3月23日
所沢ミューズのツィッターより
初めは遠くから見ているようなアプローチでそれがどんどん霧が晴れて行くように、リストを彫り上げて行った
北村朋幹の挑戦でした。リストとはある程度距離を置いておきたいという北村さんでしたが、最後には何かもう一体化して
しまったようなそんな感じがしました。若いのに老齢のリストの心境にまで達してしまうピアニストに驚きます。
リストとの旅。「巡礼の年」全曲演奏という休憩入れて3時間40分という壮大なプログラムでした。北村朋幹の精神力と
体力に驚きます。
曲はリストの生涯をなぞらえるように進んで行きます。時に限りなく美しく、激しくも力強く、苦悩にも満ちて、そして
メランコリックでもあり、人生のいろいろなシーンをたどりながら浄化された最後の結びついていく感じがしました。
聴きながら、人生は巡礼と思いました。母のことが思い出され、それぞれの人生の巡礼があり、そしてそれが子供にも
受け継がれて生を紡ぐ。Tの病気と闘った人生を振り返り、最近では友人と高野山の町石道を登って行ったシーンが
目の前に浮かんで来ました。私のこれからの巡礼の旅はどうなっていくのだろう・・・
「巡礼の道」3曲は聴く方にとってもかなりしんどかったですが、弾く方はあの気が抜けないハードな曲、よくやると思いました。
さすが3曲目は楽譜を持ってきていましたが。力強くピアノの音の残響があんなにあるのは初めてでした。ピアノは打楽器で
あること思い出させ、北村朋幹のクールな情熱を感じたコンサートでした。
リストと言えば技巧的であまり好きではなかったのですが、プレトニョフがアンコールで弾いた「愛の夢」やフジコ・ヘミングが
弾いていた「コンソレーション」は好きでした。今回は「巡礼の年」という大作で、曲が始まった時から目に涙がなぜかたまって
きてしまいました。最後にはピアノの音が天に吸い込まれて行きそうで、リストも喜んでいるのではと思いました。やり通した
北村さんへのスタンディング・オベーションで幕を閉じました。
解説者によるプレ・トークもリストの客観的な情報を入れてくれて、全然知らないより良かったと思いました。
ネットで見ていたら、北村さんご自身が別の日のプレイベントでお話をして、ヘルマン・ヘッセの本を読んで行ったら、スイスの
音楽とマッチしたところがあったとのブログがありました。
今回は3枚組CDは買わずに、帰ってきました。あんなに弾いた後なのにサインをしてくれるそうです。お疲れさまと
言いたくなります。
【2024年3月6日発売】北村朋幹(ピアノ)/リスト 巡礼の年 全3年 Tomoki Kitamura, piano/Liszt Années de pèlerinage
Alexandre Kantorow plays Liszt Sonetto 104 del Petrarca, Années de pèlerinage II, S.161
2017.08.01 Franz Liszt : Liebesträume No. 3 (사랑의 꿈)
宗次ホール終了公演レポートより
参考)
演奏会 北村朋幹ピアノ・リサイタル~オール・リスト・プログラム
23日は午前中にベルカントの翌日の発表のためのリハーサルがあり、その足で航空公園にある会場の所沢ミューズの
マーキーホールに急いで向かいました。14:15からの音楽ライターによるプレトークも聞いておこうと思ったからです。
ロビーに「巡礼の年」の楽譜の表紙が飾ってありました。紙の楽譜にこだわりのある北村さんのコンサートらしさが
出ていました。
巡礼の年 第1年 スイス
巡礼の年 第2年 イタリア
巡礼の年 第3年
ピアノはスタンウェイでした。
休憩の時に外を見ました。
帰り道に・・空に星が輝いていました。
March 23 2024 Tokorozawa