映画「茜色の金魚」を見ました。私たちの町・大和郡山市を舞台にした日系ブラジル人の少年リカルドと金魚養殖場の娘・花子の恋というにはあまりに幼い友情とメルヘンの物語です。
映画のあらすじに沿って、舞台となった大和郡山のロケ地を手元にある画像でご紹介します。
1.母親の仕事の関係で大和郡山に来たリカルド(長田たけし)ですが、学校に行ってはパンツに金魚を入れられたりしていじめられ、言葉が通じない悲しみから隣の席の花子(大出菜々子)には「ストーカー」と毛嫌いされます。
2.淋しい気持ちでこの古墳に来たリカルドは、古代衣装をまとった美しい女性(昔、ヤマトの皇子と結婚するため金魚を持って大陸から渡ってきた姫。ヤマトにくると皇子は亡くなっていた)に導かれ、古墳の奥のせせらぎに青色に輝く金魚を発見します。
*新木山古墳 丸山古墳ともいう陵墓参考地。全長約120メートルの前方後円墳で、出土した円筒埴輪の模様の特徴などから築造時期は5世紀後半と推定されています。
3.花子の家は200年以上続く金魚の養殖場でした。その養殖場は不況で苦しい上に、テーマパーク建設のための土地買収に走るヤクザまがいの建設業者に脅かされていました。リカルドが花子に見せようともってきた「青い金魚」を見た父親・雄二(松村武)は、古い資料からそれが「幻の青い金魚」であることを知り、養殖場の再起を図ろうとします。花子の母親は金魚一筋の父親に愛想をつかして離婚しましたが、花子は幼い頃から青い金魚の伝説をよく聞かされていました。そして母親の形見でもある赤い金魚を大事に育てていました。
*やまと錦魚園(嶋田養魚場) 昭和元年に先代の正治氏が開業。戦後はいち早く中国から珍しい金魚を輸入して日本式の養殖法で大量生産に成功、また金魚に関する知識の普及に努めました。
現在は3ヘクタールの金魚池で金魚を始め、錦鯉の養殖、卸売、小売を行っています。また「郡山金魚資料館」を併設され、金魚水族館を始め民俗資料、金魚の錦絵や古書の展示を行っています。泳ぐ図鑑・金魚の水族館」では30個の水槽にいろいろな種類の金魚が飼育・展示されています
これは江戸錦という貴重な品種の金魚。
金魚に関する古書の展示。「金魚伝」は滝沢馬琴作だそうです
「金魚養玩草」は1748年刊行の日本最古の金魚飼育法の書籍です。
江戸文化の爛熟期、文化・文政の頃からは庶民の間にも金魚愛玩が広まり、錦絵にも金魚がたくさん登場します。これは歌舞伎俳優を金魚に見立てた絵で、それぞれの家紋が金魚の模様に描かれています。このほかにも民具や大皿などの陶器や団扇など、さまざまな金魚を描いた器物、また古い金魚養殖器具も保存展示されています。<「やまと錦魚園」については2007年の当BLOGを再掲しました>
4.一方、リカルドの母親・マリアはパート雇用期間が切れて失職。住む家を追い出されたマリアとリカルドはニューハーフ?カルロス(中村獅童=怪演)のブラジル・レストランで一夜を過ごします。マリアはかってはサンバの名手、ここでサンバの指導をしているカルロスとは古い仲間でした。
*柳楽屋(りゅうらくや) 柳2丁目の空店舗を活用したミニショップ。大和郡山のコミュニティ機能の拠点ともなっています。店頭では奈良佐保短大「ゆめの丘さほ」による県産野菜の販売も行われています。
店内風景。駄菓子や地元のお菓子の販売の他、カレーライスなどの軽食もとれます。
このカウンターに獅童扮するオネエのカルロスが入っていました。
5.マリアは市役所に抗議に行きます。その時、青い金魚を持っていることを市長(笹野高史=熱演&狂演)に知られて、住居を提供されるのと引き換えに金魚は市長の手に…。市が斡旋した家は大和民俗公園内で展示している民家でした。
*大和民俗公園 国中集落・旧吉川家 公園内には江戸時代の民家15棟が「町屋」「国中(奈良盆地)」「宇陀・東山」「吉野」の4ブロックに分けて移築復原されています。ロケが行われた旧吉川家は、現在の橿原市中町にあった住居の寄贈を受け、復元したものです。屋根は元禄年間に建築された当時の「入母屋造り」に復元されていますが、移築前は両妻に卯建を立てる「大和棟」だったそうです。
旧中村の西端にあった自作農家で、内部は江戸中期の国中民家の代表的な「四間取り」になっています。写真左手前が「みせの間」その奥が「ざしき」、右手が台所、その奥が「なんど」です。
台所前の土間にあるカマド。写真右手が入口で、お釜のある後ろは「しも店」といって機織りなどをしたところ、中二階は厨子(ずし)になっています。
珍しそうに眺めている母子の前に突然、大勢の観光客が入ってきて二人はびっくり。
6.お互いに言葉は分からないものの、リカルドと花子の心は次第に通じ合っていきます。夏祭りの夜、「金魚すくい」を楽しんでいる二人の前に再び「姫」が現れ、姫に導かれた二人は市長が隠している金魚をカルロスの店に…。しかし、カルロスが留守の間に店は襲われます。
*大和郡山城 このBLOGで何度も登場したので説明は省略します。ただ、追手門の前に様々な屋台が出る夏祭り。お城まつりだけでなく、本当にこんな夏祭りがあったらいいいな…と思いました。浴衣姿の花子がカルロスと一緒に堀端を走るシーンがひたむきな姿で良かったです。
7.ブラジルへ帰ることになったリカルドは花子と再会を約束し、はっきりと気持ちを伝えられないまま郡山を離れます。バス停へ走る花子…
*紺屋町「箱本館・紺屋」 や「こちくや」の前を必死で走り抜けます。
8.ついに金魚パークの起工式が始まりますが、肝心の「青い金魚」は瀕死で横たわっています。市長と建設会社の談合を暴露する女子市職員(三倉佳奈)、そしてカルロス率いるサンバ隊が会場へ行進…果して「金魚の伝説」は町全体に奇跡を起こせるのか…。
*柳町商店街 他の地方都市と同じように、大和郡山も相次ぐ大型商業施設やスーパーマーケットの登場で、旧商店街は多くの店が戸を下ろしています。
これは映画には登場しませんでしたが、同じ柳町の通り。しばらくの間、更地の状態が続いています。
映画ではサンバ隊は金魚池の堤を行進し、無数の金魚たちがサンバのリズムに飛び跳ねます。
この映画の監督・塩崎祥平は大和郡山出身の34歳。高校を出た後、アメリカ・サンノゼ州立大で学び、2007年にアメリカの映画祭でグランプリを受賞しています。故郷を愛する気持ちが美しい映像を作り上げたのでしょうか、特に茜色にそまる東の山を望む風景には「ああ、私たちはこんな素晴らしいところに住んでいるんだ」という思いを新たにしました。