20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『恋する新撰組』(越水利江子著 角川つばさ文庫)

2009年04月30日 | Weblog
 関西にお住いの作家の友人。越水利江子さんの、講談社青い鳥文庫に続いての、あたらしい文庫のシリーズがはじまりました。
 利江子さんは、いったいいくつのシリーズを抱えていらしゃるのでしょう。いまや、日本の児童文学作家のなかの、何本指かに入る売れっ子作家のおひとりと申し上げても過言ではありません。
 おまけに、いずれも膨大な資料集めをしなくてはならない、時代小説です。利江子さんの「書く力」にはただただ感嘆するばかりです。

 さて、この『恋する新撰組』(角川つばさ文庫)はタイトルどおり、作品のテーマとしてはときどきお書きになっていらっしゃる新撰組の物語です。
 とにかく、文章がこなれていて読みやすく、実にお上手です。また史実に基づきながら時代をとことん調べ上げ、また武術を調べ上げ、それぞれをご自分のものになさっているのでディテールにリアリティがあります。
 とにかくおもしろい。いろいろなシリーズもののなかで出色の作品です。
 キャラクターもいいし、息をのむようなストーリー展開と、テンポのよさ。歴史のわかりやすさ。
 人気本に不可欠な条件をすべてクリアしています。ですから、人気がでないはずがありません。

 また、主人公の「空」という少女の造形も魅力的ですし、「おりんさん」もきりっとした大人のオンナの魅力満載というところでしょうか。
 こうした女性の描写や、色っぽくて魅力的な男性の描出に、利江子さんがとことんこだわられるのは、とりもなおさずご本人がとてもオンナっぽくて魅力的な方だからです。
 
 利江子さんがこっそりお話くださった言葉が、読後、私の胸を静かにゆさぶっています。
「時代の激変にのみこまれて権力をにぎることがなかった、あるいは挫折した人びとを掘り起こしたい。そうして歴史の転換点の負け組や、庶民の泣き笑いこそ描きたい。それが私のこだわりです」

 テンポがよくておもしろくて、歴史の勉強にもなる。
 一粒で、二度も三度もおもしろい、このシリーズ。
 ぜひ、お読みになってください。
コメント (68)
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