の父な訳だ。』父がああ育ったのも道理だと、私の胸の内に納得できる物が有った。日頃私の父が私に対してやたらと説教めいて煩い事や、小言然としてあれこれ長々説明するという、親として教育然とした態度で接して来る理由が理解出来た気がした。私は内心むしゃくしゃとした気分に襲われるとしかめっ面して今来た私の後方を肩越しに振り返った。祖父は未だに階段で彼の背を向こうの手摺にもたせ掛けていた。やはり片手を上に上げて手摺を掴んでいる様子だ。顔はと言うと私を見送り細やかに微笑んでいた。

 兎に角、トイレへ急ぐのだ。私にとっては場を去ることも有ったが、やはり事は急を要していた。私は走る事が出来ず、内またでよちよちと廊下を進み台所への降り口に立つと、そうっと腰を下ろし台所の床に足を着けた。急いては事を仕損じる。そんな雰囲気だった。
 
 

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-26 10:08:35 | 日記

うの華 86

 その年の居間の障子襖が1度張り替えられて以降、気候の良い時期、日々私は盛んに外遊びに興じていた。毎日のように近所のお寺へも頻繁に遊びに出かけ、近隣を走り回り、日増しに世間の事を覚......

 今朝はどんよりと曇り空です。これから晴れて来るのでしょうか。雲の切れ間から光が差している場所も有ります。
 週末はそれなりに予定が有り、昨日の日曜日には、今年行けなかった墓所の掃除等を軽くしてきました。流石にほったらかしという訳にも行かないかなと思った訳です。
 線香や蝋燭の屑、こちらもそう多くなく片付け易かったです。後は来春と、汚れた雑巾等をゴミ袋に入れて、父の具えて欲しいと言っていた水のペットボトルを片付けて、気が付くと、ペットの水が減っています。蓋は開けた様子が無いので、これは、盛夏に破裂したのかなと思いました。
 何時もはお盆にボトルの差し替えをしますが、今年は墓参しなかったので、古いペットになりボトルの劣化が進んだのでしょう。多分、破裂音がしたのだろうと考えると、傍迷惑な話だと感じます。同じ墓所の皆さんにとっては墓迷惑な事でしょう。水飛沫が飛んでなければよいけど、人に掛かっていなければよいけど、等々、考えてしまいました。それで、来年からはペットのお供えは無しにしようと決めました。
 父に、母も元気に施設で生活していると報告して、安心してくださいねと合掌しての帰途、ふと私は、もしかすると父は、母は未だ暫く来ないのかとがっかりしたかしら、と思った事です。父には酷だったかしら?。
 墓を改築して祖父母の50回忌も済ませ、現在は父が1人だけ安置されている家の墓です。孤独に思っているだろうか?そう思うと、まだまだ暫く1人だと言ってきたような物だなと、亡き父の気持ちに思い至ると、ははははは…(苦笑い)です。こう書いてみると、ペットボトルは1人の父の良いペットだったかもしれません。でも、家の宗派では、亡き父は仏になって皆と本堂にいる筈ですから、決して孤独ではないでしょう。安心しています。