本とにこんな事を言う言葉なのだねと、そんな事を力なく言い、祖母はしょんぼりした感じで力なく佇むのでした。そんな部屋の物静かな雰囲気を感じたのでしょう、次の部屋から蛍さんの祖父がふいに現れました。
「如何したんだ、何かあったのか?」
そう祖父は祖母に言葉をかけたのですが、祖母はぼんやりと考え事をしているらしく、やはり言葉が無いのでした。
「お祖母ちゃんに何かしたのかい?」
何があったんだと、祖父は今度は責めるような目つきで蛍さんを見詰めました。お祖母ちゃんは如何してこんなになったのかと祖母の事を真剣な口調で孫に問い質しました。
「私、」
蛍さんはこの時、今日の蛉君の言った言葉、お前が掘った穴云々の言葉を思い出しました。また自分はあらぬ疑いを掛けられていると思うと、今回は憤りより涙が湧いてくるのでした。家族にさえ誤解されるのだと思うと悲しくなって来るのでした。私、そう言いながら泣き出すと、何も、何も、と言葉になら無い言葉を祖父に言う内に、ひっく…、彼女はしゃくり上げて泣き出すのでした。
蛍さんは祖父とは殆ど会話した事が無く、この時祖父への対処が分からなかったのでした。父ならうまく冗談のようにその場を澄ます事が出来る術をしっていましたが、家にいる時の、祖父の普段に無いこの様な生真面目な態度に出会うと、やはり真剣に彼のその怒りを受け止めてしまうのでした。よく言われる様な気心の知れない相手、この頃の祖父は父とは違う、彼女にとっては気が置け無い相手では無かったのでした。
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