「まぁ、呼び名なんかどうでもいいじゃないか。」
見かねた蛍さんの父が2人に言います。
その内なんでも呼び合うようになるだろうし。と、自分と妻の事を思います。
蛍さんの両親はおい、お前、あんた、など適当に呼び合ったまま、過去から今まで進展がありません。
『俺達だってそうなんだから、如何だっていいんじゃないか。』
と父は内心思います。
「いや、こういうことは最初に決めておかないと後を引きましてね、」
名前を呼べずにおい、おまえ、あなたになってしまうものですから。と、光君の祖父は意見を言います。
「光、学生時代になれば光君という者もきっと現れて来るだろうから、今から慣れて置いてもいいじゃないか。」
向こうさんはお嬢さんなんだから、そう呼んでもらいなさい。名前で呼ばれたいだろう、光は。
呼び方を決めておかないと、将来もおい、お前になってしまうよ。
と注意します。そうだね、それならと光君は、光君でもいいよと祖父の意見を笑顔で承諾しました。
そこで祖父は蛍さんに、
「家の方には、『ちゃん』と呼ぶ子がいなくてね、光は言いづらいんだよ。君というのと同じように蛍さんでどうだい。」
折れてくれないかなぁと頼んでみます。
蛍さんも向こうのお祖父さんに下手に出られ、丁寧に頼まれるのですから、にこやかにそれでいいですと了解しました。
『蛍さんか、蛍でいいのに。』
光君は内心むかむかしていましたが、表面はにこやかで笑顔でした。そんな孫のにこにこ顔を見ていて、
祖父はどうやら孫はこの件で胸に一物持ったなと感じます。
蛍さんの方を見ると、一応満足気にほっとした表情を浮かべています。
『家の子の方が折れた形だな、ここは1本貸しだな。』
と、祖父は胸残用をします。後から何かで返してもらおう。フィフティフィフティだなと思います。
と、ここまで話が来たところで、本堂の入り口に男の人が現れて声をかけました。
「お昼が出来たよ。早く帰って来ないと延びてしまうよ。」
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