Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(24)

2018-03-20 08:54:02 | 日記

 「分かったね。」

僕の言った事が分かったかな?そう言って彼が女の子を見ると、女の子は不思議そうにきょとんとしています。目を瞬いて、半信半疑らしい顔をして考え込んでみる気配です。それで彼は、再びここに土筆が生える事、雪が溶けてすぐの頃ならここに土筆がある事、そしてその事を教えた子は嘘つきじゃ無い事を繰り返しました。それから分かったね?と念押しするように聞くと、漸くその子は合点したように頷いたのでした。

 女の子がどうやら彼の言いたいことを理解したという確認が取れると、新リーダーは漸く自分の任務を全うしたとばかりに、やれやれと言った感じで、『ねんね達に物を教えるのは難しい、とても骨が折れる。』と内心渋い顔で呟きました。ほっと息を吐くと彼はどーっとばかりに脱力感に見舞われました。

 「じゃあ、僕は家に帰って休むから。」

と、そう女の子に言い残してから、笑顔の消えた彼は、一歩一歩足を踏みしめるようにしてその場から去っていくのでした。

 リーダーが去った後、そのままで、その場の地面を俯いてみている子に、駆け寄って来た彼の妹が話しかけました。

「お兄ちゃんに、叱られたの?」

リーダーの兄が盛んに話し掛けていて、彼が去った後に1人取り残された小さな少女が、そのまま動かずに俯きながら地面を見て静かに佇み考え込んでいる姿は、如何にもその子が兄に叱られた後、しょんぼりして沈んでいるような姿に彼女には見えたのでした。


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