蛍さんはぼーっとしながらも、頭の芯はひんやりとして妙にすっきりと目覚めているように感じました。
何故私はこんな寝心地の悪い廊下みたいな硬い所で昼寝なんかしたのかしら、と妙に思いました。
少しは利口な、というよりも、お利口さんな自分らしくないと感じました。
そこで、座り心地の悪い硬い木の床から、居心地の良い畳の縁に移動してほっと一息、
ちょこんと腰をかけて足を床に下ろしました。尚も周囲を見回してみます。ここで彼女は周りをよく観察して見ました。
何度見直してもそこは、彼女が最初に思い付いた、ここはお寺だという考えに変わりはありませんでした。
そして、どうして自分がここにいるのか、どうやってここ迄来たのか、それがまるで思い出せないのです。
彼女は自分で自分の事を自分ながらに不思議に思えて仕様がありませんでした。
『如何やってここ迄来たのかしら、如何して私は覚えていないのかしら?』
蛍さんには、そんな今の自分の身の置き所が分からないという奇妙な状態の他にも、
今の自分の体が何処か妙でおかしいという、異変がある事にも気付いて来ました。
何だか今までに経験した事が無い不思議な状態なのです。未曽有の状態とでもいうのでしょうか。
目覚めた直後から今まで、相変わらず頭がぼーっとしているようです。しかし頭の奥は確りシーンと覚めているのです。
自分の体が少し縮んだ様な感じがします。軽くですが、自分の体に何だか圧迫感を感じます。
また、さっきまでちゃんと見えていた目が今はぼんやりとして来ました。
それで、目に映る物がぼやけているなと、彼女が確り目を凝らして近くの物をみると、
見た物はちゃんと綺麗にきちんと見えて来るのでした。しかし、又何を見るともなく漫然と周囲を眺めると、
視界は曇りぼんやりとして来るのでした。
蛍さんは目を擦ってみたり、頭を振り手で抱えてみたり、自分の周囲を近い所、遠い所とキョロキョロ見回してみたりしました。
その内、頭を振る事が億劫になって来ました。目を開いている事も物憂くなって来ました。
くらくらと、何度目かに周囲がぼやけて見えて来ると、蛍さんはまた眠くなって来たように感じました。
ここで蛍さんは、自分で自分の事をこれは昼寝が足りないのだと判断しました。
これはあんな硬い床で寝ていたせいなのだと。それで、今度はこの畳の所でもう少し寝ようと考えるのでした。
自分の体をさっきよりは寝心地の良いこの畳の上に今しも横たえようとしたその時、蛍さんは自分を呼ぶ声を聞きました。
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