Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 55

2020-10-21 09:33:15 | 日記
 うん、そうと、私は祖母に答えた。祖母は私から顔を外すと、自分の左横の辺り、やや下方向の暗がりに向かい、誰かそこにいる様にして何か話しかけている様子になった。

 退いて下さいね。孫の為です、等、祖母が話し掛ける声が私には聞こえていた。祖母はその後再び私に顔を戻すと、一寸待ってねと言葉を掛けた。そうして再び階下の方に顔を向けた。私は彼女の黒い頭を覗き込みながら、階段へと入る入口に当たる、開いた障子戸の前で佇んでいた。この時の私に取って静止の状態はやや酷だと言えた。程なくして祖母は私に向いて向き直った。段に彼女の腹を付けている状態で、顔を上げ私に向けると、

「智ちゃん、一寸あっちを向いていてくれる、直ぐだから。」

と言った。私は彼女の指示に従って、うん、いいよと言うと、やおら階段に背を向けた。下半身を刺激したく無かったのだ。そうして、後どの位待つのかなと不安に思いながら考えていると、「もういいよ。」と、すぐに階下、1階の部屋に降りたらしい場所辺りから祖母の声がした。

 もう?、私は意外に思ったが、反面喜ばしく思い、ほぼ反射的に振り返って足元、先程まで祖母がいた辺りを覗き込んだ。彼女の声で私が感じた通り、やはりそこに祖母の姿はもう影も形も無くなっていた。『声が遠かったと思ったが、やはりお祖母ちゃんはもう下の部屋まで降りたんだ。』。早いなぁと私は思った。そうして改めて彼女の身の軽い事に感じ入った。

 私は今年の外遊びを重ねるに連れて、家にこもる時間が殆どだった幼少期から比べると、現在までに相当活発な運動を熟す身になっていた。そんな私には、今や他人の敏捷さが身を持って解る状態になっていた。

 『お祖母ちゃんは出来る大人じゃないかなぁ。』

遊びを上手に熟す子の事を、あいつは、「はしかい(賢い)奴だ」、「出来る子だ」と、私達子供仲間は年長者から聞き習うと、日頃噂の様に互いに言い合っていたが、その大人版なのだから、出来る人は「出来る大人」だと私は内心思った。『出来る大人か…、』、ふふ。我ながら良い言い回しだと思う。よいせよいせと尻でとんとん階段を降りながら、私は悦に入ると、再びふふっと笑った。

 私が腰を下ろしながら通過しようとして笑った場所、それは今程迄祖母がいた場所辺りだった。すると、不意に真横から何が可笑しいんだいと声が掛かった。声には不機嫌で、私を叱責すっる様な感情がこもっていた。大人の男の人の声だ、私の事を怒っているみたい。と私は思った。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-21 09:27:51 | 日記

うの華 82

 この時の祖母は、私の両親が、お互いに喧嘩したのだと勘違いしていた。私が彼女に、父がこうなった経緯について順に説明し出すと、「お母さんと喧嘩したんじゃないんだね。」と了解した。......

 良いお天気です。快晴です。

 少し日差しに当って歩きたい気分です。