20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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エイプリルフールの電報

2009年04月01日 | Weblog
 今日は4月1日。
 エイプリルフールです。
 私の父はエイプリルフールやクリスマスなど、昭和20年代~30年代、当時としては物珍しかったセレモニーを家族で楽しむのがだいすきな人でした。
 
 あれは、私が春から中学生3年になる年の、4月1日の朝のことでした。
 早朝、祖母がトイレで倒れました。
 脳溢血でした。
 祖母はそのまま昏睡状態に陥り、危篤になりました。
 
 当時、大学生だった姉は秩父を離れて、一人暮らしをしていました。
 その姉の下宿に、父があわてて電報を打ちました。
「ソバ キトク スグカエレ」
 電報を見た姉は、4月1日だったので、父からの手の混んだエイプリルフールのいたずらだと思ったらしいです。
 なにしろ「ソバ キトク」です。お蕎麦が危篤。
 しかし、いくらエイプリルフールと言えども、「キトク」です。平穏ではありません。
 
 まるで謎かけみたいな電報に、姉はしばし頭を悩ませ、とうとう自宅に電話をしてきました。
「電報、見ました。でもソバってなぁに?」
 そのとき、やっと父は気づいたようです。
 電話で電電公社に電報の依頼をしたとき、動転していた父は、交換手の人に「祖母」と言おうとして、「母」の字のかわりにを「婆」(ば)の字を思いうかべ、そう言ってしまったらしいです。

 4月1日。エイプリルフールになると毎年私は、そんな今は亡き父のことを思い出します。
 そしてなにより、「いちばんジュンコが似ている」といわれていた、4月1日が命日の祖母のことを、なつかしい気持ちで思い出すのです。
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