Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、108

2017-03-29 20:01:42 | 日記

 鴨居にずらっと燭台が並んでいます。欠けている場所はありません。畳の上にも燭台は落ちてなどいないのでした。

誰かが掛け直したと思えない事も無いけれど…、そう祖父が思って燭台を眺めていると、

本堂の向こうの入り口から蛍さんが入ってきました。

何だか伏し目がちでしょんぼりした感じです。気の進まなそうな感じで廊下を少し進むと、向こうの方の畳の縁に腰を下ろしました。

こちらを見ながら光君が来るのを待っているような雰囲気です。

 「ねえ祖父ちゃん、あの子俺を待ってるのかな。」

お母さんかお祖母ちゃんがちゃんと向こうに言っといてくれたのかしら。

そう光君は祖父に問いかけながら、今にも蛍さんの所迄駆け出して行きそうな雰囲気です。

 「まあ、そう慌てずに、ちょっと待っていなさい。向こうにも誰か大人の人が付いてくれるだろうから、

あの子の付き添いに誰か出て来てから行くことにしよう。」

祖父がそう言って光君を留めている内に、向こうの入り口に蛍さんの父が現れました。

そうか、向こうさんはお父さんが付き添いなんだなと、光君の祖父は了解し、

では男の私が孫の側で付き添っていて良いなと判断しました。そして光君を促すと2人で蛍さん達の所迄歩き出しました。

 付き添いの大人同士お互いに会釈して、よろしくお願いします等にこやかに挨拶し合います。

光君はにこにこしてやぁと蛍さんに話しかけます。蛍さんは相変わらず困ったような顔をして入ますが、こんにちはと言います。

蛍さんの父が宜しくねと言うんだよと彼女に注意すると、蛍さんは不承不承ながらもよろしくねと言うのでした。

 「僕の名前は光、光でいいよ。」

「私の名前は蛍、皆はホーちゃんとかほっちゃんとか言う。」

そんな自分の呼び名をお互いに知らせ合いながら、お互いに何だか名前を呼びあう事が出来ない2人なのでした。

 まず、光君にはちゃん付けが出来ないのでした。蛍さんの方はというと、呼び捨てが出来ないのでした。

彼女が光君と呼んでいいかと聞いてみると、彼の方は苗字ならいいけど、名前の方を君呼びする子がいないから、

変な感じがすると言います。蛍さんに光君と言われて、物慣れなくてそわそわしてしまいます。

彼は呼び捨てで光がよいと、彼女にはっきり意思表示しました。

 それは全然言えないことだと蛍さんは内心思いながら、渋々表面は頷いてだけみる蛍さんでした。

では、私はちゃん付けでと希望する蛍さんに対して、蛍でいいよねと光君が苦しい笑顔で強引に言うと、

これは何だかちっとも嬉しくない蛍さんなのでした。首を絶対に縦には振りません。

彼女にするとはここは譲れないと言う強硬な姿勢です。

 早くも不協和音を奏でる2人に、何となく子供達の相性の悪さを感じ取る付き添いの大人達2人でした。

 

 


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