違うという言葉を口から出そうとして、焦った私は到頭全く呼吸が出来無くなりました。口に何かビニールの様な物が張り着いてでもいるかのようでした。全然口で空気を吸う事が出来ないのです。では鼻はと言うと、鼻の方も何だか覚束無くて空気が入って来ない様子です。そんな状態なので私は段々と苦しくなって来ました。回りには何も見えず、私と父しかいない世界のようでした。私は夢の世界にでも迷い込んだ感じを受けました。
「何も言わないところを見ると、やっぱりお前が悪いんだな。」
と父は決めつけたように言葉を発します。ここへきてお前のこんな様子を見るまでは、あの子の言う事を鵜呑みにもしなかったのに、何て事だと父は目を怒らせてぷりぷりし出しました。
「何であの子が捕まえた蝶をお前が取ったりしたんだ。」
「しかもお前はその蝶を逃がしたそうだな。」
再び意味不明な事を言う父に、私は益々ショックを受けました。言葉が出なくて言い訳も出来無い上に息も出来ず、心身共に相当ショックを受けました。そして、段々と苦しくなる息の下で、自分の立場の申し開き等もう如何でもよくなる位に苦しくなると、私はもんどり打ってバタバタと暴れ出しました。自身の身の危険、急を訴えるにはそれしかないと判断したのです。きっ、と父を睨んだり、手足で父を出来るだけ強くぶったり蹴ったりもしました。
この私の行動に、どうやら父は反射的に私の体を揺さぶったか、又は頬か体を手で打ったのでしょう。私は気が付くとふっと息が漏れて、視界が利いて来ると、落ち着いてもう1度ほうっと溜息を吐きました。それはげんなりとした私の嘆息でもありました。『あーぁ、何で訳の分からない事で叱られるんだか。』そう思うと続けて深々と溜息が漏れます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます