Jun日記(さと さとみの世界)

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美湾

2017-12-06 15:17:50 | 日記

  下山については、そう特記する地形やウルルの様子などをはっきりと覚えていないのですが、覚えている事といえば、やはり尾根のような平坦な瓦礫の岩肌の場所を渡っていった事、急坂を鎖を手に下った事、そしていつしか麓の見える岸壁に入って行った事などでしょうか。

   漸く麓が視界に見えても、なかなか大地まで辿り着かないというもどかしさのある下山でした。帰りも距離があったと思います。事によると、下山の道の方が時間が掛かったのではないか、そんな風にも思いました。集合時間まで秒読み段階という様な、文字通り分刻みの焦燥感を覚えながら、私はウルルの岩肌をせっせと下って行きました。それでも、私の時計にするとたっぷり1分は遅刻した感じでした。

 這う這うの体でバスの入り口まで辿り着くと、「遅れて申し訳ありません。」と車中にお詫びの言葉を述べねばなりませんでした。『頑張りました。』内心よくやった物だと、自身で自分を褒めてやりたいと思いつつバスに乗り込みました。後は椅子にどっかりと腰を下ろして、足を投げ出してぐったりと目を瞑って一休み、休息を取り睡眠に入った感じでした。私は心身共に疲れきっていました。

 私はもう麓に降り立つという時に、自身の足の事を考えていました。年齢的に変化には対応しにくいかもしれないと考え、小刻みに歩を刻むと、大地に降り立つ瞬間に細心の注意を払いました。硬い岩盤から一応地面の柔らかい土の上に降り立つのです。厳密には砂地なのかもしれませんが、足の感覚が岩と地面では違うのではないかと考えたのです。

 ウルル麓の大地にはぺたりと腰を下ろした若者が何人も座っていました。そんな彼らの様子からも、彼等の遥かに上をいく年齢の私です、細心の注意で下山して怪我の無いようにしなければいけないと考えたのでした。家では子供が待っているのです、自分の自由な時間を持ち、ウルル登頂を果たした今の私は、この後親としての責任を果たさなければなりません。怪我などして帰国が遅れるという事になるのは以ての外の事でした。『石橋を叩いて渡る』というように、用心の上にも用心をして、大地に降り立ってからもせっせと足踏みをして足慣らしをしました。私の足は半ば感覚が無く、大地を踏みしめる感覚が常と違って相当あやふやな状態になっていました。自身でも本当にふらふらで、疲れ切って綿のような状態だと思っていました。

  


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